地中海メルローの最高峰
「トスカーナのポムロール」とも表されるマッセートの畑は、ボルゲリに位置する。土壌は、ポムロールの畑に近い構造と言われ、ブルークレイと呼ばれる土壌が特徴的だ。世界中のシリアスなワイン愛好家が、こぞってコレクトする長期熟成型メルロの一つ、マッセートはここで生まれる。非常に限られた生産量を誇るこのワインは、一口ごとに濃密な力と繊細な余韻を感じさせ、世界中のワイン愛好家を魅了して止まない。昨年、ワイナリーと畑を訪問し、ベールに包まれたマッセートを垣間見る機会を得たので、マッセートの現在をお伝えしたい。
マッセートの畑の静かな変化

畑の面積は最初7haほどだったが、2018年からカベルネ ・フランが加わり、現在11haを所有し、11の区画に分かれている。伝統的には、Centrale(チェントラーレ:最も古い畑)、Isola (イゾラ)、Junior(ジュニア:最も若い畑)の3つの畑に分けられていた。
2003〜04年からブッシュヴァインに初めてトライし、現在さらに進めている。房のポジションが真ん中になるので、房が葉に守られるという利点がある。そして、現在、更にそのブッシュをより高く仕立てようとしている。
マッセートとセカンドのマセティーノの比較試飲も非常に興味深かったが、 それ以上に興味を引いたのは 2024年の サンプル 3種類。
3種類のサンプルを、テクニカルディレクターのバルシメッリ氏と利く

サンプル1のイゾラはブドウが熟すのが早い畑で、「葡萄の木をより高く仕立てると、チェントラーレ(サンプル2)の様になるかもしれない」とテクニカルディクターのマルコ・バルシメッリ氏は語る。成長がより ゆっくりとなることで、より良いタンニンが形成され、より表現豊かで、よりフレッシュな ワインになるのではと。
3番目のサンプルの カベルネ・フランについては、 今のところ 2024年の マッセートに使用するつもりはないということ。理由は、この年はノーズに青さがあることだという。
「私の大好きな品種の一つです。偉大な結果を出すためには、特定の条件が必要な品種ですが、条件が合った時は、素晴らしくなるのです!主に『マッセティーノ』のブレンドに使用しています」という、バルシメッリ氏の以前の発言もあり、彼がカベルネ・フランという品種自体を非常に評価しているのは明白である。ちなみに、カベルネ・フランのブレンドは2019年と2020年に行われている。
一言で表現すると、マッセートは、豊かな果実味とチェントラーレの畑から由来のエレガントさが共存するワイン。
マルコさんの「Purity(純粋さ)を表現していきたい。この地では酸度の高いメルロを造ることができる」という言葉が印象的であった。
サンプル3種類の印象
異なる2つの畑、イゾラとチェントラーレのメルロのサンプル、そしてカベルネ・フランのサンプル を試飲した。

サンプルNo.1MS02(最後の数字2桁は、収穫の順番を示す)
品種:メルロ
区画:イゾラ(2004年植樹)
収穫:8月28日〜
仕立て:ブッシュヴァイン(南アフリカの伝統的な仕立て方)
香り: 熟したチェリーのような香りのほか、トースティーな含みも少々感じられる。
風味: 甘い果実味を強く感じ、青さと果実味が共存している。力強い風味を感じる。
サンプルNo. 2 MS05
品種:メルロ
区画:チェントラーレ(1980年代植樹)
収穫:9月5日~
香り: 非常に深みのある、 ブラックベリーの香り。
風味: チェリーやバルサム系の風味、エレガントな果実味が感じられる。タンニンのストラクチャーが強い。
サンプルNo. 3 MS07
品種:カベルネ・フラン
土壌:カベルネ・フランの畑はマッセート全体(11ha)のうちの1ha。 石灰岩が主要な土壌で、カベルネ・フランをここに植えた。
香り: ハーブやピーマンの含みが支配的。
風味: テクスチャーも素晴らしく、非常に噛み応えがある果実味。酸度は中位。風味にもエレガントな青さが感じられる。がっしりとしたタンニンが、ストラクチャーを作り出している。
革新の積み重ねが伝統に

マッセートの最高責任者ランベルト・フレスコバルディ氏は、「伝統とは、革新の連続によって築かれる」と言う。この哲学は、彼のワイン造りの根幹を成している。氏は、700年以上の歴史を誇る家系の30代目にあたるが、その長い歴史に甘んじることなく、常に時代に合わせた「改革」と「挑戦」を続けてきた。
少しずつ畑の面積を増やしたり、品種を試し少し追加したり、仕立てを変えたり、その一つ一つは、大改革ではないとしても、小さな改革の積み重ねがやがて伝統となる。そして、更なる改革がなされ、密やかに着実にアップデートされていくマッセート。
700年以上の歴史を持つフレスコバルディ家が所有するマッセートは、ファミリーの歴史と同じく、これからも長い年月をかけて変化していくであろう。

