「シャトー・アンジェリュス」は2018年ヴィンテージ『シャトー・アンジェリュス “フェニックス”』とセカンドワイン『カリヨン・ダンジェリュス』、サードワイン『No.3 ダンジェリュス』の出荷を開始した。シャトー・アンジェリュスのステファニー・ド・ブアール・リヴォアル社長に18年ヴィンテージにについて聞いた。

ーー今回リリースした2018年ヴィンテージの特徴について教えてください。

 2018年の前半は大量の雨が降り続き、湿った天候でした。このためベト病が蔓延し、畑の仕事は困難を極めました。私たちがビオ栽培に切り替えた最初の年だったのですが、難しい対処を強いられ、“記憶に残る洗礼”を受けることになりました。幸い、素晴らしい技術スタッフが正確に仕事をこなし、ベト病を効果的に抑え込むことに成功しました。
 その後、天候が急速に回復し、前半とは逆に大変乾燥した干ばつぎみの天候となりましたが、春先の降雨で土壌に十分な水分があったため、最後まで順調に成育しました。ほとんど絶望的だった前半の状態から奇跡的に好転し、最終的に素晴らしいミレジムになったことから、死から蘇って永遠の生命を得るギリシャ神話の“フェニックス”にこの年を例えることにしました。ボトルに刻印した赤いフェニックスはこのミレジムに対する私たちの特別な思い出を表現したものです。

画像: 『シャトー・アンジェリュス フェニックス 2018年』(CHÂTEAU ANGÉLUS ,LE PHÉNIX)

『シャトー・アンジェリュス フェニックス 2018年』(CHÂTEAU ANGÉLUS ,LE PHÉNIX)

ーーシャトー・アンジェリュス “フェニックス”と同時にリリースしたセカンドワイン『カリヨン・ダンジェリュス』、サードワイン『No.3 ダンジェリュス』について教えてください。

 カリヨン・ダンジェリュスは1987年ヴィンテージから造っていますが、現在は「シャトー・シュヴァル・ブラン」と「シャトー・フィジャック」の間にある2012年に購入した5ヘクタールの畑と、サンテミリオン村に隣接するサン・クリストフ・デ・バルド村に所有している数ヘクタールの畑、そして、シャトーの周囲に昔から所有している7ヘクタールなど、合計18ヘクタールの畑のブドウで造っています。
 場所により土壌が異なり、シャトー周辺の畑は粘土質土壌、シュヴァル・ブランとフィジャックに挟まれた畑は砂、砂利質土壌、サン・クリストフ・デ・バルド村の畑は石灰質土壌です。こうしたサンテミリオンのモザイク状の土壌が相互補完的な役割を果たし、複雑でバランスの取れた独自のアイデンティティーを持つ個性的なワインを生み出しています。
 サードワインの『No.3 ダンジェリュス』は1987年ヴィンテージから『シャトー・マズラ』の名称で販売してきましたが、2007年にこの名称に変更しました。このワインも、現在はセカンドワインのカリヨン・ダンジェリュスと同じ畑で造られていて、特に若い樹齢の区画を使っています。
 19年8月にこれらのワインを醸造するための新しい醸造所をサンテミリオンに近いサン・マーニュ・ド・カスティヨン村に建設しました。2019年ヴィンテージから新しい醸造所で醸造を開始し、二つのキュヴェはより洗練され、その個性を一層的確に表現したワインになっています。

画像: 『カリヨン・ダンジェリュス 2018年』(CARILLON d’ANGÉLUS)

『カリヨン・ダンジェリュス 2018年』(CARILLON d’ANGÉLUS)

画像: 「カリヨン・ダンジェリュス」と「No.3 ダンジェリュス」を醸造するための新しい醸造所が2019年8月に、サンテミリオン村に近いサン・マーニュ・ド・カスティヨン村に建設された

「カリヨン・ダンジェリュス」と「No.3 ダンジェリュス」を醸造するための新しい醸造所が2019年8月に、サンテミリオン村に近いサン・マーニュ・ド・カスティヨン村に建設された

ーー『No.3 ダンジェリュス』はすでにとても心地よく飲めますね。

 2018年は成育が早かったので、素晴らしい果実味とフレッシュさがあり、エレガントでしなやかです。このワインには濃縮度や厚みを追い求めず、繊細さ、飲みやすさを優先しています。品種構成はメルロ90パーセント、カベルネ・フラン5パーセント、カベルネ・ソーヴィニヨン5パーセント。カベルネの比率はわずかですが、これがエレガントさと張り、構造を与えています。
 一方、カリヨン・アンジェリュスはメルロが85パーセント、カベルネ・フランが15パーセントで、非常にピュアなワインです。そして、味わいの中盤に肉付きと内容、アロマの広がり、独特の表現があり、個性が感じられます。とりわけ、フィニッシュが印象的で、心地いい味わいが長く残ります。

画像: 『No.3 ダンジェリュス 2018年』(No.3 d’ANGÉLUS)

『No.3 ダンジェリュス 2018年』(No.3 d’ANGÉLUS)

ーーシャトー・アンジェリュスの2018年はプリムールでも良い評価を得ています。

 品種構成はメルロ65パーセント、カベルネ・フラン35パーセント。とりわけメルロの出来が素晴らしい。そして2018年に導入した30ヘクトリットルの二つのフードルを使ってカベルネ・フランを熟成することにより、古木が持つ繊細さと新鮮さを十分に表現できるようになりました。今後フードルをさらに増やすことにより、シャトー・アンジェリュスの独特のタンニンの表現をより洗練されたものにできると考えています。
 最近では2016年がシャトー・アンジェリュスらしい力強さと奥行きを持つ素晴らしいミレジムとして評価されていますが、2018年は、区画ごとに一層丹念に仕事をすることで、一段とニュアンスに富んだ高画質の階調表現が可能になったといっていいでしょう。シャトー・アンジェリュスの特徴の一つは常に力強さを秘めていることがですが、2018年は同時にこれまでにないエレガントさがはっきりと刻印され、新しいレベルになっています。

ーー2018年ヴィンテージの一般消費者向け販売価格は?

 フランスのワイン専門店での販売価格はシャトー・アンジェリュスが380~400€(4万7500円~5万円)、カリヨン・ダンジェリュスが100~110€(1万2500~1万3750円)、「No.3 ダンジェリュス」が45€(5625円)前後です。

ーーリヴォアルさんが8代目の社長に就任して以来、ワイン造りで変わったことはありますか?

 樽熟成の仕方を工夫し、より細かく、丁寧に熟成し、正確なセレクションを行うことで一層深みのある、エレガントなワインを追求してきました。シャトーを引き継いだのは2012年ですが、私自身がスタッフを率いて独自のワイン造りに挑戦したのは15年ヴィンテージからです。チャレンジするといっても革命的なことはできません。わずかな改善の努力を積み重ね、たゆまず質の向上を図ることが挑戦だと思っています。

画像: 右から、7代目のユベール・ド・ブアール・ド・ラフォレ氏、8代目、現社長ステファニー・ド・ブアール・リヴォアルさん、叔父のジャン・ベルナール・グルニエ氏


右から、7代目のユベール・ド・ブアール・ド・ラフォレ氏、8代目、現社長ステファニー・ド・ブアール・リヴォアルさん、叔父のジャン・ベルナール・グルニエ氏

画像: シャトー・アンジェリュスの名称は朝、昼、晩、祈りを促すためのお告げの鐘(アンジェリュス)にちなんで名付けられたもの。サンマルタン、サンテミリオンの二つの村の教会、そしマズラ礼拝堂が鳴らす三つの鐘の音が同時に聞こえることに由来するという

シャトー・アンジェリュスの名称は朝、昼、晩、祈りを促すためのお告げの鐘(アンジェリュス)にちなんで名付けられたもの。サンマルタン、サンテミリオンの二つの村の教会、そしマズラ礼拝堂が鳴らす三つの鐘の音が同時に聞こえることに由来するという

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