イタリアのワイン専門誌『ガンベロ・ロッソ』で2002年最優秀エノロゴに輝き、瞬く間に時代の寵児となったジュゼッペ・カヴィオラ氏。1991年に立ち上げたカンティーナ(ワイナリー)「カ・ヴィオラ」を運営しながら、ピエモンテとトスカーナを中心に、ヴェネト、マルケ、シチリア等、イタリア全土で20ほどのワインコンサルタントを請け負い、東奔西走している。3月下旬、姪御で広報担当のミケーラ・ヴィヴァルダさんを伴い、4年ぶりに来日し、独自のワイン哲学を語った。
ジュゼッペ・カヴィオラ氏はアルバの醸造学校を卒業後、実践のため2ヘクタールの畑を借り、土着品種でワインを生産。ピエモンテの著名な造り手エリオ・アルターレ氏や地元のレストランに実験的に造ったワインを持ち込み、助言を求めた。彼らから高評価を得たことで本格的なワイン造りに着手。1997年からはコンサルタント業も開始した。出生地モンテルーポ・アルベーゼにブドウ畑12ヘクタールを所有。ドルチェットとバルベラを栽培し、バローロの南西部ノヴェロではネッビオーロ、アルタランガでは白ワインの生産も始めた。
白ブドウは温度差を生かして
白はアルネイスとリースリングに特化し、寒暖差が生じる標高500メートルの場所で栽培している。
『アルネイス 2022年』は今年2月に瓶詰めしたばかりのフレッシュなワインで、アロマはカモミールなどの野草や白系果実。21年が初ヴィンテージなので、今回が2度目のリリース。チッソーネにある2ヘクタールの契約畑のブドウで、樹齢は10年前後、ステンレスタンクで発酵・醸造。
リースリングはブドウをプレスする前に2日間10℃で冷蔵庫保管させ、その後、全房と除梗したブドウに分別し、10時間静置。ブレンドし、4~5日かけて固形物を沈殿させる。ステンレスタンクで発酵させる時の温度は18℃前後。
「低温にすることで酸化を遅らせ、温度を上げることでポリフェノールが抽出できるので複雑味が出る」とカヴィオラ氏。醸造を重ねていくなかで生み出した製法である。
ネッビオーロは“ブドウの梗”を交互活用
収穫年によって比率は異なるが、発酵槽に入れる際に、全房と除梗したブドウを1段ずつ交互に積み重ね、時間をかけて仕込んでいる。カヴィオラ氏は「除梗したものだけで行うより、サンドイッチのように全房を間に挟むことで、発酵が緩やかに進み、ワインによりフィネスとエレガントさをもたらすことができる。全房を使うことでタンニンも抽出できるが、(*注)カルボニック効果に似た働きをするので、アロマをより豊かにしてくれる。それらが重なり合って複雑味が加わり、ワインに個性が出る」とコメント。ピエモンテではカヴィオラ氏だけが取り入れているオリジナル製法である。
最新情報として、昨年バローロの東部セッラルンガ・ダルバのチェッレッタに0.6ヘクタールの畑を購入し、今年植樹したので、6年後には新たなバローロをリリースする予定とのこと。ワイン愛好家、カ・ヴィオラファンは新たなバローロの登場に、乞うご期待!
(*注)ブドウを破砕せず、醸造タンクの中で二酸化炭素とともに発酵させる醸造法で得られる効果。フレッシュな風味や軽やかなタンニンを備えたワインとなる
text & photographs by Fumiko AOKI
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