「ラ・トランスミッション」はシャンパーニュメゾンで働く9人の女性が2016年に立ち上げたグループ。ワイン業界で働く女性の活躍を促進し、新しいヴィジョンを伝えることを目的に結成された非営利のグループだ。発案者のアンヌ・マラサーニュさん(シャンパーニュ・A.R. ルノーブル)は、スタートのきっかけをこう語った。
 「27年前に父の後を継ぎこの世界に入りました。醸造経験のない女性にとっては毎日が戦いの連続。いつかシャンパーニュ造りに携わる女性が集まって現代的な視点でサポートし合ったり、シャンパーニュの魅力を広く知らせたりすることができたらと思っていました」

 「シャンパーニュ・クリュッグ」のマギー・エンリケスさんに伝えると意気投合、その後シャンパーニュ地方のさまざまなエリアの、世代や背景が異なる女性たちが集まり、経験を共有し合いながら活動を行ってきた。
 「キーワードの一つが”多様性”です」とアリス・パイヤールさん(シャンパーニュ・ブルーノ・パイヤール)。その多様性は、シャンパーニュへの深い敬愛と愛着という共通認識に支えられている。

「自分たちがやっていることは、ほかから見るとどう映るのかを知ることも大事。それでこそシャンパーニュをより良く表現できると思います」
 セミナーでは、他メゾンのシャンパーニュをテイスティングしてコメントする、という趣向も盛り込まれた。

画像: 「ラ・トランスミッション」の9人の女性。 左から、エヴリン・ボワゼルさん(シャンパーニュ・ボワゼル)、アリス・パイヤールさん(シャンパーニュ・ブルーノ・パイヤール)、ヴィタリー・テタンジェさん(シャンパーニュ ・テタンジェ)、アンヌ・マラサーニュさん(シャンパーニュ・AR ルノーブル)、シャンタル・ゴネさん(シャンパーニュ・フィリップ・ゴネ)、シャルリーヌ・ドラピエさん(シャンパーニュ・ドラピエ)、デルフィーヌ・カザルさん(シャンパーニュ・クロード・カザル)、メラニー・タルランさん(シャンパーニュ・タルラン)、マギー・エンリケスさん(シャンパーニュ・クリュッグ)

「ラ・トランスミッション」の9人の女性。
左から、エヴリン・ボワゼルさん(シャンパーニュ・ボワゼル)、アリス・パイヤールさん(シャンパーニュ・ブルーノ・パイヤール)、ヴィタリー・テタンジェさん(シャンパーニュ ・テタンジェ)、アンヌ・マラサーニュさん(シャンパーニュ・AR ルノーブル)、シャンタル・ゴネさん(シャンパーニュ・フィリップ・ゴネ)、シャルリーヌ・ドラピエさん(シャンパーニュ・ドラピエ)、デルフィーヌ・カザルさん(シャンパーニュ・クロード・カザル)、メラニー・タルランさん(シャンパーニュ・タルラン)、マギー・エンリケスさん(シャンパーニュ・クリュッグ)

目指すゴール

 グループが見据える最終ゴール。それは三つあると、エヴリン・ボワゼルさん(シャンパーニュ・ボワゼル)は言う。
 「私たちが大切にしている価値――シャンパーニュ造りへの情熱、テロワールの尊重、畑の管理、携わる人々への配慮――を共有することが第1のゴールです。その次は家族の、メゾンの歴史をつなげていくこと。最後はシャンパーニュの将来にコミットすること。これは主に環境問題への取り組みです。今解決策を講じないと、シャンパーニュ造りはこの先続けていくのが難しくなります」
 シャンタル・ゴネさん(シャンパーニュ・フィリップ・ゴネ)は「シャンパーニュはもっと気軽に楽しめるものだと、多くの人に知ってもらうためにテイスティングセミナーなども開催しています。グラスの形状が味わいに影響することなど、具体的な楽しみ方も伝えています」と語る。

シャンパーニュの未来

 気候変動の影響が近年顕著に表れている、シャンパーニュ地方。今年は4月になって暖かくなった後、中旬に気温が急激に下がって霜がおり、生産者を悩ませている。
 シャルリーヌ・ドラピエさん(シャンパーニュ・ドラピエ)は「気候変動は、私たちにとって良い面もあると思います。ブドウの成熟レベルが上がり、ドザージュ(補糖)を抑えることができるようになりましたからね。それに私たちは環境に敏感になりました」と語る。ドラピエでは、カーボンフットプリントの排出がすでにゼロとなっている。
 「シャンパーニュ地方は10年ほどのうちに、どのメゾンも何らかの有機認証の取得が必須になるでしょう」と予測している。
 メラニー・タルラン(シャンパーニュ・タルラン)さんは対策の一つとして、気候変動に対応できる品種の研究を行っていると話した。

シャンパーニュの常識は変わる?

 シャンパーニュの未来を考える中で、飲み手のシャンパーニュに対する常識はどう変わっていくのだろうか。
 ヴィタリー・テタンジェさん(シャンパーニュ・テタンジェ)は「シャンパーニュはお祝いのお酒と思っている人は多いですよね。でもそれだけではなく、お庭で食べるランチとか、親しい人とのディナーとか、普段の生活に気軽に取り入れてほしいですね。シャンパーニュはブドウ、畑、造り手の魂、そして(熟成の)時間を一つにしたもの。飲む人の気持ちを、いつも高めてくれるのです。もっと自由に楽しんでもらえるように、積極的に提案していきたいです」
 デルフィーヌ・カザルスさん(シャンパーニュ・クロード・カザル)は「シャンパーニュは美食の最高の相棒であることを、これからも世界中の人たちに伝えたいです」と語った。
 「伝達、送信」という意味の「トランスミッション」。経験を次世代に伝え、持続するワイン造りを伝えたいという思いが込められている。9人の女性たちによる情熱に溢れた活動は、シャンパーニュの新しい一面を多くの人が発見するきっかけになるだろう。

画像: シャンパーニュの常識は変わる?

9人の女性のシャンパーニュ
左から『ジョワイヨ・ドゥ・フランス・ロゼ 2007年』(シャンパーニュ・ボワゼル)、『ブリュット・ナチュール・ドザージュ・ゼロ 』(シャンパーニュ・A.R.ルノーブル)、『ブラン・ド・ブラン エクストラ・ブリュット」(シャンパーニュ・フィリップ・ゴネ)、『カルト・オール』(シャンパーニュ・クロード・カザル)、『ロゼ・プルミエ・キュヴェ』(シャンパーニュ・ブルーノ・パイヤール)、『プレスティージュ・ロゼ』(シャンパーニュ・テタンジェ)、『ロゼ・ナチュール』(シャンパーニュ・ドラピエ)、『ラ・エリエン・ロゼ・ブリュット・ナチュレ』(シャンパーニュ・タルラン)、『グランド・キュヴェ 168エディション』(シャンパーニュ・クリュッグ)

This article is a sponsored article by
''.