text by Yasushi HONDA
photographs by Yuji KOMATSU
イタリア、トスカーナ州ボルゲリの銘醸「オルネッライア」。1981年にロドヴィコ・アンティノリ氏によって設立され、85年に初ヴィンテージをリリース。名門フレスコバルディ家がオーナーとなったのは2005年で、以来、多くのワインファンを魅了し続けている。オルネッライアCEOランベルト・フレスコバルディ侯爵と、生産管理マネジャーのマルコ・バルシメッリ氏が来日し『オルネッライア』2022年ヴィンテージ試飲セミナーを開催した。
オルネッライアが熟成とともに示す「ディテールの積層」
「オルネッライア」は2005年にフレスコバルディ家がオーナーとなって以降、ボルゲリという土地の個性をより高い解像度で表現するワイナリーへと進化してきた。トスカーナの主役がサンジョヴェーゼであるのに対し、ボルゲリはカベルネ・ソーヴィニヨンを軸に独自の評価を築いてきた産地である。かつては革新的と見なされていたこの地のスタイルは、継続と探求によって、今や明確な「伝統」として定着している。
ボルゲリは地中海に面した小さな町で、円形劇場のように丘陵が広がる地形を持つ。ブドウ畑は海に近く、標高200〜500メートルに位置する。海風の影響により熱が滞留しにくく、最も暑い8月でも日中は33℃前後、夜は20℃を下回ることが多い。内陸部の渓谷状地形では熱がこもりやすいのに対し、ボルゲリでは昼夜の寒暖差が生まれ、果実は十分な成熟を得ながらもフレッシュさを失わない。また、芽吹きが早いため、カベルネ・ソーヴィニヨンは他地域よりも長い成熟期間を確保できる点も、この地の大きな利点である。
オルネッライアのワイン造りを統括する、生産管理マネジャーのマルコ・バシメッリ氏は「まず土地を理解すること」をワイン造りの出発点とする。オルネッライアの畑は明確に区画分けされ、それぞれが異なる土壌と微気候を持つ。常に風が抜けるベッラリアは石灰岩と粘土を多く含み、フレッシュでエレガント、かつ複雑な表情を生む。ワイナリーに隣接するオルネッライア地区は、よりアロマティックで洗練されたスタイルが特徴だ。一方、西側のフェルジーニ土壌は鉄分を含む砂質で、果実味のボリュームと明確なアロマを与えるが、複雑性は他区画とのブレンドによって補完される。
すべての区画は自社畑として管理され、剪定から新梢管理に至るまで、チームが1年を通じて畑にかかわる。区画ごとに醸造されたワインは、早い段階で一度ブレンドされ、その後の変化を見極めながら最終的な形へと調整されていく。
オルネッライアの全スタッフの高い意識が高いスタンダードを確保し続け、そしてディテールの積み重ねこそが全体を構成するという考え方が根幹にある。
しかしながら、オルネッライアはワインメーカーの個性を前面に出すワインではない。この土地が本来持つポテンシャルとバランスを尊重し、若いうちからの飲みやすさと長期熟成の可能性を両立させる。その姿勢こそが、ボルゲリを革新の地から伝統の地へと押し上げてきた原動力なのである。
贅沢なオルネッライアのラインナップ
Ornellaia Bianco 2022年
2013年がファーストヴィンテージ。ソーヴィニヨン・ブラン100パーセント。極少量生産。オルネッライアの哲学とボルゲリの土地の個性を合わせた独自のワイン。決してトロピカルやエキゾチックにならないように造られている。洋梨、白桃といったストーンフルーツを主体に、フィナンシェのような甘いほのかな香り、柑橘のアフターが心地よい。
貴重なオルネッライア・ビアンコ
Le Serre Nuove 2022年
セカンドワインという位置づけではなく、より早く飲みごろを迎えるブレンドをイメージしている。熟したカシス、ミックスベリーのコンフィチュールなど。フレッシュでタンニンは熟しており、柔らかくスムーズな飲み心地。
Ornellaia 2022年 La Deteruminazione 決意
紫を帯びた濃い色調。スミレ、ブラックベリー、ブラックチェリーの凝縮した香り。果実味は豊かだが質感は柔らかく、酸が全体を引き締める。若さと熟成ポテンシャルを併せ持つ。
Ornellaia 2012年 Lincanto 魅力
やや赤みを帯びた色合い。赤い花や甘いスパイス、リコリスのニュアンス。口当たりは滑らかで、芯のあるタンニンが余韻に残る。ドライな黒系果実と土の気配が印象的。
Ornellaia 2005年
穏やかな熟成色。ドライプルーン、カシスリキュール、ヴァニラやスパイスの香り。果実味、酸、タンニンのバランスに優れ、塩味とほのかな動物的ニュアンスが奥行きを与える。
Ornellaia 2001年
艶を帯びた熟成した色合い。タバコやバルサミコ、乾いたハーブの複雑な香り。果実は落ち着き、旨味とアーシーな要素が調和する。ピラジンのかすかな香りが余韻に立体感を生む。
Ornellaia 1997年
熟した黒い果実、カシスリキュール、リコリスにほのかなミント。成熟したタンニンと力強さがあり、余韻は非常に長い。90年代らしいカベルネ主体の表現が印象的。
1997年のマグナム。28年の熟成を経た艶やかさは色と味わいに
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「オルネッライア」