フォトグラファー富山義則氏が国内外を巡り歩いて体験したことを写真とともに紹介していきます。ビールの泡のように消え去る前に一瞬の輝きを放つ、出会った旅の記憶をたどっていきます。

第二回
西表島

「秘境に隠れたコーラルブルー」

 西表島は島全体の80%が西表石垣国立公園の区域に含まれ、島の面積約289平方キロメートルの90%が亜熱帯性の自然林,いわゆるジャングルです。この島を初めて訪れたのは1980年代でした。イリオモテヤマネコに出会えると良いなという軽い気持ちで島に来てみたら想像以上の秘境でびっくりしてしまいました。でも本土では味わえないジャングルウォーキングや自然の浜(イチャンダビーチ)にワクワクしたものです。ある意味探検隊のような気分になりました。何度訪れても常にワクワク感がある島なのです。

 その中でも印象的な秘境のビーチが二箇所、それとロマンティックなビーチもあります。秘境ビーチの一つはイダの浜です。この浜は八重山諸島にある某大手ホテルの秘境ビーチのアクティビティツアーとして人気があるそうです。この浜は白浜港から定期渡船に乗り船浮港へ、そして歩いて森の中の峠を越えると静かな浜辺がパッと現れるのでとても印象的なのでした。筆者は静かなビーチで綺麗な海を眺めて持参したビールを飲むだけで満足なのですが、シマンチュによると海中は綺麗な熱帯魚が見られるためスキューバダイビングを楽しむ人も多いそうです。

西表島のイチャンダビーチ(自然の浜)は八重山諸島でも独特の雰囲気がある。

 船浮港ですれ違った観光客は森の峠を越えて浜へ遊びにきていた。

 船浮の港の風景。定期船が入ると楽しそうな話が聞こえてくる。

 もう一つがウダラ浜。この浜はさらに秘境感が強くなります。白浜港でウダラ浜に行く船を見つけねばなりません。定期船はないのです。以前は西表島のターザンと言われた砂川啓勇オジィが自給自足で住んでいました。筆者も三日ほど一緒に暮らしましたが、珊瑚の海の青さと自然の豊かさにある意味理想的な生活かもしれないと感じたほどです。持って行った泡盛を川の水で割ってオジィと飲んだのが良い思い出になっています。

仕立船でウダラ浜に向かうのだが、網取湾に入ると船の周囲は素晴らしいコーラルブルーに包まれた。

湾の奥に見えてきたウダラ浜の奥は手付かずのジャングル。

湾の最深部の浜に西表島のターザンはジャングルの中に掘立小屋を作り住んでいた。

 さて西表島が素晴らしいのは海だけではありません。ジャングルの中にある滝も魅力的なのです。島にはいくつもの滝がありますが、カヌーで川を渡りたどり着けるピナイサーラの滝がおすすめです。ネイチャーガイドツアーに申し込むと連れて行ってくれます。カヌーでヒルギ林の中を進んでいく過程は気分が上がりますよ。

滝壺で遊泳する観光客も多いそうだ。ここなら森林浴の効果も期待できる。

亜熱帯の森の中でカヌーを降りると絵に描いたような風景が広がっていた。

カヌー乗り場から見たピナイサーラの滝の遠景。ヒルギ(マングローブ)に囲まれた川の中をゆっくりと進んでいく。

 秘境ではないのですが、カップルで行くのに最適なビーチもあります。それがトドゥマリの浜(月ケ浜)。モクマオウの森を抜けると広い砂浜がずっと広がっています。ここで見る夕陽は格別です。多くの人たちが砂浜に座り込んで夕陽を眺めていたのが印象的でした。

夕陽の海を眺めながら愛犬と散歩する光景は平和そのものだった。

夕陽の中を進むボートはどこの港に向かっているのだろうか

モクマオウの森を抜けて行くと現れる弓形の砂浜は絶好ののんびりスポット。ときどき釣竿を担いだ釣人も。

著者プロフィール

富山義則(とみやま よしのり)

写真家。自然や歴史をテーマに数多くの作品を手掛ける傍ら、雑誌や商品撮影など、その活躍の場は広い。沖縄はライフワークとして、40年にわたり撮り続け、「琉球古道」(河出書房新社)は、沖縄の歴史遺産を、「沖縄ビーチ大全505」(マガジンハウス)は沖縄のビーチの空気感を見事に切り取った作品として評価が高い。この2冊の写真集は作品とともに、現代写真の研究機関として世界的に知られるアリゾナ大学CCP ( Center for Creative Photography)のアーカイブ候補に挙げられているとなっている。