過日、イタリア・シチリア州のワイナリー「ドンナフガータ」
のガブリエラ・ファヴァラさんが来日し、在日イタリア大使館でマスタークラスセミナーを行った。
最初に駐日イタリア大使ジャンルイジ・ベネデッティ氏が登壇し、伝統あるワイン産地シチリアの素晴らしさや、日本市場への期待の高さを伝えた。
ガブリエラさんは6代目として2年前にワイナリーに入社した。5代目として経営を担う母ジョゼ・ラッロさんとおじのアントニオ氏とともに、現在はホスピタリティマネジャーとして多くのお客さんに向けてワイナリーの歴史やワインの魅力を伝えている。
ドンナフガータはシチリアの土着品種に強いこだわりを持ち「究極のクオリティー」を追求するワイナリーだ。アンソニカ、ネロ・ダヴォラ、ジビッボなど、特徴あるブドウ品種を栽培し、州内の五つの地域に畑を持つ。
数多いワインの中から、今回のセミナーでは各地の特徴がより鮮明に表現されたワインを試飲した。
『スル・ヴルカーノ2021年』
カリカンテを主体とする白ワイン。エトナ山の北側にある畑で造られる。この地は砂質土壌で、エトナの他エリアと違い大陸性気候が優位だ。ワインはアタックが力強く、白い花やカリカンテらしい心地いい酸味が広がり、素直に抜けていく。レモンや塩を思わせる引き締まった味わいは、太陽の下でキリっと冷やして楽しみたい。
『リゲア 2023年』
パンテレリア農園で造られる白ワイン。風が強い場所にあるため、地面をはうような低木仕立てだ。乾いた気候で育つジビッボは、ムスクやレモン、ライム、マンゴーなど芳香性が際立ち、味わいはドライ、最後に酸味が迫ってくる。
『コンテーサ・デイ・ヴェンティ 2021年』
東南部に広がるヴィットリア農園のブドウで造られるワイン。ヴィットリア農園がある場所はヨーロッパでも最も暑いエリアと言われる。常に風が吹いている風土らしい、さわやかで軽やかな赤ワイン。アペリティーヴォ(食前酒)にもピッタリだ。
『クオル ディ ラヴァ ドルチェ&ガッバーナ・エ・ドンナフガータ 2019年』
「ドルチェ&ガッバーナ」とのコラボレーションラベルが目を引く。エトナ地域を代表する品種ネロッロ・マスカレーゼで造る赤ワインで、チェリーやキイチゴなどの小さい赤い果実、バラやラベンダーの柔らかい香りが特徴的。標高約750メートルと高く、そのためフレッシュでみずみずしい飲み口となっている。
『ミッレ・エ・ウナ・ノッテ 2019年』
ワイナリーを代表する、コンテッサ・エンテッリーナ農園のワイン。ガブリエラさんの祖父が1995年に最初に造ったワインで、現在最も多く生産している。95年当時、低価格帯ワインとして売られていたネロ・ダヴォラを、著名醸造家ジャコモ・タキス氏に依頼したことで素晴らしいワインになった。
フレンチバリック(9割が新樽)で1年間熟成、2年以上の瓶熟成を経たこのワインはとても複雑で、ヴァニラ、黒い果実、リコリス、ミントの風味が重なり合う。「20~25年くらいは熟成します」とガブリエラさん。
『ベン・リエ・パッシート2022年』
土着品種ジビッボで造る甘口ワイン。干したブドウとフレッシュ果実をブレンドして造るため、透明感のある自然な甘味が楽しめる。アンズのふくよかな香りと心地いい酸、火山性土壌から生まれるミネラル感が全体をスリムにまとめている。
若い世代が参画し、ファッションブランドとのコラボレーションなどの試みが実を結び、世界に向けてシチリアの伝統と新しいイメージを発信しているドンナフガータ。
「シチリアの可能性を追求するとともに、サステイナブルな取り組みも積極的に考えています」とガブリエラさんは話す。
ワイナリーでは、30年以上前から資源リサイクルやボトルの軽量化や輸送の効率化などに努め、2021年に「SOStain(ソステイン)」(イタリア環境省が認めた、シチリアのブドウ栽培における持続可能性プログラム)に加盟。持続可能なワイン造りを考え、この先も長く続けていくための農業やワイン造りを試行錯誤している。