日本のクラフトビールは、1994年の酒税法改正によって幕を開けた。翌年、エチゴビール(新潟)が日本で第一号としてクラフトビールの販売を開始する──。しかし、それ以前に「日本がダメであればアメリカに行ってビールを造ればいい」と、クラフトビールにチャレンジしたのが、本書の著者であるサンクトガーレン代表の岩本伸久さんだ。
ゆえに、しばしば日本のクラフトビール界では「日本のクラフトビール第ゼロ号」と畏敬の念をもって語られる。
そんな岩本さんが「教養としてのクラフトビール」を上梓した。このタイトルの「教養として」とはどういうことか。ひとつの解釈として、それは「知的好奇心をもってクラフトビールを楽しむこと」ではないか。たとえば、飲んだビールの味わいや香りを楽しむだけではなく、そのビールが誕生するまでの歴史的背景や、ビールによっては驚くようなエピソードがあるかもしれない。
また、発祥国の食文化も大きく影響しているかもしれない。つまり、本書はビアパブでうんちくを語るための「虎の巻」ではなく、あくまでも「クラフトビールは、あなたの知的好奇心をくすぐる対象になるはずですよ」という岩本さんのメッセージであるように思う。
「クラフトビールは、なぜ日本や世界で『多様性』の象徴となったのか」をテーマにしたチャプター1では、「クラフトビールは時代の価値観を映している」、さらには「クラフトビールは文化産業へと進化する」といった興味深いテーマが展開される。
クラフトビールの指南書は数多あるが、傍観していた人の言葉よりも、内側でマーケットを切り拓き、流通や販売網を整備するために奮闘してきた人の言葉のほうがリアルだし、重さがある。ぜひ、ご一読いただきたい。
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