11月21日、イタリア、トレンティーノ-アルト・アディジェ州にあるワイナリー「ケットマイヤー」の試飲会が行われた。「シャンパーニュ&スパークリングワイン世界選手権2022」では『ブリュット アテシス 2018年』が「ベストイタリアンスパークリングワイン」を受賞。光と音の中でテイスティングをするという新しい試みの下、南アジア・中東エリアマネジャーのエリカ・ガロンさんがケットマイヤーの魅力について解説した。
リッチなブーケを持つワインを生み出す「ケットマイヤー」
「ケットマイヤー」はイタリア、トレンティーノ-アルト・アディジェ州にあるワイナリー。1919年、ジュゼッペ・ケットマイヤー氏が創業。「けがれなきワイン造り、土地に根差した品種、製品ごとの個性に重きを置くこと」を哲学とし、伝統と革新の二輪のワイン造りに取り組んでいる。
55ヘクタールの畑を所有し、その標高は高いところでは800メートルにもなる。それゆえ畑に機械を導入することが難しく、今回試飲したアイテムはすべて手摘みで収穫されたブドウを使用。昼夜の寒暖差が激しく、フレッシュでリッチなブーケを持ったワインが生み出される。
イタリア最北のトレンティーノ-アルト・アディジェ州
「ケットマイヤー」のあるトレンティーノ-アルト・アディジェ州は、イタリアで最も北に位置する。北はオーストリア、スイスと国境を接し、西はロンバルディア州、東はヴェネト州に接している。州のほとんどが山岳地帯で、ブドウ畑は標高200~1300メートルの高さに広がっている。
会では『ブリュット アテシス 2019年』『ピノ ビアンコ アテシス 2019年』『ミュラー トゥルガウ “アテシス” 2012年』『ピノ ネーロ “マゾ ライナー” 2019年』を試飲。
『ブリュット アテシス 2019年』
品種:シャルドネ49%、ピノ・ビアンコ42%、ピノ・ネーロ9%
2年間オリに漬けて瓶内2次発酵をしたこちらはとてもアロマティックで、果実由来のほのかな甘やかさを感じる。持続的な細かい泡立ちと豊かなミネラル感が特徴。
深い海を思わせるブルーの光の中、ブラインアン・イーノとハロルド・バッド作曲、アルバム『ザ・パール』より『輝く魚のいる小川』を流して試飲した。
「弾ける泡の軽やかさと、小川を跳ねる魚の様子をイメージさせるこの曲は、海の潮風を感じるこのワインによく合います」とガロンさん。
『ピノ ビアンコ アテシス 2019年』
品種:ピノ・ビアンコ100%
ラベンダーの香りに青リンゴのニュアンス、程よい酸味が心地いい。持続的で繊細なミネラルが感じられる。スパイスのトーンが特徴的で、滑らかかつ刺激的な味わい。
合わせた音楽は、1500年代のスペインの作曲家、ルイス・デ・ナルバエス作曲の『「牡牛の番をして」のディフェレンシアス』。15~17世紀を中心にヨーロッパで広く普及した楽器、リュートが使われた楽曲で、ガロンさんによると、繊細で滑らかな音色はピノ・ビアンコの特徴に通ずるものがあるという。試飲中は、このワインの持つスパイスのアクセントを表現したイエローの光が会場を包んだ。
『ミュラー トゥルガウ “アテシス” 2012年』
品種:ミュラー・トゥルガウ100%
パッションフルーツなどトロピカルフルーツの豊かな香りに、クミンやカルダモンなどインド系スパイスのアクセント。口当たりは滑らかで、完熟した果実味を生き生きとした酸が支える。
インドの織物をイメージしたオレンジの光は、ワインの熟成感も表すという。ワインの持つオリエンタルな印象に合わせ、ドイツの女性シンガー、デヴァ・プレマルの歌う『ムーラマントラ』が流れた。
『ピノ ネーロ “マゾ ライナー” 2019年』
品種:ピノ・ネーロ100%
ラズベリーやルバーブ、スミレの香り。口当たりは繊細で柔らかく、生き生きとしたタンニンとさわやかな酸が力強い印象を与える。ややビターなフィニッシュが味わいを引き締める。
トレンティーノ-アルト・アディジェ州の夜明けをイメージした赤い光の中、『四季』で有名なイタリアの作曲家、アントニオ・ヴィヴァルディによる『協奏曲 ト短調 RV.107 第3楽章』を合わせた。
「音程やスピードに幅のあるこの楽曲は、ピノ・ネーロの複雑さとリンクします」とガロンさん。
「光」×「音楽」×「ワイン」という、五感を余すことなく使った新しい形の試飲会は、とても興味深い試みだった。ワインのイメージを膨らませやすくするという点で、とりわけワインにあまり親しみのない人に対して、効果的なアプローチになるのではないかと感じた。
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