カリフォルニア州のサンタ・バーバラにある「ザ・ヒルト」と「ホナータ」は、「スクリーミング・イーグル」のオーナー、スタン・クロンキー氏が所有するサンタ・バーバラの姉妹ワイナリー。このたび、醸造家を務めるマット・デニス氏が来日し、西麻布にある「中国菜 エスサワダ」でザ・ヒルトのエステート・ワイン飲み比べと、ホナータの新ヴィンテージの試飲を行った。

画像1: スクリーミングイーグルの姉妹ワイナリー「ザ・ヒルト」「ホナータ」。植物や虫を愛し土壌を探求するマット・デニス氏が造る、畑のテロワールを反映した透明感のあるワイン

植物や虫を愛し、「何よりも栽培家である、ということを大切にしている」というマット氏は、ヴァーモント大学で植物 ・ 土壌学を専攻した生粋の“土壌オタク”。大学卒業後はニュージーランドの「クラギーレンジ」をはじめ、南半球北半球の両方で栽培と醸造の経験をし、畑のフレーバーをワインに表現することの重要さを学んだ。

画像: アメリカの海岸沿いでは、海岸と平行に南北に走る山脈が大半だが、サンタ・バーバラには北米で唯一、海岸から東西に山脈が走る

アメリカの海岸沿いでは、海岸と平行に南北に走る山脈が大半だが、サンタ・バーバラには北米で唯一、海岸から東西に山脈が走る

「サンタ・バーバラはカリフォルニアで最も冷涼な産地の一つです。ユニークな特徴は、海岸沿いで山脈が東西に走っているということ(アメリカの沿岸沿いでは、だいたいの山脈は海岸と並行に南北に走っている)。シャルドネには電流がほとばしるようなフレッシュな酸味が。ピノ・ノワールには複雑味と黒い果実味を持ち、タンニンもしっかりと感じられる。どちらも涼しい気候を好む品種で、このブドウが育つ場所を探していた」というマット氏。

画像: ブドウの房はとても小さい。果汁が1~2滴しか取れないことも

ブドウの房はとても小さい。果汁が1~2滴しか取れないことも

ザ・ヒルトの自社畑は、AVAサンタ・リタ・ヒルズにある。

「サンタ・リタ・ヒルズのシャルドネの特徴は、三つあります。一つ目は青ががかった柑橘類のニュアンス。例えばライムの皮、果汁、皮の内側の白い部分の苦味を感じます。二つ目は、ほとばしる酸味。三つ目は、塩味です。生ガキの殻に残っている汁や岩塩を思わせる塩味です。ピノ・ノワールは、単なるフルーティーさだけでなく、アーシーさやスパイスなニュアンスがある。そして口に含んだら程よいタンニンを感じる」と話す。

画像: このように畑はともに北向きの区画だが、個性が異なる。「ヒルト」のワインに独特な個性と複雑味を与える

このように畑はともに北向きの区画だが、個性が異なる。「ヒルト」のワインに独特な個性と複雑味を与える

サンタ・リタ・ヒルズは複雑に入り組んだAVAだ。自社畑「レイディアン」と「ベントロック」は「近いけれど、かなり個性が違います。レイディアンはより太平洋に近く、シャルドネはレーザービームのようなフレッシュな酸が、ピノ・ノワールは黒い果実、そして土壌のニュアンスが感じられます。一方、ベントロックは、もうちょっと暖かい風が吹き、土壌も石がゴロゴロ。この石が日中温まることにより夜に放熱し、果実を温めます」

画像: 地面には大きな石がゴロゴロ

地面には大きな石がゴロゴロ

だからこそ、ワインになると「レイディアン」は芳醇なアロマを持ち、しっかりとした骨格が特徴。「ベントロック」はミネラリティとパワーを備えたスタイルになる。

「二つの畑をワインにブレンドする作業が一番テンションがあがる」というマット氏。『エステート シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ』はみずみずしい果実味とくっきりとしたほとばしるような酸、そして海の塩を思わせるミネラル感を感じる。生き生きとした印象もありつつ、酸と果実味とミネラル感のバランスが取れた味わいだ。『ベントロック・ヴィンテージ・シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ』は、白桃やアプリコットのようなアロマ。樽のニュアンスもあり、余韻も長い。

『エステート ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ』は赤系ベリーのほか、ローズマリーなどのドライハーブのニュアンスも。ピュアな果実味とフレッシュな酸味、繊細なタンニンな印象的。『ベントロック・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ』は、赤い果実のほかセージのような清涼感も感じる。口に含むとしっかりとビロードのようなタンニンを感じ長期熟成をしても期待できそう、『レイディアン・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ』は、エレガントな余韻。黒系ベリーのほか、黒コショウやクローヴなどのスパイスのニュアンス、果実味の旨味をしっかり感じた。

画像2: スクリーミングイーグルの姉妹ワイナリー「ザ・ヒルト」「ホナータ」。植物や虫を愛し土壌を探求するマット・デニス氏が造る、畑のテロワールを反映した透明感のあるワイン

同じサンタ・バーバラでもホナータはサンタ・イネズ地方のAVAバラード・キャニオン。ザ・ヒルトは、シャルドネ、ピノ・ノワールの単一品種でのワインだが、こちらはブレンドで、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、シラーが主体。土壌は「砂質というか……砂だね」という金色に光る砂質土壌。

画像3: スクリーミングイーグルの姉妹ワイナリー「ザ・ヒルト」「ホナータ」。植物や虫を愛し土壌を探求するマット・デニス氏が造る、畑のテロワールを反映した透明感のあるワイン

土地を探していた時、案内人に「この土壌ではブドウは無理だ。アスパラガスを栽培した方がいい、とまで言われた」という土地にボルドー系品種を植えた。今では、カリフォルニアを代表するスーパープレミアムワインとなっている。

「砂の土壌でブドウの成育がコントロールされ、ブドウ樹も房も小さくなり、凝縮した果実味ができます。日中が暖かいので、カリフォルニアらしい果実味ができ、夜が寒いため酸とフレーバーを湛えるのです」

画像4: スクリーミングイーグルの姉妹ワイナリー「ザ・ヒルト」「ホナータ」。植物や虫を愛し土壌を探求するマット・デニス氏が造る、畑のテロワールを反映した透明感のあるワイン

ワイナリーでは、持続可能な農業と環境に力を注いでいる。鶏や七面鳥、ヤギ、豚、羊などの家畜を野放しにすることで、砂質で痩せている畑と土地全体を肥沃に良い状態に保つことができるという。除草剤や殺虫剤は使わず、環境に有益な昆虫や植物を迎え入れることで、生態系を構築しているそうだ。

画像5: スクリーミングイーグルの姉妹ワイナリー「ザ・ヒルト」「ホナータ」。植物や虫を愛し土壌を探求するマット・デニス氏が造る、畑のテロワールを反映した透明感のあるワイン

『フロール ホワイト・ワイン バラード・キャニオン サンタ・イネズ・ヴァレー』はソーヴィニヨン・ブラン85パーセント、セミヨン5パーセントのボルドースタイルだ。ネクタリンやユズ、口に含むと滑らかな果実味とともにライムやレモンの風味が広がる。『トドス レッド・ワイン  バラード・キャニオン サンタ・イネズ・ヴァレー』は、「ホナータらしさを一つの瓶に詰めた」という1本だ。シラー主体にカベルネ・ソーヴィニヨンやプティ・ヴェルドなど10品種をブレンド。スミレやナツメグ、エスプレッソ、黒コショウ、ブラックチェリーなど複雑な香りが次々と立ち上る。口に含むと充実した果実味とバランスの取れた酸、ソフトなタンニンが広がり、旨味も感じる。

どちらのワイナリーも、カリフォルニアらしい果実味を持ちつつも、酸味がありフレッシュ、骨格がしっかりしている。土壌を探求しているマット氏らしい、一切の妥協も許さずその土地の特徴を表現したワインだった。

問い合わせ先:WINE TO STYLE㈱ TEL.03-5413-8831

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