ローヌでは知らぬ者はいないというほど確固たる地位を築いている「E.ギガル」。所有畑250ヘクタール年間生産本数は1千万本を数える、名実ともにトップクラスを誇る。しかし、量に対する品質にも妥協を許さない。そのギガルの精神を社長のフィリップ・ギガル氏に聞いた。
 

画像: 今年30 回目の醸造を終えたばかりの3代目社長のフィリップ・ギガル氏。ディジョン大卒でテロワールにはこだわりがある

今年30 回目の醸造を終えたばかりの3代目社長のフィリップ・ギガル氏。ディジョン大卒でテロワールにはこだわりがある

1946年にエティエンヌ・ギガル氏が創業してから、わずか3代で年間1千万本を生産する大メゾンに急成長した「E.ギガル」。ローヌ地方最北の村、アンピュイを拠点に「コート・ロティ」や「エルミタージュ」「コンドリュー」など綺羅星のごときAOCを擁し、「ローヌの盟主」との異名を持つ。また66年のコート・ロティ『ラ・ムーリンヌ』を皮切りに、当時は珍しかった単一畑のアイテムを相次いで発表するなど、テロワールを重視したワイン造りには定評がある。

*HVEからビオへ次世代を見据えた自社畑

テロワールを尊重するギガルは、2019年に北ローヌの自社畑でHVEのレベル3を取得した。そのいきさつを社長のフィリップ・ギガル氏はこう語る。

「祖父が起こし、父が発展させたワイナリーを受け継いで、先人の偉業を日々感じています。では3代目として私がすべきことは何か?私には双子の息子がいます。将来、彼らが4代目となった時、この素晴らしいテロワールを最高の状態で渡したい。『オヤジ、こんなひどい畑を残して』とは絶対に言わせたくないのです」

コート・ロティでは以前から養蜂を手掛けるなど環境に配した栽培を心掛けてきたため、HVE認証の取得はそう難しいことではなかった。

実はギガルの焦点はその先、ビオ栽培への転換にある。「HVEはスタッフの意識を触発するステップに過ぎません。実際、北ローヌに6人配している栽培チーフのうち、数人がビオを始めたいと提案してきました。彼らが担当している畑『エルミタージュ』『サン・ジョゼフ』『クローズ・エルミタージュ』から順次拡大していきます」

*HVE認証(Haute Veleur Environnement =高基準環境農業)は環境保全に特化した認証で、レベル3まである。フランス農業省が管

画像: 「コート・ロティ」の畑。「シャトー・ダンピュイ」は最上の7 区画をブレンド。スパイシーでボディも強いが上品な味わい

「コート・ロティ」の畑。「シャトー・ダンピュイ」は最上の7 区画をブレンド。スパイシーでボディも強いが上品な味わい

毎日150種!社長自ら試飲するハイクオリティーの秘密

ギガルの評価が高いのは、自社畑のみならずネゴシアン(ワイン商)部門でも高品質なワインをコンスタントに送り出していることにある。例えば「ギガルの自信作」とフィリップ氏が胸を張る『コート・デュ・ローヌ』の生産量は年間450~ 500万本!

「ほかの生産者たちに『狂気の沙汰、キミは変人だ』と真顔で言われるんです」とフィリップ氏はおかしそうに笑いながら打ち明けてくれた。

「買い付けする際、大手メゾンは作業効率を優先して最小ロットを100ヘクトリットル以上に設定するのが通常ですが、当社は品質優先で量にはこだわりません。結果的に他社が門前払いするローヌ中の少量生産・高品質のワインがすべて当社に集まるというわけです」

画像1: E.ギガル ローヌの盟主が目指す次のステージ

コート・デュ・ローヌ ブラン
Côtes du Rhône Blanc
品種:ヴィオニエ60%、ルーサンヌ15%、クレーレット8%、マルサンヌ10%、ブールブーラン5%、グルナッシュ・ブラン 2%
ステンレスタンクによって温度調節をしながら低温発酵、熟成。白い花やアプリコット、白桃、アカシアなど、ヴィオニエの特徴がはっきりと出たアロマ。フルーティでボリューム感がある。

コート・デュ・ローヌ ルージュ
Côtes du Rhône Rouge
品種:シラー50%、グルナッシュ40%、ムールヴェードル10%
平均樹齢約35年のブドウを使用。オークの大樽で1年半の熟成。輝きのあるルビー。黒い果実のアロマにスパイシーなニュアンス。タンニンはこなれているが存在感があり、全体的にまろやかな味わい。

コート・デュ・ローヌ ロゼ
Côtes du Rhône Rosé
品種:グルナッシュ70%、サンソー20%、シラー10%
短時間果皮を果汁に漬け込んだ後で引き抜き、ステンレスタンクで温度調節をしながら発酵、熟成。フレッシュで生き生きとした、ラズベリーや赤スグリなど赤い果実のアロマ。フルーティーでまろやか。

小口買い付けが増える分、手間は他社の数倍かかる。フィリップ氏は30年間、毎日欠かさず1時間半かけて150サンプルを試飲している。ギガルの名前で販売されるワインはすべて、フィリップ氏と先代のマルセル氏の試飲を経ているのだ。

「先入観が入らないよう、試飲前は産地も供給量も価格も確認しません。そのおかげで、800~ 850軒の取引生産者がどのブドウ品種を得意としているのか把握しています。『変人』と呼ばれて当然、むしろ光栄ですね(笑)」

画像: 6 畳ほどの小さな試飲室からギガルの全商品が全世界へ旅立つ。79 歳の先代マルセル・ギガル氏も毎日ここでの試飲を欠かさない

6 畳ほどの小さな試飲室からギガルの全商品が全世界へ旅立つ。79 歳の先代マルセル・ギガル氏も毎日ここでの試飲を欠かさない

待望のローヌ南部
名実ともにローヌの盟主へ

ギガルの自社畑はこれまで北ローヌに特化していたが、近年は南ローヌへの進出が目覚ましい。 17年にシャトーヌフ・デュ・パプの「シャトー・ド・ナリス」(75ヘクタール)、今年5月にはタヴェルとリラックを持つ「シャトー・ダケリア」(100ヘクタール)を買収し、自社畑はローヌ全域(合計250ヘクタール)におよぶようになった。

今後は両生産者の独立性を保ちつつも、シャトーヌフ・デュ・パプの伝統品種の保全、AOCタヴェルの復権に力を入れるつもりだ。ナリスはAOC認可の全13種類、色違いを含めると18種類を栽培。フィリップ氏は伝統品種を地球温暖化への切り札と考えている。 一方、タヴェルはここ20年の軽やかなタイプのロゼの流行で、フランス最古のAOCながら押され気味である。

「個人でロゼを飲むなら、ボディのあるタヴェル! 近い将来、生産者組合や意欲的な生産者を巻き込んでタヴェル復権のムーブメントを起こすつもりです」

両AOCのプロジェクトを語るフィリップ氏の目はキラキラとしていて、一企業の社長というよりローヌ全体の将来のビジョンまで見据えたスポークスマンのようだ。ギガルがローヌの盟主と呼ばれるのは、自社ワインに留まらない、こうした懐の広さにあるのかもしれない。

E.ギガルの公式サイト リニューアル!

「E.ギガル」のテロワール、醸造、ワインなど詳しく知ることができるWEBサイトがリニューアルオープンした。季節ごとに、ギガルのワインに合うペアリングを紹介しており、レシピも掲載。知って、試して、ワインがますます楽しくなる情報が満載だ。

画像3: E.ギガル ローヌの盟主が目指す次のステージ

text&photographs by Yukiko KUMATA

問い合わせ先:㈱ラック・コーポレーション TEL. 03 - 3586 - 7501

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