新宿駅に食を中心としたエキナカ商業施設「EATo LUMINE」(以下、イイトルミネ)がオープンした。そのイイトルミネとコエドブルワリーのコラボレーションによってEATo LUMINE x COEDO 「OurTime」(以下アワータイム)が誕生した。販売は同施設内の成城石井のみというレアなビールだが、“街”をテーマにしたその開発コンセプトが実に興味深い。
忙しい現代人に上質な「食」を提供するイイトルミネ
イイトルミネは、忙しい現代人が通勤や通学の合間に気軽に立ち寄って、さまざまな食をタイムパフォーマンス(タイパ)、ウェルネスパフォーマンス(ウェルパ)の観点からも効率よく提供するためのグルメスポットとして、4月17日にJR新宿駅地下1階改札内(西改札方面)にオープンした。
スイーツを中心に東京初進出や行列ができる人気店がおよそ1000㎡のスペースに28店舗軒を連ねている。その目玉商品として、ルミネではそのコンセプトを体現する商品をメーカーとのコラボレーションによりプロデュースすることを決定、さまざまなジャンルから検討した結果、クラフトビールに白羽の矢を立てた。
「新宿駅は、ご存じのように世界一の乗降客数を誇る巨大ステーションで、通勤通学はもちろん、新宿を経由してご旅行に出かける方もいらっしゃるでしょう。そうしたさまざまな場面で新宿駅を使われる方々に向けて『EAToでイイトキ、イイトキメキ』というメッセージを発信していきたいと思っています。
そこで、いつでも食に寄り添うことができて、普段とはちょっと違う楽しさや喜びを感じてもらえるもの──、それを考えた結果、クラフトビールに行きつきました」
そう語るのは、ルミネ新宿店マーケティンググループリーダーの河部優子さん。もともと河部さんがビール好きで、さらにコエドとはルミネ川越店でのコラボレーションのご縁もあったことから、コンタクトした。
常識にとらわれないボーダレスなビール
コエドの担当ブルワー、伊藤光弥さんがその時のことを振り返る。
「河部さんのクラフトビールに対するイメージを伺った際、ぼくの中では新宿という街そのものが重なったんです。新宿は常に進化しそこから生まれたモノやコトが、世の中のスタンダードになることが少なくありません。また、さまざま人が去来するということは、さまざまな人を受け入れ、そして寄り添ってくれる街ではないかと」
ビールで新宿を表現することを決めた伊藤さんは、開発コンセプトを「ニュースタンダード」と「ボーダーレス」と決めた。前者はこれまでのビールの常識にとらわれないビール、後者はターゲットをあえて特定しないビール、という考えである。
「例えば、『ビールは苦い』という常識が我われにはあります。しかし、本当にそれを万人が望んでいるのか? いま、世の中にはたくさんのお酒があり、(苦い)ビールの対極にあるような甘いお酒を好む方もたくさんいらっしゃいます。そうした方々が選ぶ新しい基準のビールを造りたい、という思いに至ったんです」
伊藤さんは、国内外のさまざまなビールを河部さんに試飲してもらい、お互いのイメージにズレが生じていないことを確認しながらレシピを仕上げていった。特に、ビールのキャラクターを大きく左右するホップの選択は慎重に行った。最終的には、ビタリングホップは穏やかな苦味を持つエルドラドを使い、甘さは味覚ではなく香りで醸し出すために、トロピカルフルーツを連想させるアロマを持つギャラクシーとヴィックシークレットをメインに、そしてアクセントに爽快感を醸すシトラを使った。
ビアスタイルはホッピーウィート。大麦麦芽65%、小麦麦芽35%と一般的なウィートビールに比較しても小麦麦芽の使用率がかなり高い。これは、より柔らかい口当たりを目指したことによる。
そして仕上がったビールは「アワータイム」と名付けられた。このビールを飲んでいる時が、その人にとってちょっと嬉しい特別な時間になるように、という思いと同時に、日本の現代を象徴する新宿へのオマージュであるに違いない。