シチリアの代表的ワイナリー「タスカ・ダルメリータ」
シチリアを牽引するワイナリー「タスカ・ダルメリータ」。8代目当主アルベルト・タスカ・ダルメリータ氏が4年ぶりに来日し、主要なワインをお披露目した。日本人に次いでマグロを多く食するシチリア人の造るワインは、和食と抜群の相性を示し、暑い地中海の島国というイメージからは想像できないエレガントな味わいだった。
タスカ・ダルメリータの創業は1830年。農園「テヌータ・レガレアーリ」を核に、五つのテヌータ(農園)を所有する。1970年代にカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどの国際品種を生産し、今やイタリア最大のオーガニック産地であるシチリアのサステイナブル農法のリーダーでもある。
シチリア南部は、緯度ではアフリカより南に位置する場所も多い。シロッコが吹き付け、真夏の気温は高いが、夜間は冷え込み、ブドウにしっかりと酸が乗る。そうした気候を生かして、シチリアの名前を世界に広めようと造ったのが、スパークリングワイン『アルメリータ・ブリュット』だ。
『アルメリータ・ブリュット』を含めた全7種類のワインと、ホテル・ニューオータニ「紀尾井 なだ万」の懐石料理とのアッビナメントを試みた。
『アルメリータ・ブリュット』はすがすがしい酸とライムの香り、ソルティな風味があり、炙りサバ寿司、お造りの本マグロやタイと素晴らしい相性。泡と旨味を含むスパークリングワインのフレッシュ感は、暑い土地で造られたワインとは思えない。万能のペアリングワインだ。
『レガレアーリ・ビアンコ 2021年』は固有品種のインツォリア、グレカニコ、カタラットと、シャルドネのブレンド。すがすがしい酸、柑橘のアロマ、ほろ苦味のバランスが取れていて、単体でも楽しめるが、複雑な味わいは料理を引き立てる。ウニ海苔巻き、アスパラガスの天ぷらと見事な調和を見せた。
タスカ・ダルメリータには『シャルドネ・ヴィーニャ・サン・フランチェスコ』など優れた白ワインが多く、そもそも魚介との相性がいいワインを得意とする。シチリアでは島の至る所に漁港があり、リストランテでは新鮮なカルパッチョや魚介のパスタが食べられる。旬の山菜や魚介をベースに組み立てる和食と合うのは当然と言える。
一方、シチリアの内陸に入ると、家畜の豚や鶏、牛の料理も豊富だ。旨味の詰まった豚角煮には『ロッソ・デル・コンテ 2017年』を合わせた。これは固有品種のネロ・ダーヴォラとペッリコーネをブレンドした濃厚な赤ワイン。タスカ・ダルメリータを代表する存在で、レッドベリー、甘いスパイスなど、バランスの取れた味わい。シチリアの大地を思わせる重厚さが、日本の豚肉の生命力溢れる味わいと調和した。
ワインの問い合わせ先:アサヒビール㈱ 0120-011-121(お客様相談室)
text by Akihiko YAMAMOTO
photographs by Hisai KOBAYASHI