ラインガウ・リースリングの原点

ドイツ・ラインガウ地域にあるワイナリー「シュロス・ヨハニスベルク」。所有する畑の起源は817年にまでさかのぼる。皇帝ルートヴィヒ1世が所有し、また1816年にはオーストリア宰相メッテルニヒが所有者となったという記録が残されている。
銘醸地ラインガウを象徴するこのワイナリーは1720年、全畑にリースリングを植えて以来、今日までリースリングだけを栽培している。
現在の自社畑は50ヘクタール。すべて南向きで、45度の傾斜度(標高114~182メートル)にあり、日当たりの良い絶好の地だ。

シュペトレーゼ(遅摘み)の起源

シュロス・ヨハニスベルクは1775年に「シュペトレーゼ」(遅摘み)を発見した。この年は収穫が大幅に遅れたためにブドウが熟れ過ぎて腐り始めるものもあったというが、これが貴腐菌の知識を得る発端となった。

画像: シュペトレーゼ(遅摘み)の起源
画像: コメンテーターの野坂昭彦氏は今年3月に「シュロス・ヨハニスベルク」を訪問した

コメンテーターの野坂昭彦氏は今年3月に「シュロス・ヨハニスベルク」を訪問した

熟成を知る

近年はサステイナブルやSDGsへの取り組み、温暖化対策なども新しい課題として取り組んでいるシュロス・ヨハニスベルク。この度、マネジング・ディレクターのステファン・ドクトール氏による垂直試飲セミナーが開催された。
ドクトール氏は現地からオンラインでつながり、東京の会場ではソムリエの野坂昭彦氏(マンダリン オリエンタル 東京 ディレクター オブ ワイン)がコメンテーターを務めた。

画像: 左から、辛口の『シルバーラック 2020年』、甘口の『グリューンラック シュペトレーゼ2021年』『同2019年』『同2015年』『同2004年』

左から、辛口の『シルバーラック 2020年』、甘口の『グリューンラック シュペトレーゼ2021年』『同2019年』『同2015年』『同2004年』

垂直試飲したのは『グリューンラック シュペトレーゼ』シリーズ。そして辛口の『シルバーラック』が比較のために準備された。

『シルバーラック 2020年』は南西エリアの畑。酸が高く、かつよく熟しているブドウを選別して収穫する。発酵はステンレスタンク40パーセントと大樽60パーセント。フレッシュ感と複雑なアロマが生まれる。
「オレンジやレモンの香りに、頁岩(へんがん)土壌からくる火薬のような香り。味わいは力強く芳醇で、引き締まった酸があり、苦味を伴う余韻にまで続きます」と野坂氏。洗練されたガストロノミックな味わいだ。

次に『グリューンラック シュペトレーゼ』2021年、2019年、2015年、2004年を試飲。

2021年/冷涼で雨の多い年。清らかな味わいに

冷涼だった2021年は雨も多く、そのため土中のミネラルがブドウ樹によく吸収されたという。
『シルバーラック』より標高の低い場所にあり、そのため水分が集まりやすくブドウの成熟が促される。発酵はステンレスタンクのみ。清らかでみずみずしい味わいにつながっている。
「生き生きとした酸と心地いい甘味のバランスが良く、柔和で上品な味わいです。白アスパラガスのオランデーズソース(バターや卵黄などを使った濃度のあるソース)、和食なら魚の柚庵焼が合いそうです」と野坂氏。

2019年/暑く雨が少なく、バランスに優れた年

2019年は暑く雨も少なかった年。健康的なブドウが育つ条件がそろい、甘味、酸味、ミネラルのバランスに優れ、果実の凝縮感が表現された。
「熟した黄色い果実、菩提樹の花の香りが特徴的。ジューシーな飲み心地で、余韻に現れる苦味がアクセントになっています。エビなど甲殻類の料理と合うでしょう。スパイシーなアジアンフードもいい。温度は8℃くらいで、小ぶりなグラスで飲むとフレッシュな酸味が生かされます」(野坂氏)

2015年/酷暑で乾燥した年。ワインは濃厚に

2015年は例外的に暑く乾燥した年で、そのため濃厚なアロマがワインに備わった。同時に酸もしっかり残り、ミネラル感とともに硬質な印象を与えている。苦味と甘味もしっかりと感じられ、充実した要素がバランスよくまとまり、今後もまだ熟成が続きそうだ。
「たっぷりとしたテクスチャーで、香りは複雑。肉料理に合わせたいですね。鴨のオレンジソースなどにも合う力強さを持っています」と野坂氏。

2004年/温暖化の影響がまだなく涼しい年。美しく熟成

2004年は涼しく雨が少なかったヴィンテージ。ゴールデンイエローの深い色味を帯び、鉱物やハチミツの香り、黄色い果実やスパイスなど多くの香りの要素が重層的に表れる。口当たりは滑らかでトロリとした飲み心地。酸と苦味がしっかり溶け込み、骨格を備えた見事な熟成を遂げている。20年の熟成を経た今もなお酸とミネラルが際立ち、生命力溢れる味わいだ。肉料理と合わせるのも良さそうだが、まずはワインだけでゆっくり堪能したい。

ワインの問い合わせ先:国分グループ本社㈱ TEL.03-3276-4125

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