「ボルドー2017プリムール」が今年も4月9日からボルドーで開かれた

 格付けシャトーが加盟するUGCB(ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー)主催の「ボルドー2017プリムール」が今年も4月9日からボルドーで開かれた。2017年ヴィンテージの話題の中心はすでに報じられている通り、4月27日、28日に広域にわたってボルドーを襲った霜害だった。

 ボルドーワイン委員会のまとめによると、2017年の収穫量は350万ヘクトリットル、577万ヘクトリットルだった2016年と比べて約40パーセント減となった。

 2017年の霜害の最大の特徴はアペラシオンによって被害の程度や内容に差があることだ。左岸では一級シャトーが居並ぶポイヤックではほとんど被害はなく、サンテステフやサン・ジュリアンもほぼセーフ、サン・ジュリアンの一部では標高の低い畑が被害に遭ったが、ジロンド川に近い2級の「シャトー・レオヴィル・ラスカーズ」は全く被害を受けなかった。また、内陸の3級の「シャトー・ラグランジュ」は標高13メートル以下の区画が霜害に遭い、収穫量は40パーセント減、しかし選果を厳しく行った結果、2015年に近い仕上がりになっている。

 一方、グラーヴ地区のペサック・レオニャンは被害が大きく、「霜害を受けたブドウとそうでないブドウをどこまできれいに分けられたか」がワインの出来栄えを大きく左右している。

画像: 「シャトー・コス・デストゥルネル」オーナーのミシェル・レイビエ氏

「シャトー・コス・デストゥルネル」オーナーのミシェル・レイビエ氏

画像: 「シャトー・ラフィット・ロートシルト」の新CEO、ジャン・ギョーム・プラッツ氏

「シャトー・ラフィット・ロートシルト」の新CEO、ジャン・ギョーム・プラッツ氏

画像: 「シャトー・シュヴァル・ブラン」醸造責任者のピエール・オリヴィエ・クルーエ氏

「シャトー・シュヴァル・ブラン」醸造責任者のピエール・オリヴィエ・クルーエ氏

右岸は霜害より、夏の暑さがポイントだった

 右岸は被害が大きかった。ポムロール地区は高台の「ペトリュス」「シャトー・ラフルール」は畑にローソクを灯し、小型の風力発電のようなファンを回して霜害を免れた。しかし平地の「シャトー・シュヴァル・ブラン」では霜害は免れぬことはできず、約30パーセントの収穫減。また右岸のシャトーによっては夏の乾燥した暑さの方も深刻な問題だったようだ。

 霜害による収穫量の減少とワインの出来栄えは同一で考えるべきではない。ポイントはブドウの選果をどれだけていねいに行ったか、だ。霜害以降の天候には恵まれ、右岸、左岸ともにトップ・シャトーが手掛けるワインの品質は高い。左岸の赤は偉大なヴィンテージである2016年には及ばないが、2014年よりはよく、2015年に近い、早くから楽しめるヴィンテージと評価する生産者が多かった。

 実際試飲してもピュアで凝縮された果実が感じられる素晴らしい出来だった。また『パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー2017年』『シャトー・コス・デストゥルネル ブラン2017年』をはじめ、メドックの白はいずれもフレッシュできれいな酸が表現されていてとても印象に残った。

 2017年は霜害が大きく取り上げられているが、生産者を選べば、かなり優良な年。すでにいくつかのシャトーの売り出し価格が発表されており、2016年と比べるとやや安くなっている。2016年が偉大すぎるヴィンテージだったため値下がりは当然かもしれない。しかしハイクオリティでお買い得な1本を探してみるのも楽しい、ワインラバーには嬉しいヴィンテージになるはずだ。

画像: 「シャトー・ラグランジュ」副会長椎名敬一氏

「シャトー・ラグランジュ」副会長椎名敬一氏

画像: 「シャトー・ラグランジュ」

「シャトー・ラグランジュ」

画像: 2015年~2017年までを試飲

2015年~2017年までを試飲

『シャトー・ラグランジュ2017年』は最高ヴィンテージ2016年に次ぐ、2015年に近い出来栄え

 サン・ジュリアン3級の「シャトー・ラグランジュ」は、1983年から「サントリー」が所有するシャトーだ。2004年からは、現在副会長を務める椎名敬一氏がサントリーの代表として現場で指揮を執っている。
「シャトー・ラグランジュ」の現在の栽培面積は118ヘクタールと広大だ。106の区画に分けられ、区画で品種、台木、栽培管理法が異なる。102の小型ステンレスタンクで区画別に醸造している。

 「私が着任した2004年ごろから区画ごとの個性が出るようになり、それに合わせてタンクを小型化してきました」

 こうしたていねいな畑仕事と醸造で、昨年の『シャトー・ラグランジュ2016年』は過去最高の仕上がりとなった。この秋には市場にリリースされる。

 椎名副会長は『シャトー・ラグランジュ2017年』について、「霜害で約2割減となりましたが、出来栄えはよく、2015年に近いスタイル。霜害に遭ったブドウをどこまでキレイに分けられたかが、重要なポイントでした」

 「シャトー・ラグランジュ」では霜害を受けた25万株を赤いスプレーでマーキングし、一番果と二番果を選別したという。そのため収穫も一つの区画で2度行っている。

 「一番果と二番果ではブドウの味が全く違います。二番果は熟度がどうしても足りない。混ぜてしまったらワインに青さが出ます」

 二番果の一部出来の良かったブドウは、セカンドの『レ・フィエフ・ド・ラグランジュ』に用いた。ファーストの区画は丘の上に集中しており、収穫量は2割減にとどまったが、『レ・フィエフ・ド・ラグランジュ』の方は6~7割減となり、全体で4割減となった。

 また日本でも人気の高い白、『レ・ザルム・ド・ラグランジュ』は醸造していない。白用の畑は冷涼な場所にあり、7ヘクタールの畑から収穫できたのは平年の2~3割程度。契約栽培農家から購入したブドウと合わせてわずかに造ったが販売はしないという。

 今回、取材で2015~2017年の『シャトー・ラグランジュ』と2017年の『レ・フィエフ・ド・ラグランジュ』、『レ・ザルム・ド・ラグランジュ』を試飲した。『シャトー・ラグランジュ2017年』は滑らかで、凝縮したキレイな果実がしなやかなタンニンとともに余韻に長く続いた。『シャトー・ラグランジュ2016年』は、しっかりとした骨格とともに凝縮した果実と酸が感じられ、スケールの大きさを感じた。

 『シャトー・ラグランジュ2015年』は、エレガントな果実味と甘さの中にタンニンの骨格が感じられる。華やかで親しみやすさがあった2017年ヴィンテージは親しみやすさという点でも2015年に似ている。ブドウの美しさを感じるエレガントなスタイル。25万株のマーキングと2度に渡る収穫、その気の遠くなる作業をていねいにこなした品格を感じた。

 椎名副会長は最後に「今後もサン・ジュリアンのテロワールである果実味、タンニンの細さ、その中でもよりマルゴーに近いエレガントさを追求しながらマルゴーにはない酸も大事にしていきたいと思っています」と話した。改植を進めたカベルネ・ソーヴィニヨンの樹齢も30年を超え、さらなる品質の向上が期待できそうだ。

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