サントリーとビール王国のコラボレーションによる東京クラフト〈へレス〉が完成、3月17日に発売となった。すでに3週間が経ち、読者諸兄諸姉の中にも飲んでいただいた方が少なくないと思う。ご一緒いただいた料理家の和田明日香さんがインスタグラムに投稿してくださったこともあり、編集部にもいろいろとコメントが寄せられている。四回目となる今回は、この「東京クラフト〈ヘレス〉」の特徴と、お勧めペアリングをご紹介したい。

日本の食卓のためのビールを改めて考える

「家庭での食事」とひと口に言っても、どんな料理を思い浮かべるかは人によって大きく異なる。というのも、日本人ほど多種多様な料理をつくる民族はいない──と言われているからだ。事実、読者諸兄諸姉のご自宅やご実家、お友達の家の食器を思い出してほしい。ご飯をよそう茶碗や、ハンバーグを食べるプレート(平皿)は、たいていの家庭にあるはずだ。場合によっては、ラーメンどんぶりもあるだろう。

 今回のヘレスの開発に際し、チームで想定した食事は和食であった。なぜか。その理由は次の2つである。

農林水産省が実施した「食生活・ライフスタイル調査~令和5年度」における、20代~70代の男女30人を対象とした夕食調査では、その7割が米食となっている。もちろん、チャーハンやカレー、パエリア、ビビンバなど、米食=和食とは言えないが、そこまで厳密に追う必要はないだろう。このことからも、ビールと和食のペアリングは、夜な夜な多くの日本の家庭で実践されていると考えられる。

日本に来る多くの外国人旅行者(インバウンド)も和食を目当てにしており、すでに和食は世界的にスタンダードな料理として捉えてよいのではないか。

 そして何よりも、洋食や中華に比べて相対的に素材の風味を大切にした淡い味付けで仕上げる和食は、ヘレスの上品なモルトの旨み、穏やかなホップの苦味や香りと組み合わせる料理としてぴったりだ。

 

「東京クラフト〈ヘレス〉」は飲む温度によって表情が大きく変わる

 さて、発売から2週間が経ち、すでに多くの方が飲まれたことと思うが、ここではビール王国編集部で最もおいしい飲み方とおすすめのペアリングを徹底検証したのでご紹介したい。

 まずお伝えしたいのは、冷やしすぎないこと。これは実は「東京クラフト〈ヘレス〉」に限った話ではない。ヘレスの上品なモルトの旨みを味わうには、冷やしすぎは厳禁だ。一般的な冷蔵庫(5度)から取り出し、室温22度に置いてあったパイントグラスに注ぐと、細かな計算式は割愛するが7~8度程度になる。この温度ではほろ苦さが目立ち、「全体的に締まっていてドリンカブルなビール」で終わってしまう。

 ビール王国編集部の意見をまとめると「東京クラフト〈ヘレス〉」のおいしいゾーンは10度前後。たかが2~3度と侮るなかれ。この温度になると、モルトの甘みや厚みがふわっと開き、それに伴いホップの苦みも穏やかになる。

 具体的には、冷蔵庫から取り出して10分程度置いてからグラスに注ぐと、おおむね飲み頃の温度になる。もちろん、冷蔵庫の設定温度や室温、グラスの厚みや大きさによって多少の違いは生じるが、基本形として「冷蔵庫から出して10分置き、グラスに注ぐ」と覚えておいていただきたい。とくにこの季節は、それほどキンキンに冷えたビールが飲みたいということもないだろうし、10度という温度でも十分冷たく感じられるはずだ。ぜひ「東京クラフト〈ヘレス〉」は、10度前後で楽しんでいただきたい。

 

和食の中でもまずはやさしい味付けの料理と合わせよう

 では、どんな和食のつまみと合わせるとよいか。結論から言えば、多くの人が和食と聞いてイメージする「やさしい味わい」「滋味深い味」「おふくろの味」といった味付けの料理を勧めたい。

 ビール王国編集部で試したのは、居酒屋おつまみの王道である「だし巻き玉子」「カレイの煮付け」、そして誰もがビールのおつまみベスト3に入れるであろう「焼鳥」だ。ただし焼鳥に関しては、「東京クラフト〈ヘレス〉」の開発リーダーである商品開発研究部 開発主幹の浅野翔さんから、以下のコメントをいただいた。

 

だし巻き玉子
優しい玉子の香りと旨みに、ほどよくモルトの甘み、そして穏やかなホップの香りがアクセントとなってハーモニーを奏でる。「だし巻きにはポン酒だろう」とおっしゃる方にこそ、ぜひともお試しいただきたいペアリングだ。

カレイの煮付け
このペアリングも、これまでビールのペアリングとして挙げられることはまずなかったと思う。居酒屋で飲むビール(ピルスナー)では、その苦味が先述の玉子同様、淡泊なカレイの旨みをスポイルしてしまうからだ。こうした“ザ・和食”を召し上がる時こそ、「東京クラフト〈ヘレス〉」の出番である。

 

焼鳥
焼鳥でも、いわゆる串打ちをした鶏肉ではなくスライスした旨肉を、甘じょっぱい醤油だれで焼いた。本文にもあるように、コショウなどスパイシーな香りが強いと、ヘレスの“おいしい部分”が楽しめなくなる。そうした料理は、ピルスナーやペールエールに任せればいい。

 「焼鳥は塩コショウでスパイシーに仕上げたものだと、ヘレスの穏やかなモルトの甘さを感じにくくしてしまう印象でした。そのため、甘じょっぱいタレのほうが合うと思います」

  
 「東京クラフト〈ヘレス〉」はIPAのような強い苦味も、ペールエールのような華やかなホップの香りもない。しかし、代わりにいつまでも飲み続けたくなる、モルトの旨みと、ほのかながら確かに漂う爽やかなホップの香りがある。自己主張は強くないが、いつでも寄り添ってくれるビール。そんなクラフトビールの楽しみも、ぜひ体験していただきたい。