前回に引き続き、東京・六本木の「割烹小田島」2代目、小田島大祐氏に、家庭で実践できる和食とワインのペアリングのコツを教わろう!
今回はペアリングを成功させるヒントの二つめ!
その弐 酸のバランスを考えるべし!
和食とのペアリングを考える際は、ワインの酸度が重要なポイントだと言う小田島氏。
和食には辛口の白と思われがちですが、意外にもよく合うのは自然な甘みを感じる穏やかな酸味のワインなんですよ!
海老芋唐揚げ 柚子添え
皮をむいて下茹でした海老芋に小麦粉をまぶし、180度のサラダ油で さっと揚げる。柚子の皮の千切りを乗せ、塩をつけていただく。海老 芋本来の旨味のある甘味に、素揚げすることで油の旨味も加わる。柚子が柑橘のさわやかさとほのかな苦味を運んでくる。
柚子と塩を上手に使って ワインとの共通項を作る!
『海老芋唐揚げ 柚子添え』に合わせた2本に共通するのは、丸みを帯びた酸味。
ねっとりとした海老芋の甘味に寄り添い、包み込んでいく。添えられた柚子のほろ苦さは、ワインにも感じられる共通項で、口の中でバランスよくまとまる。
J.モロー・エ・フィス『J. モロー・エ・フィス シャブリ2018年』
グレープフルーツ、青リンゴ、白い花、レモングラスの 香り。酸味は中程度、ほのかな塩味があり味わいのバラ ンスが良い。アフターにほんのり感じる苦みも心地いい。
ヴァイグート・フォン・ウィニング『フォン・ウィニング ヴァイスブルグンダーⅡトロッケン2017年 』
洋ナシ、白桃、コショウなどが華やかに香る。ほどよい 酸味とアルコールが織りなすふくよかな骨格が心地い い。アフターにしっかりと感じる旨味は、酸味とのバランスがとれている。
和食とロゼワイン!
鮨に超辛口のシャンパーニュを合わせる方がいますが、酢飯と高い酸味のワインは、私は合わないと思います。私の店では、鮨には果実の自然な甘みを感じるロゼを合わせます。ロゼは家庭料理とも非常に相性がいいですよ
ロゼワインが家庭料理にはぴったりと言い切る小田島氏。ロゼのやさしい酸味と和食の相性を中心に、魚料理との相性を見ていこう。
アジの握り オリーヴオイル 塩
三枚に下ろしたアジに軽く塩をふり、1時間ほど置く。酢で洗い、キッチンペーパーで拭いて冷蔵庫で休ませる。アジは薄くそぎ切りにし、 酢飯とともに握る。仕上げにオリーヴオイルと塩をかける。酢締めした アジにかけたオリーヴオイルと塩が、ワインとの距離をぐっと縮めてくれる
酢締めした魚、酢飯とワインの酸度を合わせる
酢飯の酸と旨みにロゼならではの果実味由来の 自然な甘みを感じる酸とヨード感がよく合う。オリーヴオイルには、ふくよかな白が味わいにふくらみを持たせてくれる。
パスクア『パスクア 11 ミニッツ ロゼ トレヴェネツィエ 2017年』
果実味が感じられるロゼのやさしい酸味が、酢飯の旨味とよく合い、酢締めしたアジの甘さを引き立てる
カリン、ハチミツの甘い香りに、バラや、かすかにイチ ゴの赤い果実のニュアンスも。酸味は中程度、余韻にし なやかな果実味が心地よく広がり、淡いタンニンとバランスよくまとまっている
J.モロー・エ・フィス『J. モロー・エ・フィス シャブリ2018年』
ミネラリーでふくよかなため、アジの旨味とオリーヴオイルに合わさって味わいにふくらみが増す
マグロ漬け バルサミコ醤油 クレソン
マグロの切り身は醤油3:バルサミコ酢1:水1の割合のマリネ液で 30分漬ける。器に盛り、粗びき黒コショウ、クレソンを乗せる。ワインと合わせるポイントは、バルサミコ酢とクレソン。マグロをブリや戻りガツオに変えてもOK。
バルサミコ酢と、クレソンの苦みがワインを引き寄せる!
バルサミコ酢が赤ワインとの橋渡し役。マグロの赤身には、ロゼや ピノ・ノワールのやさしい果実味 とタンニンを。クレソンの苦みがワインのタンニンと同調し、さらに深くつなげてくれる。
パスクア『パスクア 11 ミニッツ ロゼ トレヴェネツィエ 2017年』
ロゼのやさしい酸味がマグロの旨味を引き出す
グランポレール『グランポレール 余市 ピノ・ノワール 2017年』
赤い果実を感じる伸びやかな酸味が、バルサミコ酢と同調する
チェリーやイチゴの華やかで甘い香り。梅肉のような柔 らかい酸はやさしく上品でタンニンは控えめ、ビロード のような滑らかな余韻が続く。
いかがだっただろうか?
家庭料理の和食にはロゼ。特に酢飯や刺身もロゼと相性がいいことを覚えておけば、家庭でのペアリングの質がぐっと上がりそうだ。
次回は最終回! その参~ワインに共通する柑橘やスパイスを上手に使うべし~
次回はいよいよヒント三つめ!家庭料理の和食といえば……の煮物をピックアップ!
小田島大祐 Daisuke ODAJIMA
1973年生まれ。「和食とワイン」のパイオニアである 父、小田島稔氏に師事。和食とワインのさらなる可能 性を追及し、提案する料理人兼ソムリエ
「割烹 小田島」
和洋中の素材を組み合わせたオリジナル料理は、前菜 からデザートまですべておまかせ。メニューは日替わりで、常時100本以上のワインがそろう。
住所:東京都港区六本木7-18-24鈴木ビル1階
TEL:03-3401-3345
営業時間:18:00~22:00(ラストオーダー)
土曜日 11:30~14:00(ラストオーダー)
定休日:日曜日・祝日
HP:http://odajima.info/