スペインの白ワインをけん引する産地、ルエダ。 スペイン固有のブドウ品種ヴェルデホは、フレッシュな辛口から樽熟成まで、多彩な表情を見せることから、今、世界のワイン市場でも熱い視線を集めている。ルエダのワインに詳しいソムリエの田邉公一氏に、その魅力を聞いた。

画像1: 白ワインのニューリーダー"ヴェルデホ"と注目の産地"ルエダ"の魅力とは?

風土がはぐくむ、ルエダの魅力

ルエダは、スペイン中北部・カス ティーリャ・イ・レオン州の内陸に広がる白ワインの銘醸地だ。首都マドリードの北西、標高700931メートルの高原地帯にブドウ畑が広がる。昼夜の寒暖差が大きく、年間降水量は300600ミリほど。乾いた大陸性気候のもとで、凝縮感のあるブドウ
がはぐくまれる。

画像1: 風土がはぐくむ、ルエダの魅力

砂利質の乾いた土壌やシルト質土壌、松林に近い高地の区画など、多様な環境が広がり、土壌や標高の違いが香りや酸の質感に多彩な個性をもたらしている。近年は、市町村名を表示できる「Vino de Pueblo」や、古樹と低収量を要件とする「Gran Vino de Rueda」が導入された。

主役は、スペイン固有のブドウ品種ヴェルデホだ。青リンゴやグレープフルーツを思わせるさわやかな香りと、後味に感じるほのかな苦味 が特徴である。一方、ルエダではソーヴィニヨン・ブランからも質の高い白ワインが造られている。今回は、同じ生産者が手掛ける両品種を飲み比べ、品種の違いと、ルエダという産地に共通する個性を確かめた。

画像2: 風土がはぐくむ、ルエダの魅力

さらに、ヴェルデホは樽発酵や樽熟成、澱との接触、フロール(産膜酵母)下での生物学的熟成など、醸造法によって多彩に表情を変える。軽快な辛口という枠を超え、熟成の可能性まで示す品種だ。今、注目したい品種と産地、それがルエダのヴェルデホである。

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田邉 公一氏
Kouichi TANABE

第6回 「キュヴェ・ルイーズ ポメリーソムリエコンテスト」優勝。ソムリエ歴23年、ワイ
ン講師歴は16年以上。レストランやワインショップ、スクールを中心に、都内外の複数企業でワインや日本酒など飲料の監修、セミナー講師を務める。ルエダの最新事情にも詳しい

ヴェルデホって どんな品種? なぜ、こんなに人気なの?

画像: ヴェルデホって どんな品種? なぜ、こんなに人気なの?

ヴェルデホは、ルエダを代表するスペイン固有の白ブドウ品種です。 スペインを代表する白ブドウ品種でもあり、国内で広く親しまれ、いまや世界でも注目を集めています。

青リンゴやグレープフルーツ、ライムを思わせる果実の香りに、フェンネル、干し草、森の下草、グリーンオリーヴを思わせる香りが加わります。魅力は、ただ軽やかなだけではないところ。口に含むと、十分な酸と果実味に加え、後味にほのかな苦味や旨味が残り、味わいに輪郭を作ります。この苦味が、焼いた野菜や豚肉、鶏肉などと合わせた時に、料理の油分や香ばしさと調和します。

若いうちから飲み応えがあり、造りや熟成次第では、より複雑な表情も見せます。食事と楽しむ白ワインとして、大きな力を持つ品種です

どんなスタイルの ワインがある?

画像: どんなスタイルの ワインがある?

低温でステンレスタンク発酵させた、フレッシュで香りの よい辛口。これがルエダの基本的なスタイルです。しかし現在は、樽発酵や樽熟成によってふくよかさと香ばしさを加えたもの、澱とともに熟成させて旨味を引き出したもの、フードルなどの大樽で熟成させたものまで、実に多彩です。樽を使っても、ヴェルデホらしいグリーンな香りやほろ苦さが失われず、果実味と重なって立体感が生れるのがユニークです。さらに、酒精強化し、フロール下で生物学的熟成を行う「ルエダ・パリド」や、酸化熟成による「ルエダ・ドラド」という伝統的なスタイルもあります。

冷やして軽快に楽しむタイプから、温度を上げて料理とじっくり楽しむタイプまで、その幅は広いです。今回試飲したヴェルデホからも、品種の懐の深さを実感しました。

今さら聞けない! ルエダの「ゾーニング」って何?

ここでいうゾーニングは 、DOルエダの公式な格付けではなく、標高や土壌、地形の違いから畑ごとの個性を読み解く視点です。同じルエダでも、砂利質で乾いた低地と、シルト質土壌や松林に近い高地では、ブドウの熟し方や香り、酸の質感が異なります。

低地では果実がよく熟し、トロピカルフルーツを思わせる華やかな香りや、膨らみのある味わいが現れやすくなります。一方、高地ではハーブや石を思わせるニュアンスと、引き締まった酸が現れやすくなります。もちろん、境界線1本で味わいが明確に分かれるわけではありません。畑の向きや微気候(ミクロクリマ)、収穫時期、さらには造り手の判断もワインの個性に影響します。

ボトルの向こうにある畑を想像しながら味わうと、ヴェルデホの表情はより立体的に見えてきます。ゾーニングは、そのための見取り図なのです。

「Gran Vino de Rueda」って、何が特別?

画像: 「Gran Vino de Rueda」って、何が特別?

「Gran Vino de Rueda」は、古樹と畑の価値をより明確に示すために設けられたカテゴリーです。使用できるのは、樹齢30年を超える畑で収穫されたブドウ。収量は1ヘクタール当たり6500キログラム以下、ブドウからワインへの収率も65パーセント以下に制限されています。低収量の古樹から得られたブドウを厳選し、凝縮感や畑の個性を表現するための仕組みです。

ただし、熟成期間を定めたカテゴリーではありません。大切なのは、単に「濃い」ワインを目指すことではなく、古樹がもたらす深みや土地の個性をワインに映し出すことです。若いうちの鮮烈さだけでなく、複雑さや熟成の可能性も備えた、ルエダの新たな魅力を伝えるカテゴリーとして注目しています。

ルエダにも“村名ワイン”の時代が来た?

ルエダの 「Vino de Pueblo」は、一般には「村名ワイン」と受け取られますが、ブルゴーニュの村名格付けのように、品質の上下を示す制度ではありません。使用するブドウの85パーセント以上が同一の村または町に由来する場合、その市町村名をラベルに表示できる制度です。ルエダは長く、産地名とヴェルデホの名で親しまれてきました。しかし、村ごとに標高や土壌、畑の歴史が異なることに目を向けると、同じヴェルデホでもスタイルや味わいに違いが生まれます。

「Vino de Pueblo」は、その違いを生産者が語り、飲み手がたどるための入り口です。品質の優劣を示す格付けではありませんが、ルエダを一枚岩ではなく、それぞれに個性を持つ土地の集合として味わう視点を与えてくれます。

ヴェルデホは 日本でもっと人気が出る

もっと人気が高まる可能性は十分にあると思います。ヴェルデホは、フ レッシュで早飲みの白ワインにとどまらず、樽発酵や樽熟成、大樽での熟成、さらには酒精強化ワインまで、多彩なスタイルに対応できるポテンシャルの高い品種です。若いうちの爽やかさだけでなく、熟成による複雑さや奥行きまで表現できます。その懐の深さこそが、ヴェルデホならではの魅力でしょう。

果実味と酸に、ハーブの香りやほろ苦さが重なり、ソーヴィニヨン・ブランのさわやかさとシャルドネの膨らみを橋渡しするような存在です。

日本では、まずレストランやワインバーでグラスワインとして飲める機会が増えてほしいですね。スタイルによって、野菜のてんぷらや焼き鳥、豚肉のショウガ焼き、樽を使ったタイプなら焼き肉まで合わせられるので、料理との相性のよさは大きな武器になると思います。

田邉ソムリエRecommend

約60本の中から、田邉公一氏が特に印象に残った、読者にぜひ味わってほしいと感じたワインをセレクト。 ルエダ、そしてヴェルデホの多彩な魅力が伝わる、お勧のラインナップを紹介する。

画像1: ヴェルデホは 日本でもっと人気が出る
画像2: ヴェルデホは 日本でもっと人気が出る
画像: *シェリーの伝統的な熟成法。若いワインを継ぎ足し ながら熟成を重ね、複雑さと均一な品質を生み出す

*シェリーの伝統的な熟成法。若いワインを継ぎ足し ながら熟成を重ね、複雑さと均一な品質を生み出す

試飲を終えて見えた ヴェルデホの魅力

今回は、ソーヴィニヨン・ブラン とヴェルデホの計9本を紹介しました。同じワイナリーが手掛ける両品種を比べることで、品種による香りや味わいの違いと、ルエダの白ワインに共通するフレッシュさや輪郭が見えてきます。

なかでもヴェルデホは、スタイルが変わっても、グリーンな香りと後味を引き締める心地よいほろ苦さという個性が一貫して感じられます。フレッシュなタイプは伸びやかな酸が魅力で、野菜料理や軽い前菜と好相性。樽を使ったタイプは果実味に旨味や香ばしさが加わり、焼き鳥や焼き肉、豚肉など、より幅広い料理と楽しめます。フロール下での生物学的熟成と、その後の酸化熟成を経たタイプからは、ルエダの奥深さも感じました。

ヴェルデホは「魚介のための白」にとどまらず、山の食材や香ばしく焼いた料理にも寄り添える品種です。畑や造りの違いを飲み比べる楽しさがあり、食卓の可能性を広げてくれます。

さらに、「Vino de Pueblo」や「Gran Vino de Rueda」といった新たな表示やカテゴリーの導入により、ルエダは土地ごとの個性や古樹の価値を、これまで以上に明確に伝えようとしています。こうした表現の幅の広がりこそ、いまルエダとヴェルデホに注目したい理由だと思います。

画像: 試飲を終えて見えた ヴェルデホの魅力

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