「食とともにあり続ける」を理念に、和食に合うワインを追求する京都「丹波ワイン」。京都初のワイナリーとして、豊かな里の恵みで知られる京丹波に根を下ろし、京都の食文化を支えるワイン造りを続けている。

京丹波の風土がはぐくむワイン造り

皮の薄いピノ・ノワールとピノ・ブラン、さらに遅摘みするセミヨンにはレインカットを設置。降雨による病害リスクを抑えながら、高品質なブドウ栽培に取り組む

京都の食文化を支える恵みの里、京丹波。その地にワイナリーが創設されたことは、今振り返れば理にかなった選択だったと言える。

京丹波といえば、大豆、栗、松茸といった丹波ブランドをはじめ、京野菜、米、畜産、酪農、さらにはジビエまで、食材が多彩な産地だ。

京丹波を含む丹波高原は、内陸性気候と日本海側気候の特徴を併せ持つ。昼夜の寒暖差は15℃に及ぶこともあり、真夏の日中に汗を流して作業した後でも、夜はエアコンを必要としないほど涼しい日も少なくない。

こうした環境は農作物の栽培に適しており、ワイン用ブドウ栽培へ取り組むことも自然な流れだった。

1979年、日本が高度経済成長期を経て安定成長期へ移行し、多くの人々が海外を訪れるようになった時代。海外のワインを日本の食卓に合わせるのではなく、日本の食文化に根差したワインを造りたい――そんな思いから丹波ワインは産声を上げた。

当初はデラウェアやマスカット・ベーリーAを用いて醸造を行っていたが、醸造担当者のドイツ・ガイゼンハイム留学を契機に、自社農園でヴィティス・ヴィニフェラ種の栽培にも挑戦。京丹波の土地に適した品種を探るため、これまで約50品種を試験栽培してきた。

自然に貴腐菌が付着したセミヨン。貴腐菌を他の房に移そうとしても定着することは少なく、その発生は自然条件に大きく左右されるという

試行錯誤の末、現在の主力品種は、黒ブドウではピノ・ノワール、タナ、サンジョヴェーゼ、白ブドウではピノ・ブラン、ソーヴィニヨン・ブランとなっている。

ピノ・ノワールには樹齢37年を超える古木もあり、留学先との縁からガイゼンハイム系統のクローンを採用。一方、比較的若い区画にはブルゴーニュのディジョンクローンが植えられている。

フランス南西部原産のタナ、イタリア・トスカーナ州を代表するサンジョヴェーゼはいずれも豊かなタンニンを持つ品種として知られる。しかし京丹波で育つそれらから生まれるワインは、重厚さよりも美しい酸と穏やかな色調が際立ち、和食との相性の良さを感じさせる。

北海道へ広がる新たな挑戦

丹波ワインの歩みは京丹波にとどまらない。

2018年からは北海道有珠郡壮瞥町で自社農園の開拓を開始。洞爺湖の南に位置する約1.5ヘクタールの畑では、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、ゲヴュルツトラミネールなどを栽培している。

京丹波より約1カ月遅れて収穫されたブドウはワイナリーへ運ばれ、醸造される。

高品質な日本ワイン生産者同士の交流から始まったこのプロジェクトによって、新たなラインナップが加わり、丹波ワインのテロワールを楽しむ選択肢はさらに広がった。

フレンチオークの古樽を中心に使用し、穏やかな酸化熟成を促す。熟成期間は白ワインで約8〜9カ月、赤ワインで約1〜2年。品種ごとの個性を生かしながら、調和のとれた味わいへと導いていく

和食とともに未来へ

出汁や調味料づくりに多くの手間と時間が費やされるように、丹波ワインもまた、栽培から醸造、流通に至るまで造り手の情熱が注がれている。

和食との相性の良さを根幹に据えながら、日本の食文化に寄り添うワインを追求する丹波ワイン。その歩みはこれからも続いていく。

左から
『ピノ・ノワール 2022年』
ブルゴーニュ由来のディジョンクローンから造られる。伸びやかな酸と繊細な果実味が調和し、品種の個性を素直に表現した1本
『ピノ・ノワール・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2022年』
ドイツ・ガイゼンハイム由来の古木から生まれるワイン。美しい酸と緻密なタンニンが滑らかに広がり、余韻には果実味と旨味が心地よく残る

text by Chieko SUTO