好きな料理を好きなワインと、自宅でゆったり味わえるのが“家飲み”の魅力。今回、美食の第一線で活躍する3人のソムリエが楽しく“家飲み”。
ワインは泡、白、ロゼ、赤と多彩に、料理はピッツァやから揚げ、寿司など、普段から楽しんでいるものを用意。とはいえ、一見カジュアルながら、その奥に隠れた“意外なマリアージュ”を発掘するのは、トップソムリエならではの得意技。家飲みの新しい楽しさを教えてくれた。
情野 今、“家飲み”が増えていますが、お二人の世代も“家飲み率”は高いですか?
河内 はい。ワインを持ち寄ったりして楽しんでいます。
大葭原(おおよしはら) 私も同じ。女子会とか、多いですね。あとは、帰省した時に両親と飲んだりとか。
情野 ご両親と、というのはいいですね。うちは子どもたちがお酒を飲める年齢になったので、普段は家族でわいわいやっています。
大葭原 両親は世代的にボルドーやブルゴーニュなどの“正統派”が好きで。私がニュージーランドなど、ニューワールドのワインを持って帰ると、「何、それ?」とけっこう会話が弾みます。(笑)
河内 わかります。家飲みって、普段自分が買わないものを友人が持ってきたりして、新しい発見がありますよね。
情野 マリアージュにしてもそうですね。一見、合いそうにないもの同士が、予想外に相性が良かったりするとなぜかうれしくなる。では、大いに楽しみましょう!(全員で乾杯)
河内 泡と揚げ物はやはり合いますね!
情野 餃子も合う。醤油と辣油(ラー油)の辛さをワインの甘酸っぱさが包んでくれます。ムニエ種を使った泡との相性は抜群ですね。
大葭原 (試してみて)本当、泡と餃子、いいですね! あと、餃子にはカベルネ・ソーヴィニヨンもいいと思いました。
河内 ピノ・ノワールとマグロもいいですね。とてもエレガントな相性。
情野 ピノならヒカリモノも合うね。(ロゼを飲んで)ロゼとも相性がいい。家飲みは、最初からマリアージュを狙わず、好きなものを食べて、好きなワインを飲んでいるうちにいろいろな発見があるのが興味深いですね。
河内 家だからこそ、ですね。自由度が高い。
大葭原 はい、この楽しさを多くの方に知っていただきたいです!()
(白泡)イエローテイル バブルス ドライ NV
柑橘類や青リンゴ、フレッシュハーブのさわやかさ。穏やかな泡立ちで、口当たりも滑らか。熟したフルーツのふくよかさ、果実味と酸味のメリハリを感じる。それほど甘くなく、飲み疲れがしない。
河内 素直に美味しい。鶏のから揚げなど、揚げ物との相性はテッパンですね。残糖のちょっと甘いニュアンスは、ボンゴレの塩気とも合いそうです。
情野 春巻きとよく合いますね。餃子も良さそう。泡は食前酒に出されることが多いけれど、家飲みだと好きなタイミングに飲めるのがいいですね。
大葭原 泡はオールマイティー。女子的には、気分が上がります。(笑)
(白泡)ゾーニン プロセッコ DOC スペシャル・キュヴェ ミレジマート 2018年
シャルマ方式(タンク内2次発酵方式)で造られたクラシックなスタイル。フレッシュな果実感に、キレのある泡立ち。香りはリンゴやレモングラス、マスカットなど複雑なアロマ。生アーモンドのニュアンスも。
情野 マスカットのフレーバーが魅力的。白身魚が美味しくなりますね。
河内 お寿司の鯛と合わせてみますね。うん、美味しい! シャルマ方式なので余韻はやや短めですが、鯛がすっきりと食べられます。
情野 オリーヴとか、漬物とか、シンプルに合わせてもきっと楽しいね。
大葭原 凝縮した旨味はフライドポテトにも良さそうです。
(白泡)コドーニュ バルセロナ 1872 NV
熟した白桃、洋梨、スパイスの香り。泡も細やかでクリーミー。はじけるような泡立ちが心地いい。さわやかな酸味とボリューム感のある果実味。カバ特有の苦味が味を引き締めている。
河内 後味に苦味があるので、ハーブのサラダが美味しく感じます。蒸したサーモンとも合っています。お寿司の甘エビとは◎!!
情野 本当? (甘エビと合わせて)美味しいね! 果実の甘さが、甘エビの甘さをうまく引き締めています。家飲みにお寿司は最高ですね。白身、ヒカリモノ、赤身など、味の要素が多彩だから、さまざまなワインとの相性が探れる。
大葭原 新しい発見があって、楽しいです!
(白泡)アンリ・ブラン ブリュット トラディション NV
ムニエ主体の柔らかな味わい。アプリコットやベリーの香りに、香ばしいトーストのアクセント。ムースのようなきめ細やかな泡立ちと豊かな果実味。次の1杯に手が伸びる味。
大葭原 ミネラルにシャンパーニュらしい厚みがあるので、お肉もいけますね。ハンバーガー、美味しいです!
河内 チーズサブレとも合わせてみてください。美味しいです。これはシンプルにチーズとも合わせたいですね。
情野 ムニエらしいふくよかさが、いろいろな料理に寄り添ってくれますよね。中国料理も良さそう。麻婆豆腐とか。あとは回鍋肉とか、とろみのある料理もお勧めです。
(ロゼ泡)アイス アンペリアル ロゼ
ゴールドのハイライトをまとう鮮やかなピンク色がチャーミング。イチゴやラズベリーのトーン。イチジクやネクタリンのような華やかさとやさしい甘味。氷を入れて際立つ心地いい甘味と酸味のバランスが素晴らしい。
大葭原 華やかさに心引かれます。ケーキのクリームとぴったりで、これは、女子会には“マスト”の1本ですね。
河内 (ケーキを食べて)確かに、生クリームとよく合う。デザートまでカバーできるのはいいですね。フレッシュなベリーやピーチ、イチジクとも合いそう。
情野 この甘味は脂肪分とフィットしますね。お寿司ならトロかな。(トロを食べて)うん、予想通り(笑)。「氷を入れて味が完成する」というのも、話題性があって楽しいですね。
(白)メスタ ベルデホ オーガニック 2018年
カリンやグレープフルーツなどの柑橘系アロマがさわやかで、フレッシュな印象。甘味と酸味のバランスが良く、くせがないので飲みやすい。清涼感のある酸味と苦味が初夏に合う。
河内 ベルデホのフローラルな香り。ハーブ好きにはたまらないですね。ハーブのサラダとよく合っています。さわやかな美味しさです。
大葭原 ニラ入りの餃子との相性も抜群。ハーバルな香りが印象的で、後味がすっきりします。
情野 ということは、小籠包や春巻きにもいいですね。ワインとの相乗効果で、清涼感のあるマリアージュが楽しめますね。
(白)イエローテイル シャルドネ 2019年
アプリコットや黄桃など、熟したストーンフルーツの香り。ヴァニラを感じる心地いい甘味も魅力。穏やかな酸味とふくよかなボリューム感。どんな料理とも合いそうな包容力を感じる。
大葭原 果実の甘味をストレートに感じるので、ベトナム料理とか、エスニックと相性が良さそうです。今日の料理なら、ハーブのサラダでしょうか。
河内 実は、今、カマンベールチーズの上にパクチーを乗せて食べてみたのですが、美味しかった。(笑)
情野 自由な感じがいいね(笑)。でも、それが家飲みの楽しさですね。“ちょい足し”とか、楽しいと思います。このワインは、けっこうオールマイティー。使い勝手がいいですね。
(白)コッポラ ロッソ&ビアンコ ピノ・グリージョ カリフォルニア 2018年
生き生きとした酸とふくよかな甘味が心地いい。レモンやリンゴのさわやかな香りとナッツのニュアンス。ピノ・グリージョらしい果実味と後口の苦味がきれいに出て、バランスがいい。
情野 このピノ・グリージョは、苦味と甘味のバランスがいいですね。ピッツァの香ばしさとも合っている。
河内 イタリア系品種だからでしょうか、やはりイタリアンと相性がいい。ボンゴレのパスタとか。あとは、軽やかな苦味が山菜の天ぷらとも合いそうだと思いました。今、パクチー&レーズンにトライしてみたのですが、けっこういけました。(笑)
大葭原 確かに、これもエスニックとの相性は良さそうです。
(白)ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ 2018年
ハーブのさわやかな香りと、柑橘類、ナッツのタッチが特徴的。しっかりとした酸があり、キレのある口当たり。くせがなく、後味に塩気と苦味が感じられる。さまざまな料理と好相性。
河内 私はこれ、好きです。うちのレストランでもグラスで出したことがあります。ミネラル感がきちんとあって、料理を生かしてくれます。今日の料理なら、ボンゴレやトマトソースとの相性は抜群!
情野 確かに、イタリアンに合いそうですね。
大葭原 私はフライドポテトと合わせましたが、ペアリングのカジュアル感がいいと思いました。もっと気楽になら、ポテトチップスだけでも楽しい。
情野 ワインにほんのり甘味があるので、塩気のあるものを格上げしてくれますね。
(白)ビオンタ アルバリーニョ 2017年
レモンのようなフルーツ感と、海のワインらしい厚みのあるミネラルが共存。引き締まった酸がワイン全体の味わいを引き締めている。旨味を感じる魚介類に。
情野 リアス・バイシャスのアルバリーニョ。海のワインだから、やはり魚介類との相性は最高。お寿司の鯛やイカなど、美味しいですね。
河内 ヨード香があるからか、青っぽい香りを持つものと合いますね。おっしゃる通り、イカとの相性は抜群でした。
大葭原 海老との相性もなかなかのもの。海老のピッツァ、美味しかったです。
情野 枝豆もいい。ちょっと塩気を利かせて。夏にぴったりです。
(白)アルボレダ シャルドネ 2018年
心地いい酸としっかりした樽のバランス。リンゴや桃、アプリコットの豊かな香りがあり、樽香とのバランスも取れている。ボリューム感があり、クリーム系の料理との相性は抜群。
大葭原 味わいがとてもさわやか。これは手が込んだ料理より、白身魚のカルパッチョとか、シンプルな料理に合いますね。お寿司の鯛や海老と相性がいいですね。
河内 ローストしたナッツと合わせても美味しいと思いました。香ばしさを生かしてくれます。
情野 あとは、意外と酢漬けのショウガにも合う。こういう小さな発見も楽しいね。(笑)
(ロゼ)エコ・バランス オーガニック・ロゼ ヴァレ・デル・ラぺル 2018年
淡いピンクのやさしい色合い。ピンクグレープフルーツやローズマリー、アプリコットの香り。花の蜜のような甘味と穏やかな酸味があり、“ほっこり”するイメージ。和食や肉料理にも。
大葭原 ロゼはやはりトマト系ソースに合いますね。アマトリチャーナのパスタ、とても美味しかったです。
情野 安定感のあるペアリングですよね。あとは、ロゼならお寿司のヒカリモノもいい。このロゼは甘味を感じるから、砂糖やみりんを使った和食の煮物も合います。肉じゃがとかね。
河内 美味しそうです! ロゼは、合わせる料理の幅が広いですね。
(赤)サンタ バイ サンタ カロリーナ カルメネール/プティ・ヴェルド2019年
黒系果実やペッパーの香りが特徴的。程よいタンニンと果実味のバランスが良く、飲みやすい。コストパフォーマンスも高い。
情野 チリワインは全体的にコストパフォーマンスがいい。家飲みのテッパンですね。このワインは、自然にスイーツに手が伸びますね。
河内 ガトーショコラとの相性、驚くほどいいです!
大葭原 本当に美味しいですね。濃縮感のある果実味が、カカオを引き立ててくれます。
情野 料理となら鉄火巻きも美味しいですよ。海苔の香ばしさが際立ってくる。メントール香がさわやかだから“夏の赤”としていいですね。
(赤)コノスル ピノ・ノワール ビシクレタ クールレッド 2018年
果実味がしっかりして、酸味のバランスが取れている。噛みしめられるようなジューシーさも魅力。柔らかなピノ・ノワールらしさもきちんと表現されている。冷やして楽しんでも。
大葭原 魚卵は、ワインと合わせるのがなかなか難しい。でも、このワインはイクラとウニにも相性が良くて、驚きました。
情野 確かに合いますね。魚卵の少しねっとりした感じが、ピノ・ノワールの果実味と同調しています。
河内 品種独特の繊細な酸味が、魚卵の旨味を引き立てているようにも感じます。美味しいですね。
情野 麻婆豆腐にも合いますね。辛さがマイルドになる。幅広く楽しめるピノ・ノワールです。
(赤)コノスル カベルネ・ソーヴィニヨン ビシクレタ レゼルバ 2018年
カシスなど、熟度の高い黒系果実のニュアンス。しっかりしつつもこなれたタンニンがあり、果実味も豊かで、ややフルボディな仕上がり。コストパフォーマンスにも優れている。
情野 “カベルネ・ソーヴィニヨン&ハンバーガー”は、王道ですがやっぱり美味しい。
河内 はい。ハンバーガーはワインと楽しむと、味のレベルが上がるように思います(笑)。あとは、ガトーショコラに合わせてもいいと思いました。アフターフレーバーにカカオの風味が残ります。
大葭原 私はピッツァと合わせるのが気に入りました。マルゲリータもいいですが、好みはチーズと海老、春キャベツのほう。味わいがまろやかに感じられました。
情野 これは何にでも合う。懐が深い1本ですね。
(赤)メスタ テンプラニーリョ オーガニック 2018年
プラムやダークチェリーの香り。メントールのニュアンスがあるが、果実味がしっかりしており、ボリューム感のある味に繋がっている。料理はしっかりした味付けのものを選びたい。
大葭原 オーガニックだからでしょうか、飲み疲れしませんね。チーズサブレと合わせたら、ワインでチーズのコクが引き立って、とても美味しかった。気軽な組み合わせがいいと思いました。
情野 チーズは王道で合いますね。簡単なおつまみで楽しめる感じがいい。
河内 料理なら春巻きや餃子、小籠包。点心類と楽しめそうです。
情野 おなかがいっぱいになったら、ゆっくり、単体で飲んでもいいね。酸が際立って、フレッシュ感が出ます。
(赤)コノスル オーガニック カベルネ・ソーヴィニヨン カルメネール/シラー 2018年
しっかりした色合いながらも、まろやかな味わいで飲みやすい。果実味が豊かで、後味にスパイシーさを感じるので、中国料理との親和性が高い。夏は冷やして飲んでもいい。
河内 ちょっと意外ですが、これ、ウニと合いました。イクラは、正直イマイチでした(笑)。家飲みは、こういう冒険ができて面白いですね。
情野 私は餃子と合うと思いました。ワインにメントール香があるので、さわやかな味わいになる。
大葭原 春巻きも美味しいです。情野さんがおっしゃるように、メントール香が味わいを軽やかにしてくれますね。ボリューミーなハンバーガーも、より美味しくなりそうです。
(赤)ソラール ビエホ クリアンサ 2018年
果実味の豊かさとしっかりしたタンニンからなる骨格を感じる。全体的にシャープで、輪郭もはっきりしている。酸と果実味にメリハリがあり、飲み疲れがしない。冷やしても美味しい。
河内 このテンプラニーリョはタンニンがしっかりしている。穴子のツメの甘さにピタリとハマります。
情野 甘い味を引き立ててくれるワインですね。ガトーショコラとの相性もバッチリ。これはカカオというより、チョコレートの甘さそのものがより高みにくる感じ。
大葭原 いわゆる“がっつり系”の料理にも合いますよね。とんかつとか、お好み焼きとか。
情野 いいですね。豚肉料理などをより美味しくしてくれそうです。
(赤)ブルゴーニュ ルージュ クーヴァン・デ・ジャコバン 2017年
チェリーなど赤い果実の香り。シャープな酸と緻密なタンニンが“クラシカルなブルゴーニュ”を物語る。輪郭がはっきりしており、キレの良い味わい。コストパフォーマンスも抜群。
情野 正統派ブルゴーニュ。これはやはりマグロか鉄火巻きでしょう。
大葭原 赤身の旨味が際立っています。海苔も、より上質な味になった感じがします。
河内 ガトーショコラもいいですよ。最初は酸っぱく感じるのですが、チョコレートの香ばしさが際立ってきます。
情野 デザートにピノ・ノワールは「あり」ですね。後味のモカフレーバーもいい。カベルネ・ソーヴィニヨンとはまた違う魅力ですね。
河内 こういう意外な組み合わせに出合うと、“ワインのスペクタクル”が感じられて楽しいです。(笑)
(赤)ボバル・デ・サンファン・ティント 2018年
果実味がさらりとしており、全体的にシャープな印象。酸とタンニンはしっかりあるが、くせがなく、飲みやすい。バランスがいいので、さまざまな家庭料理にマルチに合いそう。
河内 変化球ですが、タバスコとよく合います。辛くしたオニオンリングやピッツァが美味しい!
情野 ワインに清涼感があるからかな? 赤なのに枝豆やケーキの生クリームとも合います。面白いね。
河内 生クリームとも親和性があるとは。では、チーズも自然に合いますね。(カマンベールを食べて) あ、より滑らかに感じます。くせがなくて、どんな料理にも寄り添ってくれますね。
大葭原 その日あるお料理で、カジュアルに楽しめる感じがいいですね。
今回のテイスター
text by Kimiko ANZAI
photographs by Tomokazu MATSUKAWA
food styling by Yoko KUBOTA
取材協力:株式会社オカフーズ