「安旨」で親しまれてきたチリワインのイメージを覆す試飲会「92+ チリワイン グランド・テイスティング」が、7月に「ザ・ストリングス表参道」で開催された。「ワインズ・オブ・チリ」主催の92+ チリワイン グランド・テイスティングは、国際的なワイン品評会や著名なワイン評論家から92点以上を獲得した、プレミアム・チリワインを厳選した試飲会。チリ国内の主要産地を代表する13の生産者から、40種類以上のワインが集まった。

試飲会の前に行われたプレスツアーでは、ワインズ・オブ・チリのアジア・ディレクター、フェルナンド・ディアズ氏が各ワイナリーのブースを案内した。
「世界で第4位、いわゆる新世界では第1位のワイン輸出量を誇るチリ。今回は、国際的なワイン品評会などで92点以上を獲得したワインが集まっています。ぜひ、ハイレベルなチリワインを体験してください」と語った。

画像: 「ワインズ・オブ・チリ」のアジア・ディレクター、フェルナンド・ディアズ氏。

「ワインズ・オブ・チリ」のアジア・ディレクター、フェルナンド・ディアズ氏。

出展したのは以下の13ワイナリーだ。

・Viña Aromo ヴィーニャ・アロモ
・Baron Philippe de Rothschild Maipo Chile バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・マイポ・チリ
・Viña Concha y Toro コンチャ・イ・トロ
・Cono Sur Vineyards and Winery コノスル
・Emiliana Organic Vineyards エミリアーナ・ヴィンヤーズ
・Haras de Pirque アラス・デ・ピルケ
・Invina インヴィーナ
・Los Vascos ロス ヴァスコス
・Maquis マキ
・Viña Marty ヴィニャ・マーティ
・Montes モンテス
・Viña Valdivieso ヴィーニャ・バルディビエソ
・Viu Manent ヴュー マネント

いくつかの生産者をピックアップし、特に印象深かったワインを紹介する。

Cono Sur Vineyards and Winery コノスル

「新世界のスピリットを伝える、プレミアムで革新的なワインを造る」というビジョンを掲げ、1993年に設立されたワイナリー。『セレンシオ カベルネ・ソーヴィニヨン 2018年』は凝縮感のある滑らかなタンニンが心地よく、ブラックベリーの香り、ハーブの清涼感が漂う。ワイン名の「セレンシオ」は「サイレンス」のことで、「素晴らしいワインは人を静かにさせ、ワインそのものが雄弁に語る」という意味が込められている。

『セレンシオ カベルネ・ソーヴィニヨン 2018年』品種:カベルネ・ソーヴィニヨン100% 産地:マイポ・ヴァレー

Emiliana Organic Vinyards エミリアーナ・ヴィンヤーズ

1986年設立の、チリにおけるヴァラエタルワイン(品種名を冠したワイン)の先駆者。90年代からビオディナミ(*)、有機栽培に取り組み、環境に配慮したワイン造りを行う。畑仕事の後に体の不調を感じたことから有機栽培を始め、試験的に植えた13種類の品種をブレンドして出来たのが『コヤム』だ。品評会で高い評価を得たことから、以降、すべての畑を有機栽培に転換した。現在は10種類ほどの品種をヴィンテージごとにブレンドしている。2020年はイチゴやスミレが香り、軽やかな印象がありながらも骨格はしっかりとしている。

*ルドルフ・シュタイナーが提唱した有機農法。天体の運行に合わせて畑作業を行う。樹木を病虫害から守るほか、果実の成熟を促す効果があるといわれる

『コヤム 2020年』品種:シラー38%、カルメネール37%、カベルネ・ソーヴィニヨン8%、カリニャン5%、ガルナッチャ4%、ムールヴェードル4%、プティ・ヴェルド2%、マルベック1%、テンプラニーリョ1% 産地:コルチャグア・ヴァレー

Montes モンテス

1988年、「チリ発、チリ人によるチリワインカンパ二―」として醸造家のアウレリオ・モンテス氏を中心に、4人のワイン・ビジネスをはじめとしたさまざまな分野のスペシャリストたちが立ち上げた。現在、100カ国以上で親しまれている。『モンテス・アルファ・シャルドネ 2020年』は「サパヤール」のブドウから造られるワインで、トロピカルフルーツのような果実味とミネラルが豊富に感じられる。 サパヤールは海に近く、アンデス山脈に挟まれた土地で、モンテスがチリで初めて進出したエリアだ。

『モンテス・アルファ・シャルドネ 2020年』品種:シャルドネ100% 産地:アコンカグア・ヴァレー

また、今回の試飲会では日本未輸入のワイナリー「インヴィーナ」と「マキ」が参加した。

Invina インヴィーナ(日本未輸入)

家族経営のワイナリーで、マウレ・ヴァレーの多様性を表現することを目指している。マウレ・ヴァレーの東から西にかけて、五つの畑を所有する。広大なマウレ・ヴァレーは、畑ごとに土壌、気候が異なり、創設者のアレックス・フーベル氏は「畑ごとのカラーを示したい」と語ってくれた。アイコンワインは『Ojos Verdes』(写真一番右)で、カベルネ・フランを主体に、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネールがブレンドされている。柔らかなワインで、ハーブやスパイスのニュアンスも感じられる。

左から『Por Fin 2020年』(カベルネ・ソーヴィニヨンほか)、『Decabeza 2020年』(テンプラニーリョほか)、『Cuartel 4A』(カルメネール100%)、『Ojos Verdes 2019年』(カベルネ・フランほか)

Maquis マキ(日本未輸入)

18世紀にイエズス会から始まったワイナリーで、コルチャグア・ヴァレーで300年ほどの歴史を持つ。カベルネ・フランとカルメネールを中心にワインを造っていて、ボルドーをはじめフランス市場を中心に流通している。ワインは全体的にフレッシュな印象で、『Maquis Lien 2019年』(写真一番左)は生き生きとした酸が特徴的だった。

左から『Maquis Lien 2019年』(カベルネ・フラン46%、カベルネ・ソーヴィニヨン36%、その他18%)、『Maquis Gran Reserva Cabernet Sauvignon 2020年』(カベルネ・ソーヴィニヨンほか)、『Maquis Gran Reserva Carmenere 2020年』(カルメネールほか)、『Maquis Gran Reserva Cabernet Franc 2020年』(カベルネ・フランほか)

今回の試飲会では、丁寧な造りから、土地や品種の個性が感じられるエレガントなものに多く出合えた。ぜひ、「安旨」とは異なった魅力を持つプレミアム・チリワインを味わってほしい。

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