シャブリ地区に拠点を置くメゾン・シモネ・フェブルは1840年の創業で、シャブリ地区で最も歴史あるメゾンとして知られている。特に、スラン川左岸のミネラル感とサリニティ、右岸の力強さという、シャブリ地区のテロワールの多様性を表現することで定評がある。CEOのポール・エスピタリエ氏は特にビオロジックワインの品揃えに注力しており、2018年ヴィンテージから本格的にスタートしたビオロジックワインは、当初の三つのキュヴェから、現在では八つのキュヴェにまで成長した。このほど、パリ16区の名門レストラン「デュカス・バカラ」で開催された試飲イベントで、シャブリ地区のテロワールから生まれたこれら八つのビオロジックワインが披露された。
ビオロジックへの取り組み:哲学と実践
エスピタリエ氏のビジョンは明確で「伝統的な栽培方法とビオ栽培を対立させるのではなく、ビオロジック栽培を選択したパートナー生産者の仕事を評価すること」。2018年から認証機関エコセールと連携し、長年の信頼関係で結ばれた栽培パートナーとともに綿密なプロジェクトが始動した。
現在、メゾン・シモネ・フェブルはプティ・シャブリからグラン・クリュまで、シャブリの階層を網羅する完全なビオワイン・コレクションを提供している。
『クレマン・ド・ブルゴーニュ ブリュット P100』
品種: ブラン・ド・ノワール(ピノ・ノワール100%)
醸造: 伝統的製法による瓶内二次発酵、ドザージュ6g/l
熟成: 24カ月
ヨンヌ県のテロワールから生まれる、エレガントなクレマン。美しい黄金色のローブと細やかな泡立ち。香りにはグレープフルーツや柑橘類のアロマが際立つ。口中では、ピノ・ノワール特有の豊かさと骨格が感じられ、ドザージュの低さにもかかわらず、長期熟成のポテンシャルを秘める。
『ヴェズレ BIO 2023年』
品種: シャルドネ100%
栽培地: ヴェズレ、アスカン、サン・ペール、タロワゾーの各村(64ha)
醸造: ステンレスタンク、16~20℃で発酵
熟成: 6~8カ月間シュール・リー
ヨンヌ県北部の高地から生まれる、フレッシュで心地よいワイン。淡いゴールドの色合いに、ミネラル感と果実のアロマが特徴的。同じシャルドネを使っているがシャブリとは異なる個性を持ち、甲殻類、魚料理、鶏肉、そしてシェーヴル・チーズとの相性が抜群。
『プティ・シャブリ BIO 2023年』
品種: シャルドネ100%
テロワール: アペラシオン・シャブリの周辺部、ポルトランディアン系の石灰質土壌
醸造: ステンレスタンク、16~19℃で発酵
熟成: 6~8カ月間シュール・リー
シャブリのアペラシオン周辺地区に位置し、石灰分豊富で表土が薄く、高台や浸食を受けた台地の石の多い軽い土壌が特徴。このテロワールらしい新鮮さ、柑橘類の果実味とミネラル感が見事に表現されている。アペリティフや魚介類との相性が良い。
『シャブリ BIO 2023年』
品種: シャルドネ100%
テロワール: アペラシオン・シャブリ全域、丘陵斜面から台地まで多様な立地
醸造: ステンレスタンク、16~19℃で発酵
熟成: 6~10カ月間シュール・リー
広大なシャブリのアペラシオン全域から収穫されたブドウをブレンド。丘の斜面や台地といった多様な立地と向きを反映し、シャブリの本質を体現している。果実味とミネラルの美しい調和があり、純粋なアタック、心地よい長さ、塩味のフィニッシュが感じられる。ソースを使った魚料理、エスカルゴ、アスパラガスに最適。
『シャブリ プルミエ・クリュ ヴァイヨン BIO 2023年』
品種: シャルドネ100%
テロワール: スラン川左岸、南西向き斜面
醸造: ステンレスタンク、18~20℃で発酵
熟成: 12カ月間シュール・リー
かつて「ヴァリヨン(小さな谷)」として記録されていたが、後に「ヴァイヨンVaillon」と呼ばれるようになった歴史あるクリマ。左岸特有の粘土質の少ない土壌から、シャブリのフレッシュさ、酸、ミネラルを見事に表現した、左岸を代表するプルミエ・クリュ。
花とフルーツの香り、丸みとボリューム、そしてミネラルのフィニッシュ。酸と果実の絶妙なバランスが特徴で、飲みやすく、味わいが口中で長く続く。海の幸、魚のグリル、ソースと合わせた白身肉と好相性。
『シャブリ プルミエ・クリュ モンマン BIO 2023年』
品種: シャルドネ100%
テロワール: スラン川左岸、南/南東向き、斜面の中腹
醸造: ステンレスタンク、18~20℃で発酵
熟成: 12カ月間シュール・リー
「中間の丘」を意味するモンマンは、二つの高い丘の間、やや低地にあり春の霜に注意が必要だが、多様な土壌構成を持つ興味深いクリマ。
特別なテロワールで、ワインに力強さと複雑なアロマを与えている。果実味、ミネラル、白亜質のニュアンス。口中では美しい緊張感と例外的な長さが感じられる。ソースを使った魚料理や白身肉と相性が良い。
『シャブリ プルミエ・クリュ フルショーム BIO 2023年』
品種: シャルドネ100%
テロワール: スラン川右岸、グラン・クリュの延長線上、西/南西向き
醸造: ステンレスタンク、18~20℃で発酵
熟成: 12カ月間シュール・リー
「fourche(分かれ道)」が語源のフルショームは、グラン・クリュの延長に位置するプルミエ・クリュ。グラン・クリュほどミネラル感は強くないが、豊かで調和のとれたワインができる。
桃などの完熟果実のアロマ。口中では、美しい丸みがあり、繊細で塩味のある酸が全体を支えている。アペリティフ、ソースを使った魚料理、白身肉のソース煮、仔牛の胸腺などがお勧め。
『シャブリ グラン・クリュ プルーズ BIO 2023年』
品種: シャルドネ100%
テロワール: グラン・クリュの丘の上部、南東向き、浅い土壌
醸造: 100%ステンレスタンク発酵
熟成: 15~18カ月間シュール・リー
「プルーズ」の名は「ピエールpierre(石)」に由来し、「la voie pierreuse(石の道)」が時を経て「la Preuse」へと変化したという。
グラン・クリュの丘の上部に位置し、南東向きの斜面と浅い土壌から、繊細で優美なワインが生まれる。淡い黄色の色調。香りはフローラル、スモーク、ミネラル。熟成とともに火打石、スパイス、花粉、蜂蜜の香りが現れる。
柔らかなアタック、繊細さ、優美さ、ミネラリティが特徴。ソースを使った魚料理、鶏肉のクリームソース、甲殻類、フォアグラと相性抜群。
『イランシー レ・マズロ BIO 2023年』
品種: ピノ・ノワール95%、セザール5%
テロワール: イランシー村「レ・マズロ」クリマ、南西向きの中腹
醸造: ステンレスタンク、20~28℃で発酵
熟成: 16~18カ月間、100%樽熟成
シャブリ地方唯一の赤ワイン産地、イランシーのワイン。クリマ「レ・マズロ」は南西向きの素晴らしい立地にあり、最適な成熟を可能にする。中腹に位置することで北風からの保護も得られる。
美しいルビー色のローブ、スパイシーなアロマ、イランシー特有の黒系果実の香り。口中ではパワフルながらシルキーなタンニンが心地よい。白身肉のソース、赤身肉、チーズとの相性が良い。
ビオロジックが引き出すテロワールの純粋性
メゾン・シモネ・フェブルが提案する八つのビオロジック・キュヴェは、シャブリ地区のテロワールの多様性を見事に表現している。そして、気候変動が進む中、ビオロジックなアプローチは自然のバランスを維持し、シャブリらしいフレッシュさ、ミネラル、繊細さを守ることを可能にしている。