キリンビールのクラフトビール事業「スプリングバレーブルワリー(以下、SVB)」が、同ブランドのフラッグシップビール「496」を全面改良した「SPRING VALLEY 豊潤<496>」の缶商品を2021年3月23日(火)から全国のスーパーやコンビニチェーンなどで発売する。2015年のSVB開業以来、ブランドデザインや商品ラインナップの変更を伴う大幅なリブランディングは初めてとなる。

新商品「豊潤<496>」の発売に伴い、3月12日(金)に各メディアを対象とした体験イベントがオンラインで開催された。今回のリブランディングの目的や、新商品に込めた造り手としてのこだわりや想い、そして、同社が考える「クラフトビール」で目指す未来とは?
――イベントを通じて発信された造り手のメッセージをレポートする。

特別な場所だけではなく、家庭でクラフトビールを気軽に楽しむステージへ

イベントでは、キリンビールの事業創造部スプリングバレー担当 吉野桜子さんが、同社のクラフトビール事業の取り組み、「スプリングバレー」ブランドの原点について解説。2011年からはじまったクラフトビール事業の構想とスプリングバレープロジェクトの本格化、2015年に設立されたブランド拠点となる飲食店SVB東京店、横浜店、京都店オープンの流れと並行して2017年にスタートした飲食店向け小型ディスペンサー「タップ・マルシェ」の展開について、時系列で紹介された。

キリンビールでは、これまで直営飲食店SVBの運営や特別な設備が不要で3Lペットボトルから提供できるタップ・マルシェの展開を通して、顧客とクラフトビールとの「接点」を増やしてきた。その中で若年層のビールファンの拡大を実感。クラフトビールをより気軽に、手に取りやすい存在として楽しんでもらうために既存のスプリングバレーブランドを刷新し、次のステージにつながるステップアップとしてリブランディングを実施した。最も後押しとなったのが、2020年のコロナ禍でのライフスタイルの変化だ。

自宅時間が増える中、家庭で過ごす時間を充実させるための消費が加速。食事や家飲みの充実を求めて、品質にこだわる消費者が増え、同社のクラフトビール商品(缶)も前年比約3割増の販売数量となった。国内のクラフトビール業界の傾向としても、一般消費者に向けた缶商品への切り替えやEC販売に積極的な事業展開が目立つ。そういった家庭でのクラフトビール需要増や消費行動の変化をきっかけとして誕生したのが「SPRING VALLEY 豊潤<496>」だ。

画像: これまでのSVBシリーズと異なり、王道でクラシカルな雰囲気を全面に出した新パッケージ

これまでのSVBシリーズと異なり、王道でクラシカルな雰囲気を全面に出した新パッケージ

“ 私たち ”が考える「クラフトビール」

続いて、SPRING VALLEY 豊潤<496>のブランドコンセプトと商品概要について、マスターブルワーの田山智広さんが解説。味わいについて、「『496』のバランスの良さを極限まで追求した豊潤さと、後味のきれいさを両立させた」と述べた。「豊潤496」では、同社の技術的なエポックメイキングであるホップの香りづけ製法「ディップホップ」を用いてホップの個性が突出しすぎない香りと苦味を付与しつつ、ビールとして奇をてらわない、王道の味わいのバランスを目指している。
 
ターゲットは、ビール類ユーザー全般としつつ、特に狙いたいのは40~50代男女。
クラフトビールが浸透しつつある30代より上の世代、これまで知識としてはあっても、商品購入までには至らなかった層を主なターゲットとしている。ターゲット層の変化は、既存のSVBブランドのデザインから大きく舵を切った新パッケージのデザインからも感じられる。ワインレッド×ゴールドをベースとした古風ともいえる王道感がもたらすのは、正統派という親近感や安心感だ。

キリンビールが考える、「クラフトビール」とは?

吉野桜子さんと田山智広さん、両者が「定義や考え方には諸説あるもの」と前置きをしつつ語ったのは、同社におけるクラフトビールの位置づけだ。「私たちが考えるクラフトビールとは、造り手の感性と創造性が楽しめるビール」と言及し、その根底にあるのは、「みんな違ってみんな良い」というダイバーシティ思考であることを強調。SVBブランドのビール造りは、上下関係のようなヒエラルキーのない多次元発想をベースにさまざまなビールに触れることで、ビールのおいしさを再発見してほしい、という願いが込められている。

画像: <おすすめのペアリング1> スパイスやハーブ料理を引き立てる「豊潤496」×「缶つま 厚切りベーコンのハニーマスタード」

<おすすめのペアリング1>

スパイスやハーブ料理を引き立てる「豊潤496」×「缶つま 厚切りベーコンのハニーマスタード」
画像: <おすすめのペアリング2>乳製品やミルク系・ベイクした料理と好相性の「豊潤496」×バスク風チーズケーキ

<おすすめのペアリング2>乳製品やミルク系・ベイクした料理と好相性の「豊潤496」×バスク風チーズケーキ

「どんどん浮気してほしい、それがビールの世界を豊かにする」

最後はマスターブルワー田山さんとマーケティング担当の吉野さんの対談、そして参加メディアの質疑応答タイム。その中から、いくつか印象的だった回答をピックアップする。

―― SVBが考えるクラフトビールの魅力、「豊潤496」の位置づけ ――

田山さん:我々がクラフトビールの本質だと考えるダイバーシティ=多様性は、キリンビールが主体となるスプリングバレーブルワリー単独で実現できるものではない。さまざまなクラフトブルワーと一緒に活動していくべきだと考えている。SVBではこれまで150以上のビールを出してきたが、中には国内外さまざまなブルワリーとコラボしたビールやインスパイアされたレシピもある。クラフトの良さのひとつは、オープンなところ。ノウハウやレシピを公開して、お互い刺激しあう関係で他のブルワリーやお客様と一緒にビールを造ってきた。

クラフトの良さで言えば、お客様との距離の近さもある。
コアなファンはサポーターであると同時に、良き批判者であり良きアドバイザーでもある。厳しいことも含めて、ビールの良いところ、悪いところをしっかり言ってくれる。ここがナショナルブランドとは違うクラフトの良さ。飲み手とコミュニケーションを重ねることで、お客様と一緒に造っているというワクワク感もある。

この豊潤496をきっかけに、クラフトビールを気になっていたけど飲んだことがないという人に、「こんなおいしいビールがあったんだ」と知ってもらいたい。そしてこのビールを飲み続けるだけではなく、できればどんどん他のビールにも浮気してほしい。今、日本にはおいしいクラフトブルワリーがたくさんある。興味を持って他のビールにチャレンジすることで、改めて豊潤496の魅力も再発見してもらえるだろうし、ビアライフがますます豊かになる。

「496」には「永遠に完成しない」という意味も込められている。
この豊潤496もパーフェクトだとは思っていない。これをさらに高みにもっていくために、飲み手からの忌憚のない意見がほしい。そして、皆さんと一緒に「496」を育てていきたいと思っている。

―― スプリングバレーブランドで実現したい夢、目標 ――

田山さん:缶商品で大きく展開することになった背景には、『より多くの人にクラフトビールを届けたい』と思って活動してきた取り組みにスピードが伴わなかったという反省点がある。タップ・マルシェの展開などを経て、着実に接点を増やしてきたものの、それらはあくまで料飲店での話で、「家庭でクラフトビールを飲む」というところまで届かなかった。そのため、直近の目標としては近所で買える、どこでも手に入る販売チャネルに乗せて、普及を加速させるための缶商品発売である。

その先にある大きな志は、JAPANオリジナルのビールを確立していくこと。
海外で流行っているものをコピーしても意味がない。現在キリンではディップホップ製法をプラットフォームとしてオリジナルを創っているつもりではあるが、まだまだ胸を張って海外に発信できるレベルではないと感じている。

ゆくゆくは外国人観光客が日本を訪れる動機のひとつとして、「日本のビールを飲みに行く」という人が増えるように、日本のビールのオリジナリティを創りたい。日本が誇る和食と肩を並べらえるものとして、日本のクラフトビールが挙げられるように。しかしこれはキリン単独でできることではない。クラフトブルワーの仲間たちの力を結集して、未来に一歩でも二歩でも、そういった未来に進んでいきたい。

―― グランドキリンとのブランディングの違い ――

吉野さん:グランドキリンについては、既にクラフトビールを知っている人に向けて、ビアスタイルのバラエティを知ってもらう目的で量販で展開している。スプリングバレー豊潤496については、クラフトビールを知らない世代に向けての訴求、クラフトビールを知ってもらいたいという考えがベースにある。こちらもスーパーやコンビニなど身近な接点で広めていきたい。

――クラフトビールとプレミアムビールの違い――

田山さん:「プレミアムビール」とは、ヒエラルキーを作る発想だと考えている。
良い原料でつくった高品質なビールという意味合いの表現でもあるが、その裏にはピラミッドの頂点にプレミアムがあり、その下にスタンダード、エコノミーがあるように、一つの軸でビールを区分するという一次元的な考え方がある。一方で、クラフトは多次元の発想がベース。違いはあるが、そこに優劣やヒエラルキーの発想はない。そこが大きな違いだと思う。

―― 従来の「496」と「豊潤496」のコンセプト、香味設計の違い ――

田山さん:オリジナルの「496」は、ビール通も唸らせる味わいを目指して、唯一無二の特徴を全面に立てたもの。今回の「豊潤496」は、初心者や中級者もなじめるように、奇をてらわない王道キャラクターを主軸としている。クラフトビールを初めて飲んだ人が一口目で違和感を抱かず、二口目、三口目で飲み進むうちに「あれ? なんか違うぞ?」と特別感を覚えるような世界観を追求している。

日本でクラフトビールをもっと身近に楽しんでもらう一手として布石を打った「SPRING VALLEY 豊潤<496>」。その目線の先には、多くの国内クラフトブルワリーと連携したクラフトビール市場の拡大と活性化、品質の底上げによって、日本オリジナルブランドを確立したいというビジョンがある。
“永遠に完成しない”ブルワリーが踏み出した、新たなステージだ。

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