世界各国から厳選したメディアを「クリュッグ」のメゾンに招き、新しいキュヴェのお披露目を行うスペシャルイベント「BEHIND THE SCENES(ビハインド・ ザ・シーンズ)」。
今年2024年はキュヴェの発表に加えて、新しい醸造施設「ヨーゼフ」初公開というビッグニュースがあった。
モンターニュ・ド・ランス地区のアンボネー村といえば、グラン・クリュ(特級畑)に格付けされる村。シャンパーニュ・メゾン「クリュッグ」のシャンパーニュには、1843年の創業以来ずっとこのグラン・クリュのブドウが使われている。そんな特別な地に、総面積9500平方メートルの醸造施設が完成した。
「この環境は未来への贈り物です」と最高醸造責任者のジュリー・カヴィルさんは言う。
「ヨーゼフ2.0」と、創業者のファーストネームを冠し2017年に開始したこのプロジェクトでは、「何をしたくないか」という問いと真摯に向き合い、作業のルーティーンの見直しに時間をかけたという。例えば、樽の扱い。樽移動は重労働で、長年の疲労が蓄積して腰を痛めてしまうスタッフは少なくなかった。それなら、床面積を当初の予定より大幅に増やさなくてはならないとしても、人が樽を担わなくてすむ新しい構造を考える。また、危険を伴う高所での仕事を減らすためにタンクの構造を変えるなど完璧な作業フロー、そして人間と環境の未来を見据えて最上の形を取ったのが、この新施設「ヨーゼフ」だ。
カヴィルさんは語る。「私がクリュッグに入社した時、レミ・クリュッグ(5代目当主)は私にこう言いました。『ほかと比べてはいけない。その代わり、クリュッグの過去を見なさい。そのうえで自分ができる最上を目指しなさい』。私はその言葉をずっと持ち続けています」
毎年、気候の変化に左右されることなく、最高のシャンパーニュを造るという志を抱いた創業者ヨーゼフ・クリュッグ。その実現に一切の妥協を許さないという哲学は、この施設の完成にも象徴的に表れている。そして何より、新たな『クリュッグ グランド・キュヴェ 172 エディション』の1本1本がメゾンの哲学の結晶だ。
2016年収穫のブドウをベースに、過去11年分のリザーヴワイン(貯蔵してある良年のワイン)42パーセントを含む146区画の恵みをアサンブラージュ(ブレンド)、約7年の歳月を経て世に出たこのシャンパーニュがまさに、メゾンが探究し続けるエクセレンスの最新形なのだ。
text by Harue SUZUKI, photographs by Léo Ginailhac
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