オーストリアの固有品種グリューナー・ヴェルトリーナー（以下GV）を愛する2人の男レンツ・モーザー氏とマルクス･フーバー氏が、世界トップの白ワインと肩を並べるワイン造りをスタートさせた。
グリューナー･ヴェルトリーナーのグローバルアンバサダー
1950年代にレンツ･モーザー氏の祖父が考案したハイ・カルチャー仕立て（※）がオーストリア全土に広まったことで、白ブドウ品種GVはメジャーになった。しかしながら、ドイツ語圏で9割消費されてしまうので、圏外に出るのはわずか1割程度。そこで、20年来の友であるモーザー氏とオーストリアワイン界の若き精鋭マルクス・フーバー氏はタッグを組み、「ニューチャプター」の名のもとに、オーストリアワインの新たな章、GVの新しい章、2人にとっての新たな章を具現化するための活動を開始した。
※従来よりブドウ畑の列を広げ、樹高にすることで、樹勢が強く少収量気味だったGVの栽培を向上させた。特別な機械を使わずに、労働力とそれに伴う生産コストを削減できた
レンツ･モーザー氏（左）とマルクス・フーバー氏
2人が構築したグリューナーの要はブレンド
フーバー氏が所有する最高の畑はオーストリア唯一の石灰質土壌で、その中の最高区画のGVをブレンドすることでワインに厚みを持たせている。醸造面において、初ヴィンテージの2020年はステンレスタンク＆500リットルのブルゴーニュ樽と、GVと相性の良いアカシアの大樽を併用、1パーセントだけリースリングをブレンドした。
2番目のヴィンテージ2021年は10パーセントだけフランス産の新樽225リットルを使い、ワインにスパイス的な要素を与えた。またGV100パーセントが主流のオーストリアにあって、5品種のブドウを各1パーセントブレンドして独自性を持たせた。
Tomorrow’s Gruner Today
世界のトップマーケットとして、英国、ドイツ、米国、中国、日本を挙げていたモーザー氏。2020年ヴィンテージを発売して2年3カ月経過した今、ニューチャプターは世界35カ国に輸出されているが、近々60カ国に拡大させたいと言及。
彼らの標語 “Tomorrow’s Gruner Today”は「明日のグリューナーのスタイルを今日飲んでほしい」との意味だが、その心は“未来を読み込むこと”である。
世界中のワイン愛好家に新しいスタイルのグリューナー・ヴェルトリーナーの存在を知らしめ、世界トップの白ワインと比肩するワインとして『ニューチャプター』が位置付けされることを目指すモーザー氏とフーバー氏、今後の動きに注目していきたい。
『ニューチャプター2021年』
『ニューチャプター2021年』
今春リリースされた2021年ヴィンテージはグリューナー･ヴェルトリーナー95％、ソーヴィニヨン･ブラン、シャルドネ、リースリング、ピノ・グリージョ、ムスカテル各1％をブレンド。
香りは白い花やアカシア、繊細なハーブ、柑橘系果実の内果皮のようなビター感、黄桃やアプリコット似の果実感ときれいなミネラル。グラス内の温度変化で複雑味が増し、重厚さを伴いながら広がる余韻。
「直近20年で最高のブドウ。フレッシュさと熟成感が完璧に融合」とフーバー氏。
希望小売価格：5500円(税込)
問い合わせ先：㈱ロシナンテ TEL.03-3423-4552
text by Fumiko AOKI
