ヤッホーブルーイングは、自社のビジネスをビール製造ではなく「ビールを中心としたエンターテイメント事業」としている。だからこそ、この「ゆっくりビアグラス」が誕生したに違いない。
砂時計を模した独特のフォルムをまとい、よなよなエールの缶(350ml)がちょうど1本入る。注ぐ際、まず感心したのが上下をつなぐくびれ部分(砂時計のオリフィス、またはノズルに当たる部分)から、きれいな泡が立ち昇る。その様は、まるでシャンパングラスのよう。
ベルギーの『デュベル』(モルトガット醸造所)のグラスに前例はあるけれど、日本のブルワリーにおいて注がれるビールの立ち居振る舞いを愛でることを考慮したグラスは、おそらくない。
小誌では、ビールを飲むためのグラスを選ぶ際「透明なガラス製」であることを基本としている。それは、ビールの液色や、立ち昇る炭酸、泡の状態等々を‟じっくり眺めながら、愛でながら”ビールを楽しみたいからだ。ゆらゆらと、一筋の泡が立ち昇る様は、まさに愛でるにふさわしい美しさだ。
「爽快感なし」でもないし、「飲みづらい」も工夫次第で解消
さて、すでにSNS等では「爽快感なし」や「飲みづらい」とのキーワードとともに紹介されているが、実際に数日間ヤッホーブルーイングから拝借し使ってみたところ、それほど酷評されるものではないと感じた。
上部に入ったビール(170~180ml)は、普通のビールグラスのように、ゴクゴクと飲める。つまり、最初のひと口~ふた口は気持ちよく、なんのストレスもなく飲めるのだ。ゆえに、「爽快感なし」は当てはまらない。
飲みづらいのは下の部分だ。グラスを持ち、口につけたままノズルを通ってビールが出るのを待っていると、たぶん、ほとんどの人が全部を飲み干すことを諦めてしまうだろう。それに、ずっと持ち続けているとビールが温くなり、おいしく飲めない。
そこでお勧めしたいのが、上部に注がれたビールを飲んだら、グラスを倒して、上部にビールが貯まるのを待ち、それをゴクリとやる飲み方だ。時間にしておよそ20秒で、20ml前後のビールが貯まる。ワインのソムリエが品質を確認するときに口に含む量が15ml程度と言われているので、ゆっくり、そして味わいながら飲むひと口として20ml前後はむしろ最適である。20秒間グラスを上に持ち上げ、首を曲げビールが出てくるの待っているのは苦痛だが、おしゃべりをしたり、おつまみを食べて過ごせばあっという間に過ぎる。
ゆっくり飲むということは、必然的に味わいながら、愛でながら飲むことになる。そうした観点からも、この「ゆっくりビアグラス」は、新しいビールの楽しみ方を気づかせてくれるきっかけになるに違いない。
「洗いにくい」とSNSでは衛生面を心配する声もちらほらあるが、そこはライオンの「マジカ」で解決だ。なんでも、ライオンには洗いにくい形状の食器の汚れをどう落とすかを研究するチームがあり、そのチームからマジカを使えば問題なし、とのお墨付きをもらっているそうだ。
https://x.com/Magica_Nanoarai/status/1814161518105383211
現段階では、よなよなの里から期間限定(8月16日まで)/個数限定限定(10個)の販売となる。幸運にも手にした方は、きっとこれまでとは違ったビールの楽しみ方を発見するはずだ。