イタリアを代表するワインガイド『ガンベロ・ロッソ イタリアワインガイド』2021年版で、最高評価のトレ・ビッキエーリ(3グラス)を獲得したワインのセミナーが、東京・六本木で開催された。

 ガンベロ・ロッソ編集長のマルコ・サベッリコ氏がオンラインでガイドを務め、ワイナリーからは動画でメッセージが伝えられた。それらをジャーナリストの宮嶋勲氏が通訳、解説し、ワインを試飲しながらのセミナーとなった。

画像: イタリアワインガイド『ガンベロ・ロッソ』の
「トレ・ビッキエーリ ウェブ・ショウ」開催

生産者「メロット」(ヴェネト州)
ワイン『ヴァルドッビアデネ・リーヴェ・ディ・コル・サン・マルティーノ・ブリュット・キュヴェ・デル・フォンダトーレ・グラツィアーノ・メロット 2019年』

 「メロット」はグラツィアーノ・メロット氏が1972年に創設したワイナリーで、土地の個性を表すワイン造りを行っている。畑は傾斜地にあり、数メートルで粘土質、石灰質など土壌が変わるという。傾斜が強いため収穫は人の手による。「情熱と犠牲をはらい、畑仕事に専念することで素晴らしいブドウができる」との信念を持つ。

 「毎年トレ・ビッキエーリを獲得しているワイナリーです」とサベッリコ氏。「単一畑コル・サン・マルティーノから造るこのワインは、クリーミーで細かい泡が持続します。白い果実や花の優美な香り。エレガントで、ミネラルが広がる味わいです。繊細で凝縮感がありますね」と評価。前菜や野菜の天ぷらなどを合わせたいと語った。

 「切れのある酸とミネラルにアルプスを感じます。アペリティフ(食前酒)だけでなく、食事にもいいワインですね」と宮嶋氏はコメントした。

生産者「フェルゲッティーナ」(ロンバルディア州)
ワイン『フランチャコルタ・サテン 2016年』

 フランチャコルタの代表的ワイナリー。ワインの瓶底が四角い形をしているのは、オリとの接触面積を大きくするため。息子のマテオ氏が開発したものだ。

 「サテンは5気圧以下と通常のものより気圧が低く、クリーミーでエレガントな泡が引き立ちます。このワインはフリーラン果汁だけを使い、柔らかくフルーティーに仕上げています。リンゴやハーブ、柑橘の香りがあり、味わいは繊細。酸がしっかり全体を支えていますね。繊細ですが特徴がしっかり出ています」とサベッリコ氏。「これでアペリティフを楽しみたいですね。魚のカルパッチョや魚介の揚げ物と合うでしょう」

 宮嶋氏は「フランチャコルタの魅力を伝えてくれるワイナリーです。果実がストレートに感じられてチャーミング。生き生きとしていて、柔らかさもあります」と評価した。

生産者「テヌータ・ステッラ」(フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州)
ワイン『コッリオ・フリウラーノ 2019年』

 コッリオにある、2010年創業のワイナリー。泥灰土と砂岩から成る、ポンカというこの地特有の土が広がる畑で、ロボッラジャッラやマルヴァジア、フリウラーノなど固有品種を植えている。北方のアルプス、南方のアドリア海の間に位置するため風がよく吹き、有機栽培に成功している。発酵は野生酵母により、区画ごとにステンレスタンクで仕込む。

 「『コッリオ・フリウラーノ 2019年』はしっかりした色合いで、熟した白果実、ハーブのアロマティックな香り、後口に柑橘が感じられますね。口中で豊かに広がり、ベジタルの青さもあります。しっかりとしたボディでバランスが取れています」とサベッリコ氏。魚料理や野菜のスープ、しっかりとしたソースのパスタなどを合わせたいと語った。 

 「収穫が遅めなのか、熟れた洋ナシなどを思わせる、豊かさがあります。コッリオのワインはミネラルが強く出ますが、このワインはやさしいですね」と宮嶋氏は評価した。

画像: 生産者「テヌータ・ステッラ」(フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州) ワイン『コッリオ・フリウラーノ 2019年』

生産者「ダル・チェロ・テヌータ・コルテ・ジャコーベ」(ヴェネト州)
ワイン『ソアヴェ・スペリオーレ・ルンカータ 2018年』

 ソアヴェの中で最も東に位置し、ニューフロンティアとして注目されている地域にあるワイナリー。

 このワインが生まれる畑は陽当たりのいい南西向きにあり、標高は450メートルほどと高めで、樹齢約70年のブドウが植わっている。

 「このワインは複雑で豊かでエレガント。熟した果実や、中樽で1年間シュール・リー熟成させているためヴァニラの香りや力強さも出ています。口中ではフレッシュで、ライムやピンクグレープフルーツなどが広がります。香ばしくて、ミネラリーで、魅力的ですね」とサベッリコ氏。

 「アルコール度が13度ほどと高めですが、ミネラルがあり、ボッテリとした感じはありません。ワイルドな味わいですね」と宮嶋氏はコメントした。

生産者「カサーレ・デル・ジリオ」(ラツィオ州)
ワイン『アンツィウム・ベッローネ 2020年』

 1967年創設のワイナリーで、ソーヴィニヨン・ブランやヴィオニエ、メルロ、シラーなど国際品種で成功した。現在は固有品種にも力を入れ、全180ヘクタールの広大な畑を所有、年間170万本を生産している。

 「畑は海の近くにあり砂質土壌のため、フィロキセラの心配がなく、ブドウ樹は自根です。そのため品種の個性をよりはっきり出すことができるのです」とサベッリコ氏。ポンツァ島でもビアンコレッラのワインを造るなど、さまざまな試みを意欲的に行っているワイナリーだ。

 『アンツィウム・ベッローネ 2020年』はフローラルな香りとトロピカルフルーツのニュアンスが出ています。アルコール14度と高めですがデリケート。シャープな酸とミネラル、塩っぽさやヨード感もあり、個性的です。凝縮していて断固とした味わいがあります」とサベッリコ氏。ボッタルガのパスタなどが合うという。

 宮嶋氏は「ベッローネはアロマが力強くミネラルがあり、酸が強い品種。今注目されている味わいです」と語った。

生産者「フェウド・アンティーコ」(アブルッツォ州)
ワイン『トゥルム・ペコリーノ・ビオロジコ 2019年』

 トッロ村にある生産者協同組合で、「フェウド・アンティーコ」はトップラインを造るワイナリーだ。

 「伝統品種の栽培とワイン造りで成果を出し、注目されています」とサベッリコ氏。ペコリーノは固有品種のブームのなか、見直されている品種の一つでもあるという。
 「酸がとても強く、フレッシュなワインになります。今の時代に受けるワインですね」

 「熟した果実やアロマティックハーブの香り、口中では酸が厳格でミネラリー。ボディがありつつ繊細で、余韻も長い。ペコリーノは長熟するので、あと2~3年は美味しいでしょう。貝類やエビ、イカの料理、シェーヴルチーズなど、いろいろな料理と相性がいいですよ」とサベッリコ氏。

 宮嶋氏は「ペコリーノは基本的に男性的な味わいになります」と解説。「塩で食べる焼き鳥や空揚げなどにも合いそうです」

画像: 生産者「フェウド・アンティーコ」(アブルッツォ州) ワイン『トゥルム・ペコリーノ・ビオロジコ 2019年』

生産者「ヴィーテ・コルテ」(ピエモンテ州)
ワイン『バローロ・デル・コムーネ・ディ・バローロ・エッセンツェ 2016年』

 「ヴィーテ・コルテ」は生産者協同組合のトップラインを造るワイナリーで、ガビ、ランゲ、モンフェッラート、ロエロなど、ピエモンテ州の広い範囲に300ヘクタールあまりの畑を持つ。『モスカート・パッシート』は2020年のガンベロ・ロッソで「スイート・ワイン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。

 バローロ村のブドウだけで造られた『バローロ・デル・コムーネ・ディ・バローロ・エッセンツェ 2016年』は20~30日の長いマセレーションを行い、大樽で2年、その後最低1年間瓶熟成させて造られる。

 「とてもエレガントなワインです。赤い果実やスパイス、フローラルな香りですね。まだ若々しく、あと20年くらいは熟成できるでしょう。バローロらしいしっかりとしたボディですが、タンニンはシルキーです。酸とのバランスが良く持続性があり、後口は複雑。コーヒーのような香ばしさがあるところがバローロ村らしい味わいです」とサベッリコ氏。

 宮嶋氏は「近付きやすい味わいです。ボディと深みがあり、柔らかさがある。このような若いバローロも魅力的ですね」と語った。

生産者「バディア・ア・コルティブオーノ」(トスカーナ州)
ワイン『キアンティ・クラッシコ 2018年』

 1050年代からの修道院として建立された、このエリアで最も重要な建造物を、1846年からストゥッキ・プリネッティ家が所有する。修道院の地下にある熟成庫は中世から使用しているものだ。

 今から20年以上前から有機栽培の認証を取得し、キアンティ・クラッシコのテロワールを忠実に表現している。

 『キアンティ・クラッシコ 2018年』は「クリーンでフレッシュでエレガント。とても繊細です。フルーティーでフローラルでスパイシーさもある。鶏肉や兎肉にいいですね」とサベッリコ氏。

 「ブルゴーニュ・ワインのようなデリケートな香りです。しかし口中ではサンジョヴェーゼならではのタンニンが広がり、素朴さもあります」と宮嶋氏はコメントした。

生産者「ドナート・ダンジェロ・ディ・フィロメナ・ルッピ」(バジリカータ州)
ワイン『アリアニコ・デル・ヴルトゥレ・ドナート・ダンジェロ 2017年』

 良質な畑が広がるバリーレ村にあるワイナリー。畑は背後にヴルトゥレ山があって火山性土壌が広がり、50~60年の古木も植わる。

 「『アリアニコ・デル・ヴルトゥレ・ドナート・ダンジェロ 2017年』は力強くエレガント。熟した赤い果実、タバコ、スパイス、山のハーブが香ります。シャープな味わいでタンニンは繊細。酸がフレッシュなので果実味が心地よく感じます。まだとても若いワインなので、20年以上は熟成するでしょう」とサベッリコ氏。今から数年後からますます魅力的になっていくだろうと語った。

画像: 生産者「ドナート・ダンジェロ・ディ・フィロメナ・ルッピ」(バジリカータ州) ワイン『アリアニコ・デル・ヴルトゥレ・ドナート・ダンジェロ 2017年』

 

 9本のトレ・ビッキエーリワインに触れ、イタリアワインの多様な魅力と近年支持されているワインの傾向を知ることができる試飲だった。
 「2020年は恒例のトレ・ビッキエーリ試飲会が開催できませんでしたが、今年の10月には日本での試飲会を開催したい。その時にお会いしましょう」とサベッリコ氏は締めくくった。

通訳と解説を行った、ジャーナリストの宮嶋勲氏

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