「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」は1945年ヴィンテージのラベルを、当時無名だったイラストレーターのフィリップ・ジュリアン氏に依頼し、戦勝記念のVを配したラベルを採用した。その後毎年、特別ラベルを芸術家に依頼している。

 今年は、北京の中央美術学院で版画を専攻した中国人の徐冰(シュー・ビン)氏の作品が採用された。徐氏は1955年、重慶生まれ。子どものころから書を学び、独創によって全く意味を成さない偽漢字を用いた書や印刷物、インスタレーションなどの作品を発表し注目された。最近は、ローマ字を組み合わせて一つの漢字風の文字を作る新しい書道、「新英文書法」シリーズへと移行しているという。

画像: “MOUTON ROTHSCHILD”を漢字風にあしらった2018年ヴィンテージのラベルデザイン

“MOUTON ROTHSCHILD”を漢字風にあしらった2018年ヴィンテージのラベルデザイン

 今回の作品も、Mouton Rothschildのアルファベットを漢字風デザインにしたもの。一見、繁体字中国語の文字に似ているが、実際にはアルファベットの文字で構成されており、左がムートン、右がロスチャイルドを表している。漢字に親しんでいる日本人には、何やらおかしいと感じるが、アルファベットしか知らないヨーロッパの人たちには大きな感動を与えるようだ。

 徐氏は2013年にシャトー・ムートン・ロスチャイルドを訪問し、故フィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人と『シャトー・ムートン・ロスチャイルド』のラベルについて語り合い興味を持ったという。今回は、シャトー・ムートン・ロスチャイルドを引き継いだカミーユ・セレス・ド・ロスチャイルドさんと、ジュリアン・デ・ボーマルシェ・ド・ロスチャイルド氏の依頼を受け実現した。

画像: 『シャトー・ムートン・ロスチャイルド 2018年』のラベルを製作した中国人デザイナー、徐冰氏

『シャトー・ムートン・ロスチャイルド 2018年』のラベルを製作した中国人デザイナー、徐冰氏

 2018年は7月半ばまで不順な天候が続きシャトー・ムートン・ロスチャイルドの耕作スタッフもベト病への対応で苦労した。しかし夏以降は天候が回復し、確かな品質のワインができあがった。プリムールの評価は「ベタンヌ&ドゥソーヴ」は19/20、「ジャンシス・ロビンソン」は18/20、「ロバート・パーカー」は97-99/100、「ワイン・スペクテーター」は91-94/100など。現在の市販価格は650€(8万2000円)前後。

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