秋のビヨンド・ボルドー商戦のインパクトが高まっている。9月にグループ・タイヤン(ジネステ)の東京オフィスで行われた試飲会を訪れて、多彩なワインを試飲した。
ビヨンド・ボルドーとは、ネゴシアン、クルティエ、シャトーの3層構造からなる流通システム「ラ・プラス・ド・ボルドー」が、ボルドー以外のワインを販売するキャンペーンのこと。ラ・プラス・ド・ボルドーは、春のプリムール(先物取引)商戦に象徴されるように、ボルドーの高級ワインを世界に流通させるために始まった。この世界最古の市場に、近年は新世界やフランス以外の旧世界の生産者も参入して、活況を呈している。
生産者にもバイヤーにもメリット
チリのアルマヴィーヴァ1996年が、1998年に販売されたのがフランス以外のワインが売られた最初。オーパスワンが毎年9月にラ・プラスで販売するようになり、ナパヴァレー、チリ、アルゼンチン、南アフリカの有名生産者らが追随するようになった。ここ数年は、ピエモンテ、スーパータスカン、プレスティージュ・シャンパーニュなど伝統国のワインも増えている。
新規参入する生産者には、各国のインポーター経由で販売するよりメリットがある。ボルドーの有力ネゴシアンを使えば、幅広い市場に販売できる。短期間で評価と価格を高められる。熟成中のバレル・サンプルを評価するプリムールと違って、瓶詰めしたワインを試飲するので、バイヤーも買い付けしやすい。
目立ったスーパータスカンや南米産ワイン
東京でも8月から9月にかけて、ジネステやCVBGの試飲会が毎年、開かれるようになった。ジネステで目立ったのは、ほぼ半分を占めたイタリアワイン。ポッジョ・ディ・ソットやソライア、ビー・ビー・グラーツなどのトスカーナ勢と、古いヴィンテージも出してきたバローロのパルッソなどのピエモンテ勢。近年の品質向上ぶりがよくわかった。
チリのアルマヴィーヴァ、セーニャ、アルゼンチンのカテナ・サパータなどの南米産ワインは、格付けボルドーに負けない凝縮感とフレッシュ感を備えた銘柄が多く発見がある。
地元フランスのボーカステルのオマージュ・ア・ジャック・ペラン、ルクレール・ブリアンのシャトー・ダヴィーズなどの少量生産キュヴェは、秋のビヨンド・ボルドー商戦以外では試飲する機会も少ない。プロには貴重な機会を提供してくれた。
text by Akihiko YAMAMOTO