廃棄される食材を使った飲料の製造販売を行うシンガポールの飲料メーカー「CRUST」が、2020年12月末~2021年1月から日本国内で廃棄パンなどを使ったビールと炭酸飲料の発売を行う。
1年で344kgの廃棄パンから5,982Lのビールを製造した「CRUST」
近年世界的な問題とされている「フードロス(食品ロス)」とは、食べ残しや売れ残り、調理段階で使わない部分など、本来食べることができたはずの食品が廃棄されること。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の食品廃棄量は重量にして年間約13億トンで、これは世界全体で生産された食料のおよそ3分の1に当たる。
今や世界中で取り組む課題として各国で食品ロス削減を目標にしているが、廃棄されるパンや果物などを使い、フードロス削減を目的としたビールブランドが2019年シンガポールで創設された。
世界中の食品ロス年間13億トンのうち、廃棄されるパンの重量は年間90万トンと言われている。このパンに注目したのが元シンガポール海軍で、保険会社でファイナンシャルアドバイザーを務めていた同社CEOのTravin Singh。シンガポールのカフェやベーカリーから売れ残りのパンや、生産過程で発生したパン屑を回収してビールを製造する「CRUST」を2019年に創設した。
そして2019年9月のリリース後、わずか1年で344kgの廃棄パンから5982Lのビールの製造販売に成功。廃棄されるフルーツを使ったビールも手掛けるなど、独自のビール開発・研究を進めている。
この動きをアジア全体にも広めていくために、2020年に株式会社CRUST JAPANを創設。
今後は日本で本格的な市場展開を始める予定だ。
日本やアジアの廃棄食材で独自のビール開発を目指す
日本で発売されるのは、廃棄パンで製造した同社のフラッグシップとなるクラフトビール「CRUST」と、とある余剰食材で製造した炭酸飲料「CROP」をリリース予定(詳細は近日公開予定)。
同社は日本やアジア諸国の地元の食材を使って、地元の人に喜んでもらえるオリジナルビール開発を目指しており、社会問題に挑む日本財団主催の創業支援プログラム「ImpacTech Social Change Makers Program」に参加し、日本市場での展開準備を進めている。
日本国内でも、規格外農作物や廃棄パンを使ったビールを醸造するマイクロブルワリーが増えているが、現状ではスポット商品に留まる。同社による技術連携や安定した材料調達・物流システムが進めば、定番商品として廃棄食材を使うビールがラインナップされる日も近いのかもしれない。