カリフォルニア・ワインと聞くと、濃厚で力強いスタイルを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、「ザンダー・ソーレン・ワインズ」が目指すのは、日本料理に寄り添うエレガントな味わいだ。創設者のザンダー・ソーレン氏は、「アップル」でスティーブ・ジョブズ氏と長年働いた異色の経歴を持ちながら、“和食に合うピノ・ノワールを造りたい”という思いを形にした。今回の来日に合わせ、ワイン造りへの思いや最新ヴィンテージについて話を聞いた。

シカゴ生まれ、シカゴ育ちのザンダー・ソーレン氏。大学卒業後の2001年に「アップル」へ入社し、初代iTunesの開発にも携わった。その後も約20年間、音楽ソフトウェア部門を中心に活躍。スティーブ・ジョブズ氏とともに働いた経験も持つ。

そんなザンダー氏がワイン造りを志したきっかけは、日本への深い愛情だった。

「子どものころから日本の芸術や文化が大好きでした。日本は人生の中でも特別な存在です」

2012年「せっかくカリフォルニアに住んでいるのだから、日本料理に合うピノ・ノワールを造ろう」と考えたという。

選んだのは、カリフォルニア沿岸部の冷涼な畑。アルコール度数を抑え、美しい酸と果実味を備えたエレガントなスタイルを目指した。醸造もブルゴーニュ的なアプローチで、土地の個性を生かすため人的介入は最小限。有機栽培やサステイナブル農法を取り入れ、フレンチオークの新樽比率も控えめにしている。

ウエストソノマコーストにある「ユーキ・ヴィンヤード」。背の高いレッドウッドに囲まれた冷涼な地

これまでピノ・ノワールを中心に展開し、2024年には250本限定でロゼワインもリリース。さらにソムリエやシェフから白ワインを求める声が多く寄せられていたことから、今回初めてシャルドネが誕生したという。

ワインの中でも印象的だったのが『ハバリ シャルドネ 2024年』。海風の影響を強く受ける畑のシャルドネで、グレープフルーツをかじったようなフレッシュ感、海苔や潮のニュアンス、ミネラル感が広がる。ぼってりした果実味ではなく、すっと伸びる酸と、後からじわりと広がる旨味が特徴だ。

「出汁や刺身のような繊細な料理に合わせてほしい」とザンダー氏。カキやシーフードとの相性も抜群だという。

ワイン名のハバリは、サンタバーバラにある”エル・ハバリ”というワイン畑の名に由来しているが、日本の生花や盆栽で葉を整える“葉張り”という言葉から着想を得た。畑仕事も同じように、丁寧に整えることが大切だという考えが込められている。

その後、2021年ヴィンテージのピノ・ノワール3種を試飲した。『ザンダー サンタ・バーバラ ピノ・ノワール 2021年』『ユーキ・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2021年』そしてシグネチャーキュヴェである『ルデオン ピノ・ノワール 2021年』だ。

なかでもユーキ・ヴィンヤード ピノ・ノワールは、華やかな香りとシルクのようにきめ細かなタンニンが印象的。繊細な果実味が広がり、エレガントな余韻へと続く1本だった。

今回試飲した2021年ヴィンテージは、ザンダー氏自身も「とても良い年だった」と振り返る。夏は長く乾燥した気候が続き、降雨もほとんどなく、気温も安定し「ブドウは健全な状態で成熟を迎えた」と言う。乾燥の影響で果粒は小ぶりとなり収量は減少したが、その結果、果皮と果肉の比率が高まり、ピノ・ノワールにはより明確なタンニンと凝縮感がもたらされたそう。美しい酸と調和の取れた果実味を兼ね備え、熟成ポテンシャルにも優れるこのヴィンテージは、カリフォルニア産ピノ・ノワールの優良ヴィンテージとして評価されている。

さらに特徴的なのが、「リリースした時が飲みごろ」であること。ワインは約5年間熟成させてから発売する。

「飲みごろでないなら、自分の名前では出せません」

その言葉通り、どのワインも落ち着きと一体感があり、今まさに楽しめる完成度の高さを感じさせた。

また、最も重要なキュヴェが、ルデオン ピノ・ノワールだ。両親の名前、ルカとレオンを組み合わせたシグネチャーワイン。複数畑のピノ・ノワールをブレンドし、何度もブラインドテイスティングを繰り返しながら完成させる。

ラベルデザインにも日本文化への敬意が込められている。色彩は日本の紅葉からインスピレーションを受けており、ザンダー氏自身、「一番好きな季節は紅葉狩り」と笑顔を見せた。

日本料理との調和を追求しながら、カリフォルニアの冷涼なテロワールを映し出す「ザンダー・ソーレン・ワインズ」。その味わいには、日本への深い愛情が確かに息づいていた。

問い合わせ先 ザンダー・ソーレン・ワインズ