唯一無二のワイン産地として、世界から熱い視線を集めるイタリア・シチリア島。フロントランナーである「プラネタ」の歴史や哲学とは。醸造責任者のアレッシオ・プラネタ氏との対談を通して「銀座レカン」シェフソムリエの近藤佑哉氏がその秘密に迫る。
本記事は『ワイン王国 130号』に収録されています。シャンパーニュ特集のほか、シチリアワインをはじめとした夏のワインの楽しみ方など、盛りだくさんの内容をお届け! ぜひ本紙と併せてご覧ください(電子版はコチラ→@@@)
地中海最大の島、シチリア島。古代からの歴史と美食だけでなく、高品質なワインを生み出す産地としても人気を博す。土着品種が豊かだが、トップランナーとしてワイン文化をけん引する「プラネタ」は、1994年に国際品種であるシャルドネに挑戦。その品質に世界が目を見張り、評論家が「世界のワイン地図にシチリアが登場した」と賞賛した。以来、シチリアのテロワールを映し出すワインを生み出し続けている。オーナーで醸造責任者であるアレッシオ・プラネタ氏が「家族の神髄」と語るワインをテイスティングしながら「銀座レカン」シェフソムリエの近藤佑哉氏がその魅力を紐解く。
天恵のテロワールを持つ島は
世界的ワインの銘醸地へ
近藤 近年、ワイン業界では土地の個性が表現された「テロワールワイン」と、独自の品種が魅力の「島ワイン」が注目されています。シチリアは古くからの土着品種が豊かな島ワインの産地で、海も山もあり多様なテロワールを有しています。プラネタは国際品種にも果敢に挑戦し、世界が賞賛するクオリティーワインを生み出していますが、歴史と取り組みについてお聞かせください。
アレッシオ 1970代から80年代にかけ、世界のワインは大きな変革の時を迎えていました。なかでも「パリスの審判」(*)は衝撃的で、フランスなどの伝統的な産地でなくても高品質なワインが生み出せることを世界に知らしめたのです。「シチリアでも世界に誇れる素晴らしいワインが造れる」と動いたのが、イタリアワイン界の巨匠といわれた、私の叔父ディエゴ・プラネタです。85年、シチリア西部のメンフィ地区に国際品種シャルドネを植樹。95年にファーストヴィンテージをリリースし、シチリアは世界が注目する産地への階段を昇り始めました。最初に植えたこのシャルドネは今、樹齢35年余りとなり、これを使った特別なワインが『ディダクス シャルドネ』です。『ディダクスカベルネ・フラン』は、シャルドネと両雄となる赤ワインを、との思いを込め、厳選した畑で栽培したブドウを、メンフィに建設した専用のワイナリーで手掛けています。
* 1976年、パリのワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」を主宰していたスティーヴン・スパリュア氏が開催したブラインド・テイスティング。カリフォルニアワイン対フランスワインで、カベルネ・ソーヴィニヨン部門とシャルドネ部門が競われ、両部門でカリフォルニアが勝利した
『ディダクス シャルドネ 2019年』
『ディダクス カベルネ・フラン 2017年』
“いたずらっ子”と“男爵”
二つの顔を持つ特別なワイン
近藤 シャルドネもカベルネ・フランも、果実やスパイス、ミネラル感が幾重にも層を成し、さらに豊かな酸味が全体を引き締めバランス良く仕上がっています。
アレッシオ 標高が高く、生物多様性に恵まれた美しい森に畑があり、そうしたテロワールがワインに複雑さときれいな酸味をもたらしているのです。
近藤 まさにグラスの中に豊かなテロワールを感じます。ところでブランド名の「ディダクス」とはどういう意味なのでしょうか?
アレッシオ 「ディダクス」とは、ディエゴ氏が幼いころ、男爵でもあった厳しい父親から叱られる時に「いたずらディエゴ」というような意味でこう呼ばれていたそうです(笑)。私たち家族の神髄であるブランドとして、イタリアワイン界の改革者でもあったディエゴへのリスペクトと、彼の可愛らしい一面への愛を込めて、この名を冠しました。
近藤 シャルドネもカベルネ・フランも、香り、味わいに非常に複雑性があり、豊かな果実味が感じられますが、口当たりはとてもスムーズでエレガント。『ディダクス』は、いたずらっ子な面と男爵の気品を兼ね備えた、まさにディエゴさんのようなワインなのですね。ワインだけで十分楽しめますし、イタリアワインではありますが、手の込んだフレンチのご馳走とペアリングしてみたいクオリティーワインだと感動しました。
アレッシオ 近藤さんのレストランでこの『ディダクス』を味わってみたいですね。
近藤 ぜひ! お待ちしております。
プロフィール
問い合わせ先
日欧商事㈱
TEL:0120 - 200105
公式サイト:https://www.jetlc.co.jp/
プラネタ
ブランド紹介ページ:https://www.jetlc.co.jp/wine/brand/planeta/
text by Asako NAKATSUMI
photographs by Kentaro TAKIOKA