今夏、ヤッホーブルーイングが立ち上げた新ブランド「BREWPRINT SERIES」(ブループリントシリーズ。以下ブループリント)。醸造を表す「BREW(ブルー)」と、青写真や構想図の意味を持つ「BLUEPRINT(ブループリント)」という2つの言葉をヤッホーブルーイングが組み合わせた言葉で、ブルワーの探究心と知見に焦点を当て、醸造技術の最前線と、そこに至るまでの試行錯誤をビールとともに届けるシリーズ、紹介されている。第1弾となる「ブループリント#1 アロマの追跡者」は、ホップの香りを追求したWest Coast IPA。製品そのものだけでなく、ビールづくりのプロセスまで楽しんでもらおうという試みである。
同ブルワリーは1997年の創業以来、多様な味わいのビールを高い品質で届けるため、醸造技術の研究を続けてきた。2020年には、佐久醸造所に加え、よりチャレンジングなビール造りのためにより小回りの利く600Lの仕込み釜(佐久醸造所は、日本のクラフトブルワリーの中で最大級の10kL)を設置した御代田醸造所を開設している。そして7月には、「ヤッホーブルーイング大阪醸造所 よなよなビアライズ」を開設した(※)。
※2023年には北海道のエスコンフィールドHOKKAIDOに「そらとしば by よなよなエール」を、2026年3月には品川駅直結の「よなよな東京ブルワリー」が開設されている
ブループリントの処女作となる「#1 アロマの追跡者」は、このよなよなビアライズで醸造された。担当ブルワーは、本誌でもおなじみの花崎稜さん(ニックネーム:ちゃんりょ)。ちゃんりょさんは、同ブルワリーの公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」で提供される“尖がったビール”の『ワークスエール』を選ぶジャッジを務めていたこともある。
「#1 アロマの追跡者」でちゃんりょさんが掲げたテーマは「ホップの香りを最大限に引き出す醸造技術を高めること」であった。そうか、銘柄名は、ちゃんりょさん自身を語っていた、というわけか。
では、具体的にはどのようなアプローチがなされたのか。ブループリントでは、そうしたブルワーの開発意図や技術的にはどのような挑戦あったのか──、それらが専用サイトにて詳しく紹介される。
「#1 アロマの追跡者」では、テキストによる紹介に加え、よなよなビアライズの広報を担当する鳳﨑創(ほうざきそう)さん(ニックネーム:ザック)が根掘り葉掘り、ちゃんりょさんにインタビューする動画も アップされている。
画面の中のちゃんりょさんからは「液体ホップは欲しい香りをピンポイントで狙える」とか「組み合わせるモルトによって、ホップの香りの立ち方が全く違う」といったふうに、アロマの追跡者は、興味深い話を次々と語っていく。
この動画を視聴していて、ぼくは思った。
よく、料理屋さんで「この食材でこの値段は安い」、反対に「高い」と使用材料で料理を値踏みする人を見かけるが“料理の価値”とは、本当にそこにあるのだろうか。個人的にはそうではなく、料理人の創意や工夫、そして技術にこそ価値があり、それに対価を支払うべきではないか──、と考えている。
以前取材をさせていただいた日本料理界の巨匠は「『〇〇産の△△△』と高級食材を使用していることを誇示し、それで値段を吊り上げようとしているのは料理人の風上にも置けない。料理人は自分の目と舌と鼻で素材を選び、自分の技術でひと皿をこしらえなきゃ」と断じていた。
ヤッホーブルーイングの「ブループリント」誕生の報せを受け、ぼくはこの話を思い出した。ブルワーが自分の創意と技術を、そして情熱をもって挑むシリーズ。まさに、ヤッホーのブルワー達の矜持が缶の中に詰め込まれている。最後の一滴までそれを堪能しようではないか。
シリーズ1作目となる「#1 アロマの追跡者」を担当した花崎稜さん(ニックネーム:ちゃんりょ)

希少ホップ「Krush(クラッシュ)」と、濃縮ホップオイル「Hyper Boost(ハイパーブースト)」の組み合わせた「#1 アロマの追跡者」。ホップの個性を活かす原料選びに加え、濃縮されたホップ由来の成分を活用することで、香りの強さと明瞭さを追求している。モルトの選定や酵母、発酵の設計も含め、ホップの香りを主役に据えるための工夫が重ねられた。アルコール度数7%
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