カリフォルニアを世界的なワイン産地へと牽引したパイオニア
「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」。
節目の年を迎え、ワイナリーを刷新。
新たな時代に向けた継承者たちの思い、挑戦とは?
ワイナリー名にその名を冠するロバート・モンダヴィ氏。イタリアから移住してきた両親のもとワインビジネスの才能を開花させ、低品質のワインが横行していたカリフォルニアで「この地で最高のワインを造りたい」という情熱を胸に、1966年「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」を設立した。
先進的な技術を積極的に取り入れハイクオリティーなワインを次々と手掛け、さらに、フランス・ボルドーの5大シャトーの一つ「シャトー・ムートン・ロートシルト」を所有するフィリップ・バロン・ロートシルト氏と共同で『オーパス・ワン』を手掛けるなど、世界の銘醸ワインと肩を並べるワインを生み出した。
創設から60年
ワイナリーを大改装しさらなる高みへ
「カリフォルニア・ワインの父」と称されるロバート氏の功績により、カリフォルニア、中でもナパ・ヴァレーは今や素晴らしいワインを生み出す世界的な銘醸地に。今年はロバート氏がワイナリーを起こしてから60年。歴史の継承者は時代の風を読み、さらなる高みを目指してワイン造りに磨きをかける。ディレクター・オブ・ワインメイキングのカーティス・オガサワラ氏に話を聞いた。
カーティス・オガサワラ氏
ディレクター・オブ・ワインメイキング
カリフォルニア大学デイヴィス校でブドウ栽培・醸造学の学士号を取得後「ドメーヌ・シャンドン」「ニュートン・ヴィンヤード」などを経て「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」へ。2023年から現職 (photograph by Yuki MOCHIZUKI)
「最も大きなトピックは、ワイナリーのイノベーションです。3年の月日をかけ、醸造施設からゲストのビジットエリアまで大規模改修し、今年4月にリニューアルオープンしました」
オークヴィルにあるワイナリーはナパ・ヴァレーのランドマークとも言える存在で、目の前にはロバート氏が惚れ込んだ100年以上の歴史を持つ銘醸畑「ト・カロン・ヴィンヤード」が広がる。新たな醸造施設、その名も「ト・カロン・セラー」は、光学式の選果機器、重力を利用したグラヴィティーフローなど最先端の技術を導入し、畑や区画ごとに小ロットで醸造できるように。
銘醸畑「ト・カロン」。ワイナリーの向こうに見えるのはヴァカ山脈。「ト・カロンは特別な畑です。ここでブドウを、そしてワインを造れることはとても幸せなことです」とカーティス氏
ワイナリーの象徴、塔とアーチも修復され生まれ変わった ©AdamRouse
テイスティングやワインと料理を楽しめるシェフズガーデンなども新設。美しい風景、吹き抜ける風を感じながら、豊かなワインカルチャーを体験できる ©AdamRouse
ワインは、ナパ・ヴァレーの複数のAVAをブレンドし、ナパ全体を表現する「ナパ・ヴァレー」シリーズ、オークヴィルやスタッグス・リープ、カーネロスなどにある銘醸畑から生まれる「エステート」シリーズ、最高の銘醸畑「ト・カロン・ヴィンヤード」の個性を映し出すトップキュヴェ「リザーブ」シリーズと、三つの柱で構成される。
2023年ヴィンテージから新しい施設で醸造されており、カーティス氏は「それぞれの畑の個性を引き出し、ワインに『その土地の味』を細やかに表現できる。より新鮮で凝縮感があり、エネルギーが感じられるワインが生まれると確信しています」と力を込める。
“世界一の銘醸畑”
食と楽しむ文化も広げていきたい
伝説の畑「ト・カロン・ヴィンヤード」を、カーティス氏は「世界で最も素晴らしい畑だと思っています」と語り、こう続ける。
「マヤカマス山の麓に広がる畑は、風景として美しいのはもちろん、エネルギーを感じるのです。ワインを飲んだ人たちにその感覚、感動を味わってもらいたい」
情熱をかけた『ト・カロン・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨン・リザーブ 2019年』がグラスに注がれると、ブラックベリーやカシスなど果実の芳醇な香りが立ち上った。凝縮感のあるリッチな味わいときれいな酸のバランスが秀逸。何より、カーティス氏が言うようにみずみずしいエネルギーを感じる。
「レジェンド」として知られるロバート・モンダヴィ・ワイナリーだが、世界的に見られる若い世代のアルコール離れなどもあり、「私たちのワイナリー、そしてワインを広く知ってもらうことも重要な課題」とカーティス氏。
素晴らしいワインを生み続けることはもちろん、キーワードになるのが「カルチャー」だ。かつてロバート氏は「ワイン、食、芸術は豊かな生活にかせない」とし、食事と共にワインを楽しむことを豊かな文化として発信した。今回、ワイナリーではテイスティングや食事ができるエリアも魅力的に刷新。「新しいワイナリーには、変わらぬ哲学と文化、そしてワイン造りの進化が詰まっています」とカーティス氏。
最後に笑顔でこう語った。
「私たちのワインを生活に取り入れることで、美しい畑、ワイナリー、そして私たちの思いをグラスの中に感じてもらえたら幸せです」
(photograph by Yuki MOCHIZUKI)
「ナパ・ヴァレー」シリーズ
『ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン2022年』(写真右)
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン81%、メルロ8%、プティ・ヴェルド7%、カベルネ・フラン3%、マルベック1%
「エステート」シリーズ
『オークヴィル カベルネ・ソーヴィニヨン 2021年』(写真中央)
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン83%、カベルネ・フラン11%、プティ・ヴェルド2.5%、メルロ2%、マルベック1.5%
「リザーブ」シリーズ
『ト・カロン・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨン・リザーブ 2019年』(写真左)
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン97.5%、プティ・ヴェルド2.5%%
「カベルネ・ソーヴィニヨンはナパ・ヴァレーの、そして、私たちならではの表現をするためにとても大切なブドウです」とカーティス氏。広域から、ナパ・ヴァレーのグラン・クリュ(特級畑)と評される「ト・カロン・ヴィンヤード」まで“その畑の個性”をボトルの中に表現する。
問い合わせ先:メルシャン㈱ 0120 - 676 - 757
text by Asako NAKATSUMI