撮影:齋藤明 取材:編集部
随所にヤッホーブルーイングのノウハウが投入された醸造設備
通用口の扉を開き中に入ると、その広さに驚いた。まだ調度品の類がなく、がらんとしていることもあろうが、200人を収容するレストランとは、これほどまでの広さなのか──。そして、その広大な空間の奥で、ブルワーの作業が始まるのを待つタンクたちが、工事用の照明を受けて鈍く光っていた。ここは、レストランではあるけれど“ビールを造る現場が主役”であるという思いを強くした。
「こうした商業施設の中に醸造所を造るのは、ぼくたちとしても初めてのことなので、いろいろと工夫も必要でした」とがみたさん。
5バレル(約586リットル)の仕込み釜(ブルーハウス)。ここでの注目は、加熱時に発生する蒸気(熱)を回収するベーパーコンデンサー式の熱回収器と煮沸後の麦汁を狙ったホップ投入温度に素早く下げるためのワールプールクーラーだ。前者は蒸気に含まれる麦芽の香りがレストラン内に漏らさないことと環境負荷の低減のため、後者はホップのアロマをよりクリアに抽出するためだ
環境負荷も考慮した熱回収装置
そのひとつが、ベーパーコンデンサー式の熱回収装置の設置だ。
ビールの仕込み時、麦汁を煮沸すると強い香りを伴う蒸気が発生する。ブルワリー見学をしたことのある人であれば、そこはかと漂うあの香りこそ「ブルワリーにやって来た!」と実感しテンションが上がるのだが「よなよな東京ブルワリー」があるのは品川インターシティのB1階。レストランの中であるため、香りがこもると食事の妨げになりかねない。
「煮沸時に発生した蒸気をこの装置で回収することで、客席側に香りが出ないよう配慮しました。熱自体は仕込みや洗浄に使うお湯として再利用します」(がみたさん)
レストランに香りを出さないためのこの設備が、同時にエネルギー効率の向上にもつながっているわけだ。
香り豊かなビールのために導入したワールプールクーラー
ホップを投入する直前の麦汁の温度を調整するための「ワールプールクーラー」も導入された。ホップはブルワーの求める香りや苦味を最適に抽出するために、いろいろなタイミングで投入されるが、大別すると「煮沸」、「ワールプール」、「発酵後期」(いわゆるドライホッピング)に大別される。煮沸時は主に苦味成分の抽出、ワールプールと発酵後期(熟成初期の場合もある)、は主に香り成分の抽出がその目的となる。煮沸後の工程となるワールプール(渦流沈殿)では、まだ麦汁が熱いためにホップの香り成分が揮発しやすい。そのため、ホップ投入はある程度温度が下がった状態で行うのだが、狙った温度に素早く下げたほうが、雑味や雑香の発生を抑えることができ、よりクリアな香りを引き出すことができるのだ。
「今回のブルーイングシステムは、専門のエンジニアリング会社と協力しながら、イチから組み上げました。機能面だけでなく『お客様がどこを見るのか』、『どの瞬間にこの設備が目に入るのか』といった視点も、設計段階から熟慮しました」(クラッチさん)
その言葉通り、客席とガラスで仕切られた醸造部の中央に整然と並んだ10本のユニタンク(発酵と熟成を兼ねるタンク)は、開口部がすべて内側に向けて設置されている。これは、作業性を確保すると同時に、作業時に洗浄時の水やホップ粕などが客席に飛び出さないように、との配慮でもある。
オリジナリティ溢れるビールの競演に期待
ここ「よなよな東京ブルワリー」で醸造されるビールは、基本オリジナルビールとなる。よなよなエールをはじめ、レギュラービールは佐久醸造所で造ったものが運ばれ提供される。その部分は、他の「YONA YONA BEER WORKS」と同じだ。そこで気になるのが「オリジナル」の部分だ。
「もちろん、YONA YONA BEER WORKSで提供してるWorks Aleのような尖がったビールも造ると思いますが、品川自体が巨大なオフィス街ですので、仕事帰りに立ち寄っていただき、サクっと飲んで帰ってもらえるようなビールも造っていきたいですね」とがみたさん。一人のヤッホーファンとしては、ラガーや惜しまれつつラインナップから外れてしまった「東京ブラック」の復活も望みたい。また、がみたさんとクラッチさんのガチンコ勝負による人気投票などのイベントも、大いに盛り上がるに違いない。
いずれにしろ「よなよなエールの超宴」などファンサービスの得意なヤッホーブルーイングがビールを提供するブルワリーレストランとなる「よなよな東京ブルワリー」は、ビールファンならずとも、アミューズメントスポットとして大いに注目されるに違いない。ビールのラインナップや料理のメニューなど、続報が入り次第お届けする。
倉田祐輔さん(クラッチ)(左)と田上峻さん(がみた)。ともに本誌ではお馴染みの、ヤッホーブルーイングの中核を担うブルワーだ。どんなオリジナルビールを飲ませてくれるのか、いまから楽しみだ
店内に入ると、まず目に飛び込む巨大なアイランドバー。200人のゲストのために、このカウンター内に約30タップが設置される
天井から逆さまに吊り下げられた、ビール樽のオブジェ。このほか、店内には楽しい仕掛けがいっぱい