11月30日、山梨県産のジビエや、ワイン、日本酒、ビール、ウイスキーといった県産酒を使用した「やまなし美酒美食フルコース」イベントが開かれた。腕を振るったのは、フレンチ「TOYOSHIMA」の豊島雅也氏、中国料理「NIGRAT」(ニグラット)の加藤亮平氏、和食の窪田帆貴氏の三人のシェフ。豊島氏と加藤氏は山梨県内にレストランを構え、窪田氏も山梨での店舗開業に向けて準備中と、山梨にゆかりのあるシェフが集まった。
会場は、今年8月にオープンした「7c|seven cedars winery(セブンシダーズワイナリー)」の屋外テラス。ワイナリー庭の特設キッチンで、山梨産の食材たちが3人のシェフの手によってさらなる“美食”に昇華する様子を間近に見ながら“やまなしペアリング”を楽しんだ。ペアリングランチの前に、醸造チーム統括の鷹野ひろ子さんがワイナリーについて紹介してくれた。
河口湖初のワイナリー「セブンシダーズワイナリー」
来年中にはワイナリー数が100軒を超すと予想される山梨県の中で、河口湖エリアに初めて設立されたワイナリーが「セブンシダーズワイナリー」だ。ワイナリー名はその昔、富士山の噴火を鎮めるために建てられたと言われている「河口浅間神社」に1200年ほど前から立つ「七本の千年杉」に由来する。
河口湖付近の標高は850メートル近く、山梨の中でも冷涼な地域でブドウ栽培には適さないと言われてきた(※1)。しかし、昨今の地球温暖化の影響でマイナス10℃を下回るのは年に数回になり、以前に比べ凍害の心配も和らいでいる。鷹野さんは「夏の気温が上がりすぎてしまう地域もある中、ここではそういったリスクはありません。寒暖差が激しいことからもブドウ栽培に適していると考え、河口湖町でのワイン造りを決心しました」と語った。
※1 欧州系ブドウは、マイナス15℃以下の低温で凍害を受ける危険性がある
これまでいくつかのワイナリーで醸造経験を積んできた鷹野さんは、小さなワイナリーだからこそできる、それぞれのブドウに合わせたワイン造りをすることが夢だったという。
「栽培家や畑、区画、品種の違いといった細かな要素に着目し、ブドウごとに醸造法を微調整します。どんなブドウを使ったのか、なぜこの栽培家と栽培家のブドウをブレンドしたのか——。そんなことを消費者に伝えたいと思っています」と思いを語った。
12月18日には、デラウェアとジーガーレーベ(ドイツ原産の白ブドウ)を使ったスパークリングワインのリリースが控えている。ほかにも、現在瓶内2次発酵中の甲州とシャルドネを来年の冬にデゴルジュマン(※2)して仕上げる予定だ。鷹野さんは「冷涼な気候に合わせて、ピノ・ノワールにも挑戦したい」と今後の意気込みを語った。
※2 瓶内2次発酵の際に生じるオリを瓶口に集め、取り除く作業
山梨の恵みを味わう
見学後のペアリングランチでは、山梨の食材をふんだんに使った料理7品と、これからリリースされるセブンシダーズワイナリーのワインを含む山梨産のお酒が供された。
①鹿肉ジャーキーのおもてなし
猟期が始まってすぐのフレッシュなシカ肉を使用し、完全に乾かさないことでしっとりした食感に仕上げられたジャーキー。合わせたのは『スパークリングワイン』(セブンシダーズワイナリー)。今年収穫したデラウェアとジーガレーベをブレンドし瓶内2次発酵したもので、フレッシュな香りとアフターの旨味が特徴。
②よだれ鶏
ピリリとした辛味と柔らかな鶏肉のまろやかさがマッチする。パクチーが良いアクセントに。一緒に供された『シャルドネ スパークリング 2019年』(セブンシダーズワイナリー)は、熟成由来の旨味が楽しめる。
③富士の介 薪のオイル
山梨のブランド魚“富士の介”(※3)と、薪で香り付けされたオイルを使用。葉野菜や新芽で青々とした清涼感を表現している。『甲州 バレル ファーメンテーション 2019年』(セブンシダーズワイナリー)のまろやかな味わいや、グレープフルーツのさわやかな印象が料理に寄り添う。
※3 キングサーモンとニジマスを交配した山梨県オリジナルの魚
④銀杏の摺流し ナマズの炭火焼き
「ナマズはウナギよりふわっとしていて骨が少なく、皮も薄いのです」と豊島氏。香ばしい香りが漂い、歯応えも十分。透き通るようなきれいな味わいの『純米大吟醸』(笹一)は摺流しの銀杏の風味ととてもよく合った。
⑤スッポン焼売&富士桜ポーク腸詰め
富士川町産の天然のスッポンを使用し、上にはスッポンの卵も乗っている。料理に合わせたのは『大樹海』(井出醸造店)のハイボール。河口湖の酒蔵「井出醸造店」が2020年に初挑戦した“グレーンモルトウイスキー”で、麦芽のみを原料とするモルトウイスキーと、米を主原料としたグレーンウイスキーをブレンドしたものだ。
⑥富士山麓鹿肉縄文焼き
通常は狩りの後に乾燥させるシカ肉を、すぐに真空状態で熟成させて水分保有率を高めることでしっとりとした食感に仕上がっている。今回のイベントではガスを使用できないという環境の下、豊島氏が「縄文時代の料理を想像して作った」というこちらは、シカ肉を朴葉やモミの葉で包み、さらに土で覆って蒸し焼きに。
合わせたのは『プティ・ヴェルド 2019年』(セブンシダーズワイナリー)。赤系果実やスパイスが感じられ、プティ・ヴェルドの野趣ある旨味が料理にとてもマッチした。
⑦鹿肉麻婆豆腐
脂分の少ないシカ肉を使用したマーボー豆腐は、ぎゅっと詰まった旨味が特徴。クラフトビール『スパイスエール』(BRIGHT BLUE BREWING)の香味とよく合い、マーボー豆腐をすくう手が止まらない。
多くの料理に使われたシカ肉は、豊島氏が自ら猟をして捕ったものだ。どれも臭みが全くなく、しっとりした食感が魅力的。山梨の恵みがもたらす新鮮な食材に豊島氏、加藤氏、窪田氏の手腕が加わることで、旨味が凝縮されながらもやさしい味わいに仕上がっていた。
ワインはどれも品種の個性がしっかりと表現されながら、すっと体になじむようで、料理に寄り添う柔らかい味わいが印象的。クリーンな造りからはポテンシャルの高さが感じられ、今後リリースされる新しいアイテムが今から楽しみだ。
山梨という土地に着目し、景色を眺めながら、シェフや造り手の思いに耳を傾ける——。そんな、山梨だからこそ味わえる"美酒美食"を求め、多くの人に山梨に足を運んでほしい。
やまなし美酒美食イベント
山梨県ではこの秋冬、「お酒の数だけ、美味しい旅がある。やまなし」をテーマに、県産酒と県産食材のペアリングを楽しめるイベントを開催。豊富なお酒と食材を前に、自分に合った楽しみ方が見付かるはずだ。
やまなし美食ウィーク 美酒美食巡り
山梨県内において、参加料理店などが「県産酒とのペアリングを含む時季の県産食材を使用した特別メニュー」を創作し提供。
期間:2023年1月中旬~2023年2月上旬予定
やまなし美酒めぐり デジタルスタンプラリー
山梨県内の美味しいお酒と美しい景色が楽しめるデジタルスタンプラリー。対象のワイナリーや酒蔵を巡ってスタンプを貯めると、山梨県内のお酒や豪華賞品をゲットできる。
期間:~2023年1月31日(火) ※開催中
特設サイト:https://www.yamanashi-kankou.jp/stamprally/
関連情報
7c|seven cedars winery(セブンシダーズワイナリー)
山梨県南都留郡富士河口湖町河口513-5
※当面、見学の受け入れを見合わせております
URL:https://www.instagram.com/7cwinery/
ワイン県やまなし https://www.yamanashi-kankou.jp/wine-ken/
Cave de ワイン県やまなし https://www.cavedewineken.com/