山形県の「高畠ワイナリー」が8月、オンラインテイスティング会を開催した。例年現地でテイスティング会を開催してきたが、2019年、20年とコロナウイルス感染拡大という状況下で中止となり、今年は初のオンラインでの開催となった。

 代表取締役社長の村上健氏はあいさつの後、今年のブドウの状況を伝えた。

 「4月後半は遅霜の影響があり農作物の成育が心配されましたが、醸造用ブドウは被害が少なく、現在も順調に育っています」

 また最近のトピックスとして「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」(イギリスで行われるワインコンペティション)、『デキャンター』(イギリスのワイン誌)で2017年の赤ワインがゴールドメダルに。これまでのシャルドネに対する高い評価に、赤ワインが加わろうとしている。

画像: セラーで試飲をする醸造責任者の松田旬一氏(左)、営業部の木村英男氏

セラーで試飲をする醸造責任者の松田旬一氏(左)、営業部の木村英男氏

醸造責任者が目指す理想のワイン

 醸造責任者の松田旬一氏は「目標は毎年進化し続けること。ボルドーやカリフォルニアなどの銘醸ワインで感銘を受けたことを胸に刻み、高畠でとれたブドウを使って特徴を生かすことに注力しています」と語り、ワイナリーが目指すしっかりした味わいのワインをテイスティングした。白は樽を効かせたもの、赤はボルドー品種の重厚なものだ。

『バリックシャルドネ 2019年』

 250樽ほど樽発酵させて造るワイン。2014年、上和田のシャルドネや契約農家の木村氏のシャルドネなどで品質の高いドウができたため、個別に造り始めたキュヴェ。以降、良質なブドウを選択して小ロットで樽発酵させている。19年はタンク発酵したものも少量ブレンドし、樽の香りを抑え果実の香りを持たせた。

『ラ・クロチュア・エレクトリック・エン 上和田シャルドネ 2018年』

 このワインの畑は標高が高く、収穫が遅いため、小粒で熟度の高いブドウができる。

 「1年間樽熟成させ、甘い果実のニュアンスが生きた、華やかでしっかりしたものに仕上げています」と松田氏。『バリックシャルドネ』よりアルコール感があり、粘性もある。樽発酵だけで造るキュヴェで、2014年からスタート。試行錯誤を重ねて、ようやくこの18年ヴィンテージで納得できるものになったという。

『フニクリフニクラ・デ・木村シャルドネ 2018年』

 ブルゴーニュ・ワインをイメージして造るワイン。ほかのワインに比べて樽香をあまり出さず、果実味を重視している。そのため、ブドウが熟して緑色から黄色、さらにオレンジ色になるまで待つ。熟度の高いブドウの特徴を立たせているため味わいが濃く、個性が強い。ここまでまとめ上げるのに苦労した、と松田氏は言う。

『バリックメルロー&カベルネ・ソーヴィニヨン 2017年』

 抽出をしっかり行って造る。タンクの温度管理を行いながら温度を上げ、ポリフェノールを抽出。メルロを多めにブレンドすることで理想のボルドー・スタイルに近付けている。

『マジェスティック ローグル・ルージュ 2017年』

 『デキャンター』誌で金賞を受賞したワイン。世界的なワインコンクールでは初の金賞獲得となった。『バリックメルロー&カベルネ・ソーヴィニヨン』に使用していたブドウの中で上質なものを選び、ワンランク上のワインとして醸造。

 「セニエやフェノールの抽出などの段階を見極め、理想の味わいに近付けるのに苦心しました」と松田氏。

『マジェスティック ローグル・ブルー 2017年』

 メルロ主体で造る。カベルネ・ソーヴィニヨンよりも糖度が高く、凝縮感のあるワインとなる。2017年は秋からの収穫期の天候がとても良く、特に10月以降に収穫したブドウは非常に出来が良かったという。

「2021年のワインと未来」

 8月初旬、オンラインセミナーがあった日は朝から30℃を超えていた。「今年は特に日照時間が長く、凝縮したブドウになりそうです。2020年は最高の年となりましたが、今年はそれを超えそうです」と松田さん。現在、高畠ワイナリーでは区画ごとに仕込める小規模なワイナリーを作る計画があるという。世界基準で高い理想を掲げ大きく前進している。

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