WSET Diplomaの資格を持つ別府岳則氏をナビゲーターに、銀座「ロオジエ」シェフソムリエの井黒卓氏をテイスターに迎えた、西ギリシャ・ワインのセミナーが開かれた。今回のセミナーでは、西ギリシャの中でもペロポネソス半島北西部に位置する「アハイア」と「イリア」の二つの地域に限定し、そのPDO(原産地保護呼称地域)とPGI(地理的表示保護)を追いながら10種類のワインをブラインド・テイスティングした。

画像: 別府岳則氏(左)と井黒卓氏

別府岳則氏(左)と井黒卓氏

地中海に張り出しているギリシャは、地中海気候の産地の中でも海の影響を特に強く受け、気温の日較差、年較差が激しくない穏やかな気候が特徴。また、国土のおよそ80パーセントが山岳地帯である上、3000近くの島を持つ特殊な産地だ。1300程のワイナリーが計250万ヘクトリットルを生産し、その割合は白が約60パーセント、赤が約40パーセント。現在わかっているだけでも300程の土着品種がある。

ギリシャを訪れたことのある井黒氏は「飛行機に乗って上空からギリシャを見下ろすと、海の近くでは平地も見られ、全体的に乾燥していました。中でも標高の高い産地はクオリティーワインの産地として高い評価を受けています」と語った。西ギリシャの生産量はギリシャ全体の8パーセントを占める。山がちな地形ゆえ、多様なミクロクリマ(微気候)を生み出す。

アハイア

西にイオニア海、北にパトライコス湾とコリントス湾を臨むアハイア地域。山がちで、北向きのため気候は冷涼、四つのPDOと二つのPGIがある。なお、ギリシャにおけるPDOは「質の高さに由来するというよりは、伝統産地であるかどうかが基準」となっており、「テロワールの多様性はPGIの方がわかりやすい」と別府氏。アハイアは標高差の大きい地域で、最大標高800メートルになるエリアもある。

PDO
PDOマヴロダフニ・オブ・パトラ、PDOマスカット・オブ・パトラ、PDOマスカット・オブ・リオ・パトラ、PDOパトラ

IGP
PGIアハイア、PGIスロープ・オブ・エギアリア

PDOにすべて「パトラ」が含まれることからもわかるように、パトラはアハイアにおいて最大かつ中心的なワイン産地である。

イリア

標高は0メートルから最高400メートルと、アハイアに比べ山が少ない。西イオニア海からの風を直接受ける温暖な気候で、地中海性気候だが夏にも雨が降る。PODはなく、二つのPGIがある。

PGI
PGIイリア、PGIアハイア

テイスティング

画像: 左からPGIスロープ・オブ・エギアリア(マラグジア100%)、PGIアハイア(シデリティス100%)、PDOパトラ(ロディティス100%)、PGIアハイア(ロディティス100%)、PGIイリア(アシルティコ100%)

左からPGIスロープ・オブ・エギアリア(マラグジア100%)、PGIアハイア(シデリティス100%)、PDOパトラ(ロディティス100%)、PGIアハイア(ロディティス100%)、PGIイリア(アシルティコ100%)

画像: 左からPGIアハイア(マヴロ・カラヴリティーノ100%)、PGIアハイア(マヴロダフニ100%)、PGIイリア(レフォスコ85%、マヴロダフニ15%)、PDOマヴロダフニ・オブ・パトラ(マヴロダフニ70%、ブラックコリンス30%)、PDOマスカット・オブ・パトラ(マスカット100%)

左からPGIアハイア(マヴロ・カラヴリティーノ100%)、PGIアハイア(マヴロダフニ100%)、PGIイリア(レフォスコ85%、マヴロダフニ15%)、PDOマヴロダフニ・オブ・パトラ(マヴロダフニ70%、ブラックコリンス30%)、PDOマスカット・オブ・パトラ(マスカット100%)

3番目と4番目にブラインド・テイスティングしたのは、どちらもロディティス100パーセントのワイン。ピンク色の果皮を持つロディティスは、ギリシャで2番目に栽培されている品種だ。アハイアでは総栽培面積の60パーセント、イリアでは約35パーセントを占める。
井黒氏によると「控えめな品種」で、収量の多い地域ではニュートラルになりやすい。収量の少ない高地(1050メートルまで)や古木から採れたブドウから造られるワインは、ミネラルや柑橘類の果実味、高い酸が豊かに感じられるエネルギッシュなキャラクターとなる。

3番目のワイン(PDOパトラ)
土壌:粘土石灰質 標高:740メートル 樹齢:38年
ピンクグレープフルーツ、ルバーブの香り。高い標高から来る生き生きとした酸があり、アフターにはグリ系ブドウらしい苦味が感じられる。PDOパトラでは、ロディティスのみ使用が認められている。

4番目のワイン(PGIアハイア)
土壌:ローム 標高:100メートル 樹齢:12~25年
「塩味を伴う酸が感じられることから、海の近くで栽培されたと推測できる」と井黒氏。酸は厳しくなく、3番目に比べよりリッチな味わい。

平地がある一方、めまぐるしく景観の変わる山岳地帯も持つ西ギリシャでは、同じ品種からもそれぞれに個性の感じられるワインが造られているとあらためて実感した。
また、どのワインも比較的穏やかな味わいで、非常にフードフレンドリーな印象を受けた。
「海外帰りの生産者が多く、今後さらに発展していく産地」と井黒氏が語るように、これからの西ギリシャの動きに注目していきたい。

This article is a sponsored article by
''.