1985年に初ヴィンテージをリリースして以来、多くのワインファンを魅了し続けている「オルネッライア」。トスカーナ州のDOC(統制原産地呼称)で唯一、地中海の沿岸ボルゲリに位置し、多様なマイクロクライメット(微気候)に恵まれた風光明媚な土地から、さまざまなワインを誕生させている。
イタリアワインのスペシャリストである「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」の本多康志店長兼ソムリエが「オルネッライア」の楽しみ方を披露してくれた。
「『ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア 2019年』の味わいに潮風を感じる」と本多氏。引き締まった酸とミネラルが顕著で、飲み手に、ボルゲリならではの風土感を意識させるエレガントなワインだ。
次に登場した『オルヌス・デル・オルネッライア 2013年』はプティ・マンサン100パーセントの甘口タイプで、生産量は3000~3400本程の希少アイテム。気候変動の影響を受けにくいブドウ品種なので、昨今、世界の栽培家からも再認識されているが、甘口に仕立てられることが多い。
深みのある黄金色、ドライアプリコットやトロピカルフルーツの香り、口中にねっとり感が広がり、ノン・マロラクティック発酵に由来する酸がワイン全体をバランス良くまとめている。思わず“深窓の令嬢”という言葉を使いたくなるオルネッライアの至宝だ!
『オルネッライア』の最新ヴィンテージ2018年と、創業20周年の記念ヴィンテージ2005年の利き比べでは、興味深いマリアージュが体験できた。
資生堂パーラーの「伝統のコンソメ」は、手間暇かけたスペシャリテで、本多氏は日ごろから「余分な脂分がない“旨味の塊”の肉料理」と表現している。ゆえに、白ワインではなく、熟成感のある落ち着いた赤ワインとのマリアージュを推奨。
『オルネッライア 2018年』は黒系果実の趣があり、テクスチャーもシルキー、単独で飲んでも美味だ。
『オルネッライア 2005年』は赤みを帯びた色調で、熟成感が出ている。コンソメを口に含んだ後の余韻に相乗するように双方は一体化し、さらにワインの鉄っぽさとコンソメのキャラメルっぽさもうまく調和していた。
フィレ肉を合わせた場合、2018年は塩だけでも十分に楽しめる。肉本来の繊維質に寄り添ってくれる味わいで、オルネッライアのエステート・ディレクター アクセル・ハインツ 氏が“優美”と形容した意味がよくわかる。
2005年はワインの酸化熟成とマデイラソースの酸化したニュアンスが絶妙に重なり合い、ソースを付けるとよりリッチな印象になった。
最後に、琥珀色の『エリゴ・デル・オルネッライア グラッパ・レゼルヴァ』が供出された。小さな銅製の蒸留器で丹念に蒸留され、オルネッライア専用のフレンチオークで3年以上熟成させた深い余韻に浸れるグラッパで、“選ぶ”という意味のラテン語「eligo」に由来する逸品。グラッパ好きには垂涎のアイテムと言える。
長年の経験に裏打ちされた持論を展開してくれた本多氏は「世界のワインと比肩する実力を有すオルネッライアは、イタリアワインの枠にはめないでとらえてほしい」と強調していた。コロナ渦中で行動が制限されている今だからこそ、本物を見極める目を持つワイン愛好家に味わっていただきたい逸品である。
「オルネッライア」https://www.ornellaia.com