北海道の西部、積丹半島の南側にある岩内町。札幌から100キロのこの港町は日本でホップが発見された歴史的な土地。そこに誕生した醸造所併設ホテルが「IWANAI BREWERY & HOTEL」だ。温泉地にあり札幌やニセコからの観光客で賑わっている。

1871(明治4)年11月、明治政府のお雇い外国人トーマス・アンチセルが地質調査中に野生のホップを発見。政府に「日本でもビールを造ることができる」と報告したことがきっかけとなり、1876(明治9)年に札幌の開拓使でビール醸造所が誕生した。現在のサッポロビールである。アンチセルがホップを発見した場所は、岩内町の隣の共和町と推定されているが、アンチセル自身は「岩内」で発見と報告していたこともあり、岩内町内にある「岩内町郷土館」では「野生ホップ発見の地」碑が立てられている。

その岩内にクラフトビール醸造所兼ホテルが誕生したのが、2022年7月。町を上げての温泉リゾート内に建てられた「いわない高原ホテル」の敷地内にある。若旦那の荒井高志さんは語る。「岩内には日本でここにしかない『ホップ発見の地』というストーリーがあります。加えて良質な海洋深層水が採取されている。これらを生かさないのはもったいないと思い、なんとかビール造りができないものかとずっと考えていました。ハワイに一ヶ月だけ語学留学へ行ったときに現地の小さなブルーパブをみて『これだ!』と一気にビジョンが見え、ロッジをリノベーションして泊まれるブルワリーにしました」

醸造師を探していると隣の寿都町でビール醸造を希望する人物と出会う。現醸造長の田中康太さんだ。田中さんは実務経験がほとんどなかったが、いつかビール造りに携わりたいと熱心に勉強をしていた。「イギリスのビールが大好き。飲んで落ち着くビターに愛着があります」と語る田中さんの造るビールはシンプルながらも飲み飽きしないクリーンな味わいだ。2022年のインターナショナルビアカップでは3つのスタイルで金・銀・銅3賞を受賞する快挙も成し遂げた。

岩内は世界的リゾート地ニセコからも近く、ビールの売れ行きが落ちるはずの冬もリゾート客がブルワリーに辿り着いてくれる。「おかげさまでピーク時は全10室の予約がいっぱいになることもあります。でも元々の本館のホテルはもっと部屋数が多くそちらに宿泊してもビールは飲めますから、ぜひ泊りがけで。日本のホップの故郷である空気感と、漁港の町ならではの海鮮、そして源泉100%かけ流しの温泉をいっぺんに楽しんでください」

1.北欧スタイルのロッジを改装した。1階がブルワリー&レストランで上層階が客室
画像: 2.地元岩内高校美術部の生徒の手によるレストランの壁画。明治から現在までの岩内のビールの歴史が描かれている
2.地元岩内高校美術部の生徒の手によるレストランの壁画。明治から現在までの岩内のビールの歴史が描かれている
画像: 3.左からIBC2022金賞の「クロポン」同銅賞「エブリデイ」同銀賞「ホップマシマシ」(各600円 )と自家製ローストビーフ(900円 )
3.左からIBC2022金賞の「クロポン」同銅賞「エブリデイ」同銀賞「ホップマシマシ」(各600円 )と自家製ローストビーフ(900円 )
画像: 4 .若旦那の荒井さん(左)と田中さん。ガラス越しに醸造タンクが見える
4 .若旦那の荒井さん(左)と田中さん。ガラス越しに醸造タンクが見える
画像: 5.岩内では試験的にホップ栽培が始まっている。将来はホテル前にホップ 畑を設える予定。麦芽かすは肥料となる。道内ブルワリーは麦芽かすを農家や酪農家に提供し廃棄率はゼロだ
5.岩内では試験的にホップ栽培が始まっている。将来はホテル前にホップ 畑を設える予定。麦芽かすは肥料となる。道内ブルワリーは麦芽かすを農家や酪農家に提供し廃棄率はゼロだ

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