五感を生かしたテイスティングの達人セヴリーヌ・フレルソンさんは、口中で感じるテクスチュア(質感)を大事にしている。数多くの醸造家の中で、質感について語れる稀有な存在だ。
ペリエ ジュエの世界観
シャルドネを要にし“花のような”をキーワードにしているシャンパーニュメゾン「ペリエ ジュエ」。2020年に第8代最高醸造責任者に就任したセヴリーヌ・フレルソンさんは「今まで培ってきた遺産を守り、フローラル感を強調し、メゾンの“核”となるシャルドネを大事にしていきたい」と語った。
日常のさりげない事柄から多様な要素を感じ取る能力に長けたセヴリーヌさん。花を例にして「花の厚みや質感は、シャンパーニュを口に含んだ時の滑らかさや凝縮感をイメージすることができるので、視覚での感覚を、味覚で共有できる」と解説した。この「質感」はペリエ ジュエのシャンパーニュの味わいを表現するキーワードになりそうだ。
“寛大さ”の2014年ヴィンテージ
昨秋発売を開始した『ペリエジュエ ベル エポック 2014』。気候は難なく過ぎた前半と比べ、後半はフローラルさや果実味を残すために収穫の見極めが大事だったという。9月8日から収穫を開始したシャルドネは、酸味と糖分のバランスが良好。12日から着手したピノ・ノワールとムニエは湿気と暑さのせいもあり、デイジー村にあるムニエの畑では収穫のタイミングに配慮。“générosité(ジェネロジテ=寛大)”と表現できるヴィンテージは、複雑味とストラクチュアを備えている。
日本はインスピレーションの宝庫
「今回の滞在で、新たな発見があった」とセヴリーヌさん。「寿司店で出された『北海道サロ別鴨の花山椒焼き』が、ベル エポック 2014のシャルドネ由来の味わいと相乗し、素晴らしい相性だった」と言葉を続けた。作柄が良いシャルドネには白コショウのニュアンスがある。花山椒が醸し出す繊細な芳香や食感が、ジューシーで肉質の柔らかな北海道産の鴨と、渾然一体となった好例だ。フランスでは、鴨料理には『ベル エポック ロゼ』を合わせることが多い。飼育する環境や与える餌が異なれば、鴨の肉質にも違いは出るので、テクスチュア(質感)にも作用する。
フランスの柑橘系果実、クレモンティーヌ、オレンジ、レモンの要素を備えている果物として、セヴリーヌさんが名を挙げた「黄蜜柑(きみかん)」。果皮が黄色で、果汁が多く、さわやかな香りの和柑橘だ。日本の食材から多くのインスピレーションを受けているセヴリーヌさんの今後が楽しみだ。
photographs by Kentaro TAKIOKA
問い合わせ先:ペルノ・リカール・ジャパン㈱ TEL.03-5802-2671