コルビエール生産者組合は、パリのガストロノミー・コンセプトレストラン「ノーム(Nhome)」にメディア関係者を招き、AOC創設40周年記念昼食会を開催した。コルビエール地域の葡萄栽培は、紀元前2世紀にギリシャ商人が苗木を持ち込み、紀元前後にローマ帝国支配下で本格化した。一時期衰退したが、中世には修道院が葡萄栽培を再建し、ベネディクト会、シトー会の管轄下で大きく発展した。しかし十字軍の影響で再び打撃を受け、17〜18世紀にかけて南仏運河開通などのインフラ整備とともに産業として復興した。近代的な組織整備が進んだのは20世紀に入ってからで、1908年に産地表示管理組合が設立され、1923年にコルビエールの産地の境界が確定した。1951年にVDQS(上質優良地区ワイン)の認定を受け、1985年にAOCへ昇格した。2005年にはコルビエール内に唯一の村名AOCであるコルビエール=ブートナックが誕生している。

画像: 昼食会で挨拶する「ドメーヌ・ド・ロックネガード」のオーナー、アレクシ・ゴダン氏

昼食会で挨拶する「ドメーヌ・ド・ロックネガード」のオーナー、アレクシ・ゴダン氏

コルビエールでは新しい世代の動きが活発化している。アレクシ・ゴダン氏もその一人で、フランス領ギアナで建築関連のエンジニアとして働いた後、ワイン造りへの強い情熱から、2021年にパートナーと共にフランス本土へ戻り、コルビエールにドメーヌを設立した。現在7ヘクタールの畑を管理。新世代を象徴する人物で、アグロフォレストリー(森林農法)の導入や、ブドウ畑での羊の放牧など、自然の生態系と完全に調和した「環境保全型農業(アグロエコロジー)」への徹底した取り組みで知られている。このほど、ワイン生産のドメーヌとして初めて、フランス農業省から「イノベーション賞」を授与された。

コルビエールの総生産面積は8,300ha(2023年)、総生産量は約207,000hl(約2700万本)。ラングドック最大のAOCであり、フランス国内でも第4位の面積を誇る(ちなみに、1位はAOCボルドー、2位、AOCコート・デュ・ローヌ、3位AOCボルドー・シュペリユール)。生産者数は1,075名で、244の独立ドメーヌと20の協同組合に分かれる。カテゴリー構成は赤80%、ロゼ15%、白5%であり、赤ワインへの依存度が依然として高い。

産地はカルカソンヌ東部から地中海沿岸まで、一辺約60kmの地域に広がる。地質は多様で、第一紀の花崗岩・片岩から第四紀の砂礫質テラス、さらに石灰岩、泥灰岩、砂岩など各種地層が混在する。この地質的多様性は各地区のワインスタイルに直接影響しており、単一の「コルビエール」スタイルを定義しにくい要因でもある。現在、生産者組合はINAOに対し、5つの補足的地理呼称の認定を申請中。

画像1: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催
地区名主要土壌・地形ワインスタイルの傾向
レジニャンの段丘第四紀砂礫質粘土石灰質テラスシラー中心。複雑でスパイシー、長期熟成タイプ
アラリック産地石灰岩・泥炭岩、大陸と地中海の複合気候グルナッシュ主体。比較的フレッシュ、バランス重視
ラグラスのテロワール粘土石灰質、地中海性の遅熟地区シラー主体。ベルベットのようなテクスチャー
コルビエール=デュルヴァン石灰岩と片岩が混在、山地に囲まれた地区カリニャン主体。構造感と地域性が出やすい
ポール・マオン海岸部、潟湖の影響を受ける微気候塩気を帯びたミネラル感、やや軽快なスタイル
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赤・ロゼ用品種:カリニャン・ノワールはアペラシオンを代表する品種であり、生産者によっては主力品種として位置づけられている。低収量で凝縮感のある果実をもたらす一方、タンニンの粗さをコントロールするためマセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)が広く採用されてきた。近年は気候変動への適応力(耐乾性)の面でも再評価が進んでいる。シラーはカリニャンを補完する主要品種として各地区に定着している。グルナッシュ・ノワールとムルヴェードルは補助品種として使用されることが多い。ロゼにはグルナッシュ・グリが用いられる場合があり、産地独自の特徴として言及されることが多い。

白用品種:白ワインの生産比率は5%にとどまり限定的である。グルナッシュ・ブラン、ルーサンヌ、マルサンヌ、ヴェルマンティーノ、ブールブラン、マカブなどが主要品種として使用される。昼食会では白ワインの比重が高かったが、これは産地の白ワインへの注目度向上を意図した選択と思われる。

持続可能農業への対応:アペラシオン全体の75%がなんらかの持続可能農業認証の対象となっている(内訳:有機農業AB認証1,900ha、転換中700ha、ビオディナミ認証360ha、HVE認証農場39軒・2,600ha、Terra Vitisほか)。ラングドック・ルシヨン全体がフランス最大の有機葡萄産地という位置づけにあり、コルビエールもこの地域動向に沿って転換が進んでいる。個別の取り組みとしては、葡萄畑での放牧、畝間緑化、有益鳥類の保護などが行われている。

画像: 記念昼食会で挨拶するオリヴィエ・ヴェルダル氏。6年間コルビエールの生産組合会長を務め、このほどジュリアン・サンドルー新会長にバトンタッチした。

記念昼食会で挨拶するオリヴィエ・ヴェルダル氏。6年間コルビエールの生産組合会長を務め、このほどジュリアン・サンドルー新会長にバトンタッチした。

コルビエールの生産組合を代表して記念昼食会に出席したオリヴィエ・ヴェルダル氏は45haのブドウ畑を所有する栽培家の4代目。
「ここ数年、フランス国内のみならず世界的なワイン消費量の減少により、ラングドック地方を含むワイン業界全体が厳しい危機に直面している。我々のAOC コルビエールの栽培面積も10年前の11,000haから現在は8,000〜9,000haに減少した。この背景として、栽培家の高齢化による後継者不足や、自家ワインボトルを販売せず、安価でネゴシアンにバルク売りして採算が取れず廃業する人が多く出たことが挙げられる。この状況を打破するため、コルビエールは明確な方向転換を図っている。生産量を意図的に絞り、より品質の高いワインを造り、販売方法を改善しなければならない。そして、バルク販売への依存から脱却し、付加価値の高いボトル販売への移行が不可欠だ。また、現代の消費者はボトルの背景にあるストーリーや、誰がどのようにつくったのかを知りたがっている。そのため、大量生産のワインではなく、造り手の顔が見える「職人(アルティザン)」としてのこだわりを伝える『ニッチ市場』を重視した販売が必要だ。同時に、若者など新しい消費者のニーズに合わせ、よりフレッシュで飲みやすいスタイルのワイン造りにも取り組まないといけない」

画像: 新会長のジュリアン・サンドルー氏

新会長のジュリアン・サンドルー氏

2026年1月、アペラシオンの会長がオリヴィエ・ヴェルダル氏からジュリアン・サンドルー氏(42歳)に代わった。サンドルー氏はレジニャン=コルビエールの協同組合「ル・シェ・デ・ヴィニュロン」会長を務めており、コルビエール組合の副会長(2023〜2026年)および技術委員会委員長(2020年〜)を歴任。オード農業会議所でのキャリアを含む技術・行政分野での経験を持つ。新体制が掲げる主要課題として、干ばつへの対応を含む生産基準書の改訂。プレスおよびバイヤーとのコミュニケーション強化とデジタル発信の拡充。ワイン観光の推進など、地域の認知度向上と消費者との直接接点拡大などを挙げている。

試飲ボトルの中でも興味深かったワイン

画像2: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催

CHÂTEAU HAUT-GLÉON
シャトー・オ・グレオン 16.5/20
●2023年産、小売価格20 €
●生産区域とテロワール:コルビエール・デュルバン、第四紀の丸い河原石の段丘
●ブレンド:ルーサンヌ、ヴェルマンティーノ、グルナッシュ・ブラン
●醸造と熟成:開放型プレス機による空圧式圧搾。低温での清澄。ルーサンヌは新樽で6ヶ月間の発酵・熟成、ヴェルマンティーノとグルナッシュはステンレスタンクで発酵、熟成。
厚みがあり、ミネラル、充実した味わいが続く。

画像3: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催

CHÂTEAU MAYLANDIE - Exquises Esquisses
シャトー・メランディ エクスキス・エスキス 16.0/20
●2023年産、小売価格15 €
●生産区域とテロワール:小石が混じる粘土石灰質の丘陵地
●ブレンド:グルナッシュ・ブラン 80%、ブールブラン 20%
●醸造と熟成:プレス後、6度のタンク内で2日間清澄。その後、温度が14度に上昇した時点で別のタンクに移し発酵開始。バリックを使い、微細な澱と共に9カ月間熟成。
わずかに樽のニュアンスがあるが、ピュアーで、丸みの ある味わいが心地よい。

画像4: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催

DOMAINE DE ROQUENÉGADE - Peyredon
ドメーヌ・ド・ロックネガド ペイルドン16.0/20
●2022年産、小売価格14 €
●生産区域とテロワール:アラリック山の南向きの斜面および石灰質土壌の丘陵地
●ブレンド:ルーサンヌ 60%、グルナッシュ・ブラン 40%
●醸造と熟成:フレッシュさを保つために午前中にプレス。6度で24時間の清澄。単一品種ごとに18〜20度の温度で15日間の発酵。1回の澱引きを行い、ステンレスタンクで6ヶ月熟成。
辛口でピュアー、心地よいアロマ。

画像5: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催

DOMAINE RÉGAZEL - Petites Mains
ドメーヌ・レガゼル プティト・マン15.5/20
●2024年産、小売価格8.75 €
●生産区域とテロワール:アラリック山の麓に位置する粘土石灰質のテラス
●ブレンド:グルナッシュ・ブラン 45%、マカブベウ 45%、ルーサンヌ 10%
●醸造と熟成:8時間のスキンコンタクト(果皮浸漬)後にプレス。15度で3週間の発酵。微細な澱と共に4ヶ月間熟成。
辛口で、フィニッシュが心地よい。

画像6: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催

CHÂTEAU DE SAINT EUTROPE - Maximus
シャトー・ド・サン・ユトロップ  マクシミュス16.0/20
●2023年産、小売価格12 €
●生産区域とテロワール:ラグラス地区のテロワール - 砂利質および粘土石灰質の段丘
●ブレンド:シラー、グルナッシュ、ムルヴェードル、カリニャン
●醸造と熟成:除梗後、伝統的な方法で醸造。温度管理を行いながら、毎日ルモンタージュを実施。各品種は別々に醸造され、冬の澱引き後にブレンドされる。
はっきりした心地よい果実味、フィニッシュに素晴らしい酸が感じられる。

画像7: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催

CELLIER D'ORFÉE - L'Envol
セリエ・ドルフェ ランヴォル 16.0/20
●2023年産、小売価格11 €
●生産区域とテロワール:レジニャンの段丘
●ブレンド:グルナッシュ 30%、カリニャン 25%、ムルヴェードル 25%、サンソー 20%
●醸造と熟成:フレッシュさと芳醇な味わいと通常より色濃く凝縮した果汁を得るためにマセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)で醸造。
エレガントでフレッシュ。伝統的な南のワインの味わいが感じられる。

画像8: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催

CELLIER DES DEMOISELLES - La Bicyclette
セリエ・デ・ドゥモワゼル ラ・ビシクレット 15.0/20
●2022年産、小売価格8.90 €
●生産区域とテロワール:ラグラス地区のの粘土石灰質土壌
●ブレンド:シラー 60%、グルナッシュ・ノワール 40%
●醸造と熟成:過熟状態で機械収穫、除梗、マロラクティック発酵。タンク熟成。
伝統的な造りでやや重いが、熟したジャムのニュアンスが心地よい。

画像9: ラングドックのAOCコルビエール パリでアペラシオン創設40周年記念昼食会を開催

CASTELMAURE - N°3
カステモール No 3  15.5/20
●2022年産、小売価格23.60 €
●生産区域とテロワール:コルビエール・デュルバン地区の 片岩および石灰質土壌
●ブレンド:シラー 73%、グルナッシュ 26%、カリニャン 1%
●醸造と熟成:シラーは全房(除梗せず)でタンクに入れ、低温で発酵前マセラシオンを行った後、フルーティーなアロマを引き出すために低温でマセラシオン・カルボニック醸造を行う。25%の新樽を含むフランス産樽で12カ月間熟成。
少しスパイシーで、南仏ワインの力強い個性が感じられる。

画像: 「ノーム」はパリ1区にある一つ星レストラン。大きなテーブルをゲスト全員で囲み、マタン・ザケン・シェフのクリエイティブな「おまかせ」メニューを楽しむというスタイルが話題になっている

「ノーム」はパリ1区にある一つ星レストラン。大きなテーブルをゲスト全員で囲み、マタン・ザケン・シェフのクリエイティブな「おまかせ」メニューを楽しむというスタイルが話題になっている

画像: ザケン氏は、「フレンチー」や「ジョルジュ・サンク」で研鑽を積み、パリのファッション業界のプライベートシェフとして活躍した人物。 彼の料理は、日本や中東の影響を受けたもので、ビンチョウ炭での調理や発酵技術、塩漬けなどの技法を駆使する。さらに興味深いのは、ザケン氏がワインのペアリングやレシピ開発に人工知能(Chat GPTなどのAI)を積極的に活用していることで、「AIは人間が思いつかないような意外な食材の組み合わせを提示してくれる」と述べている

ザケン氏は、「フレンチー」や「ジョルジュ・サンク」で研鑽を積み、パリのファッション業界のプライベートシェフとして活躍した人物。 彼の料理は、日本や中東の影響を受けたもので、ビンチョウ炭での調理や発酵技術、塩漬けなどの技法を駆使する。さらに興味深いのは、ザケン氏がワインのペアリングやレシピ開発に人工知能(Chat GPTなどのAI)を積極的に活用していることで、「AIは人間が思いつかないような意外な食材の組み合わせを提示してくれる」と述べている

画像1: 試飲ボトルの中でも興味深かったワイン
画像2: 試飲ボトルの中でも興味深かったワイン
画像3: 試飲ボトルの中でも興味深かったワイン

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