1882年に創業した歴史あるワイナリー「シャトー・モンテレーナ」。有名なエピソードは1976年に開催された「パリテイスティング」だろう。「アカデミー・デュ・ヴァン」創設者のスティーヴン・スパリュア氏がパリで主催した、アメリカとフランスのワインをブラインドで比較テイスティングしたこのイベントで、シャトー・モンテレーナの『シャルドネ 1973年』が白ワイン部門で1位となった。フランスワインを抜いてカリフォルニアのワインがトップに輝いたことは、全世界を驚かせた。
「われわれのワイン、そしてカリフォルニアのテロワールが評価されたのです」と、エスティエトディレクターのジョージ・ブランケンシー氏は語る。
140年以上の歴史を持つ、カリフォルニア・ワインの黎明期を支えたシャトー・モンテレーナだが、今日までの所有者はわずか3ファミリーだ。
最初のオーナーはタブス家で、カリフォルニア州の政治家であったアルフレッド・タブスが創設し、6年かけて石造りのシャトーを建設した。
次のオーナーが現れたのは1963年。ウイング・フランク家が老後を過ごすための家として購入したが、広大な敷地を持て余し68年に売却。
3番目のオーナーとなり、今につながっているのがバレット家だ。72年、ジム・バレット氏の「ボルドーのようなカベルネ・ソーヴィニヨンを造りたい」との情熱から始まった。
現在はオーナーのボー氏を中心に、チーフワインメーカーのマシュー・クラフトン氏、ヴィンヤードマネジャーのキャメロン・ウオルフ氏が指揮を執る。
2011年には新しいセラーが完成した。ネットワークコントロールされた醸造システムなどを整えてワイン造りの効率化を目指し、また耐震構造を強化するなど、未来のワイン造りへの足掛かりを固めている。
またワイナリーではサステイナブルなワイン造りを推し進め、ソーラーエネルギーを活用したり、ナイトハーベストを実践したりしている。「ナパ・グリーンプログラム」の認証も獲得した。
ブランケンシー氏が行ったセミナーでは、シャルドネとジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨンを試飲し、シャトー・モンテレーナの個性を体感した。
『シャルドネ・ナパ・ヴァレー 2021年』
1976年の「パリテイスティング」で1位に輝いたシャルドネの現在の姿。
「当時からクラシックなブルゴーニュ・シャルドネのスタイルを、ずっと貫いています」とブランケンシー氏。トロピカルフルーツの香りとさわやかな樽の香りが重なり、フレッシュ感と重厚感が共存する味わいだ。最後にミネラルを感じる旨味が残る。
『ジンファンデル・エステート・ナパ・ヴァレー 2019年』
カリストガで栽培されているブドウから造る。
「抑制が効いていて、ソフトな飲み口でエレガント」とブランケンシー氏が言うように、よく熟した赤い果実の風味とフレッシュな味わい、アニスなどのスパイスがさわやかさで食事を呼ぶワインだ。スッキリとしていて、次の1杯が飲みたくなる。
『カベルネ・ソーヴィニヨン・ナパ・ヴァレー 2019年』
1990年がファーストヴィンテージ。モダンスタイルで明るい果実感がうれしい。旨味や、旨味から生まれる甘やかさが心地いい。若いうちから楽しめる。
『カベルネ・ソーヴィニヨン・エステート・ナパ・ヴァレー』 2019年と2008年
フラッグシップのカベルネ・ソーヴィニヨンで、1978年がファーストヴィンテージ。
2019年は安定した気候で豊作だったヴィンテージ。落ち着きのある果実感、旨味につながるミネラル感、長い余韻と、スケールが大きく複雑な個性を持つワインだ。
2008年は熱波に見舞われるなど厳しいヴィンテージで、収穫量は19年に比べると半減した。しかしワインには深みが現れ、今もまだ生き生きとしている。レーズンやヴァニラ、熟した果実、旨味があり、酸味がキリッとしてさわやかな印象もある。
テイスティング全体を通して感じるのは、深遠で複雑な風味と落ち着いた味わいだ。しかし飲み手に難しく考えさせることがないさりげなさは、さすが。ワイナリーの歴史やワインの熟成に思いを馳せて、ゆっくりと楽しみたい。
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