活火山・桜島を望むダイナミックな眺望と、鹿児島の恵みを活かしたした多彩なレストランが自慢の「SHIROYAMA HOTEL kagoshima(城山ホテル鹿児島)」。ホテル内にある城山ブルワリーより、白ワインのブドウ品種シャルドネ果汁を使用したビールがリリースされた。鹿児島というと焼酎のイメージが強いが、実は幕末に海を渡りカリフォルニアで「ワイン王」となった志士の故郷であり、ワインに縁が深い。その薩摩の先達にオマージュをささげたという、“ワインのようなビール”を味わいにホテルに向かった。
(文・写真:コウゴアヤコ)

シャルドネ果汁を使用した高貴なビール「シャルドネエール」

目の前に置かれたグラスからは、白ブドウの甘い香りとホップの清々しい香りが放たれていた。色は明るいオレンジ色。口の中に入れると白ブドウの果汁感がいっぱいに広がった。甘さは控えめでほのかな酸味が全体をキリリと引き締めてくれる。白のスパークリンワインのようでありながら、口当たりの滑らかさと余韻に残るハッサクの皮のような柑橘系の苦みが、これはビールであることを思い出させてくれる。

画像: 限定醸造のシャルドネエール。「SHIROYAMA HOTEL kagoshima(城山ホテル鹿児島)」は2021年2月5日発行の『ワイン王国』にてご紹介したラグジュアリーホテルだ。ワイン王国編集部が取材をした正にその日に、ホテル内のビール醸造所では“ワインのようなビール”の仕込みが行われていた。2か月の発酵と熟成期間を経て2月の某日、ホテル内のバーでお披露目された

限定醸造のシャルドネエール。「SHIROYAMA HOTEL kagoshima(城山ホテル鹿児島)」は2021年2月5日発行の『ワイン王国』にてご紹介したラグジュアリーホテルだ。ワイン王国編集部が取材をした正にその日に、ホテル内のビール醸造所では“ワインのようなビール”の仕込みが行われていた。2か月の発酵と熟成期間を経て2月の某日、ホテル内のバーでお披露目された

「シャルドネエール」は、その名の通り白ブドウの品種シャルドネの果汁をビールに加えて造られている。ビールの主原料である麦芽に小麦フレークを少々加えてビールの素になる麦汁をつくり、オーガニックで育てられたフランス産シャルドネ果汁を注ぐ。苦み付けのホップは柑橘類のような苦みをもたらすシトラリーフ。香り付けのホップには、ニュージーランド産ネルソンソーヴィンを使用。これは白ワインの銘醸地ネルソン地区で生まれたホップで、その香りはソーヴィニヨンブランに例えられることが多い。それをケルシュ酵母というドイツのライン川沿いの街ケルンで伝統的に使われている酵母で発酵させ、ビールが完成する。
果汁とホップ、2方向からフルーティーな風味が重なることにより、味わいに奥行きが生まれている。軽快な飲み口は、これから初夏にかけてぴったりの爽やかなビールだ。

画像: 「ザ セラーNバロン・ナガサワ」店長 田中健一郎氏

「ザ セラーNバロン・ナガサワ」店長 田中健一郎氏

このレシピを考案したのは同ホテル内にある「ザ セラーNバロン・ナガサワ」のワインソムリエ・田中健一郎氏と、ビール部門醸造長・倉掛智之氏だ。“ワインのようなビール”は2020年から季節限定で醸造している。カベルネ・ソーヴィニョンとメルロー果汁を使用したルビー色のビールは、秋の味覚を大いに引き立ててくれた。シャルドネエールは、今回で2度目。ブドウの産地や酵母の種類を変えるなど、さらにブラッシュアップされた。

画像: 「城山ブルワリー」醸造長 倉掛智之氏

「城山ブルワリー」醸造長 倉掛智之氏

「ザ セラーNバロン・ナガサワ」海を渡りワイン王になった薩摩藩士

海外への渡航が禁止されていた幕末、薩摩藩の命令により海を渡り、後に「ワイン王」と呼ばれた人物がいたことをご存じだろうか。名を長澤鼎(ナガサワカナエ)という。英国留学を経て米国カリフォルニアでワイナリーを開設。日米交流の祖として、鹿児島県が誇る偉人である。「ザ セラーNバロン・ナガサワ」はその功績を称えたワインバーだ。ワインセラーには、氏にゆかりのあるワインから、カジュアルなもの、プレミアムなものまで幅広く揃えられている。

画像: ワインセラーが据えられた「ザ セラーNバロン・ナガサワ」の入り口

ワインセラーが据えられた「ザ セラーNバロン・ナガサワ」の入り口

同店の魅力はワインにとどまらない。ホテル併設のビール醸造所で造られる新鮮なクラフトビールを堪能することができるのだ。カウンターに据えられたビアサーバーでは、4種類の定番ビールに加え2種類の限定ビールが味わえる。シャルドネエールもこちらのバーで頂いた。
昼は錦江湾に浮かぶ桜島の絶景を眺めながら明るく闊達に、夜はライトアップされた噴水を背にロマンチックに。鹿児島の魅力を存分に堪能できるバーだ。

画像: ひとりでもグループでも、お酒と共に心地の良い時間を過ごすことができる

ひとりでもグループでも、お酒と共に心地の良い時間を過ごすことができる

鹿児島のテロワールをビールに表現「城山ブルワリー」

九州最南端にあり鹿児島県は離島を含め南北600Kmに広がり、気候や植物生態も多種多様だ。鹿児島ならではの恵みを生かしたクラフトビールを造っているのは、ホテルに併設された醸造所「城山ブルワリー」。1998年からビール造りを開始し今年で22年目。地ビールの世界では古参のブルワリーだ。
奄美大島産の黒糖を使った「スタウト」、長寿の島で採れる長命草の「万咲(まあざく)IPA」、世界最小の柑橘類の桜島小みかんの皮を加えた「ベルギーホワイト」、串木野産レモングラスが香る「ハーブエールレモングラス」といった定番ビール以外にも、シーズナルでバナナやパッションフルーツなど県産の旬の作物を使ったビールを手掛けている。

画像: ブルワリーは地下にあり、ガラス越しに設備を見ることができる。

ブルワリーは地下にあり、ガラス越しに設備を見ることができる。

「シャルドネエール」も限定ビールのひとつで、薩摩が誇るワイン王・長澤鼎にオマージュをささげたビール。ソムリエの卓越した舌と、ビール醸造技術が作り上げた共同作品だ。
日本全国に493カ所のクラフトビール醸造所があるが(2021年2月現在)、実に多彩で同じ味はない。鹿児島だからこそ造ることができる城山ブルワリーのビールは、正にテロワール(土地の自然環境要因)と人間の手(醸造家)が造りあげる唯一無二の作品と言えよう。

画像: 左から醸造スタッフの中村亮雄氏、西村之孝氏、醸造長の倉掛智之氏

左から醸造スタッフの中村亮雄氏、西村之孝氏、醸造長の倉掛智之氏

城山ブルワリーのビールは、ホテル内に11あるレストランやバーでそのほとんどが消費されてしまうため、県外に出回ることは稀だ。そのためブルワリーのビールを飲もうと思ったら、鹿児島に来ていただくのが一番だ。“ビールに旅をさせるのではなく自分が会いに行く”。旅の目的がビールであっても良いだろう。ホテルからの絶景や食、温泉、バーのラグジュアリーな雰囲気ごと味わいたい。

「SHIROYAMA HOTEL kagoshima(城山ホテル鹿児島)」

〒890-8586
鹿児島県鹿児島市新照院町41番1号
TEL:0570-07-4680(9:00~18:00)

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