世界遺産として知られるイタリア北東部に広がる山岳地帯「ドロミティ」は、鋭い岩峰や壮大な渓谷が織りなすイタリア有数の景勝地として知られている。また、「アマティ」や「ストラディヴァリウス」といったヴァイオリンの名器を制作した名工たちが、ドロミティ一帯で産出されるスプルースやメイプルを好んで使ったと伝えられている。そんなイタリア芸術を支えてきた地にブルワリーを構えるのが、ビッラ・カステッロ社だ。同ブルワリーがリリースする、テロワールを色濃く反映したクラフトビール「ドロミティ」が日本にやってきた。

 そのラインナップは「ドロミティ・ピルスナー」「ドロミティ・ロッサ」「ドロミティ・ドッピオ・モルト」の3銘柄。輸入元のモンテ物産では、それぞれのビアスタイルをピルスナー、ボック、ドッペルボックとアナウンスしている。

 ボックはドイツ発祥の濃色ラガーで、カラメル麦芽の甘みと旨みが特徴。アルコール度数はやや高めで、まろやかな飲み口が魅力だ。ドッペルボックはドイツ語で「二倍」「二重」を意味するドッペル(英語の“ダブル”に相当)が冠される通り、ボックのストロングバージョン。より重厚なモルトの風味と、ハイアルコールゆえの長い余韻が楽しめる――というのが教科書的なスタイルガイドである。

 しかし、このドロミティの「ロッサ」と「ドッピオ・モルト」は少々異なる。というのも、ドッピオ・モルトの液色は別掲の写真の通り、明るい黄金色。また、正式には「ペールドッペルボック」と定義されている。これは単にモルトの使用量を増やしているだけでなく、配合自体も変えていることを示している。つまり、ベース設計そのものが異なるということだ。関係性としては、ボックとドッペルボックというよりも、ベルギービールにおける「ウェストマール ダブル/トリプル」に近いと言えるだろう。

 いずれにしても、ドロミティのある東アルプスはドイツやオーストリアとの国境地帯に位置する。そのため、歴史的に中央ヨーロッパの醸造文化の影響が色濃い地域であることも関係していると思われる。多くのクラフトブルワリーが醸造期間の短さからエールへとシフトしがちであるが、あえてラガー三兄弟で定番を構成する姿勢には、確かな気骨がうかがえる。

 

地元とのつながりを大切にするブルワリー

画像: 地元とのつながりを大切にするブルワリー

 「ドロミティ」で使用する大麦は、ほとんどがドロミティ地方で栽培されたものだ。これは地域農業のサプライチェーンとしての機能も果たしている。ホップについても、イタリア国内から厳選し、ビアスタイルごとに吟味して使用している。
 
 原料調達だけでなく、ドロミティで開催されるイベントへの支援も積極的に行っている。こうした取り組みは、地域との結びつきを重視するビッラ・カステッロ社の姿勢の表れと言えるだろう。

 

ブルワリーのアイデンティティと、三者三様の個性の競演

画像: ブルワリーのアイデンティティと、三者三様の個性の競演

最後に、3本のテイスティングインプレッションをお届けしよう。

■ドロミティ・ピルスナー(写真中央)

 グラスに注ぐと、きめ細かな純白の泡が立ち上がる。淡いゴールドの液色とのコントラストが美しい。ドロミティのアナウンスではこのピルスナーはドライホップを採用するが、そのフローラルなアロマは華美ではなく、とても上品。特筆すべきはベースとなっている穏やかな苦味に、エッジの効いた苦味がシャープな輪郭を描くこと。この苦味の表現は実に新鮮で、ちょっとクセになりそう。ピルスナーの新潮流として、ぜひお試しいただきたい1本だ。

■ドロミティ・ロッサ(写真左)
 
外観は深みのある赤褐色。泡はクリーミー。カラメル麦芽の香ばしいフレーバーと、ドライフルーツやベリーを思わせる芳醇なアロマが重なり、どこか温かみのある印象をもたらす。口当たりは滑らかで、ミディアムからややフル寄りのボディ。カラメルの甘みはしっかりと感じられるが、けっして重くはならず、ほのかなロースト感が全体を引き締める。単なる「濃色ラガー」にとどまらない、香りのハーモニーが楽しめる。

■ドロミティ・ドッピオ・モルト(写真右)

 明るく輝く黄金色。ゆえに、ドロミティではビアスタイルを「Doppel Bock Chiara(明るいドッペルボック)」と定義し、一般的なドッペルボックのイメージを覆す。まず感じるのはモルトの凝縮感。しかし重厚というよりは、解像度の高い緻密さというニュアンス。そこへフローラル、さらにハーバルなホップのアロマが輪郭を描く。ハイアルコールビールならではの、ストラクチャーの強さを感じる。しかし、口に含んだ際のアタックは思いのほか穏やかだ。ハイアルコールビールにありがちな荒々しさは微塵もない。温度が上がるにつれて、甘みはより丸みを帯び、優美なアロマが前面に展開する。この時間の経過とともに変化する表情を、急がず、ゆっくりと堪能したい。

 三者三様の個性が光るが、いずれもドロミティの豊かな水源を思わせる清らかなニュアンスがアイデンティティとなっている。テロワールを大切にしたイタリアンクラフトの上陸を、心から歓迎したい。

 

画像: 「ビール・ロッサ」(左)と「ビール・ドッピオ・モルト」の液色の違い。一般的なボック/ドッペルボックの関係では、ドッペルボックのほうが濃い液色となる。事実、「ワールドビアカップ」(WBC)や「グレート・アメリカン・ビア・フェスティバル」(GABF)を主催するブルワーズアソシエーション(本部コロラド)の「スタイルガイドライン」にある「German-Style Doppelbock」の定義は「Color: Copper to dark brown(液色は銅色から濃い茶色)とある

「ビール・ロッサ」(左)と「ビール・ドッピオ・モルト」の液色の違い。一般的なボック/ドッペルボックの関係では、ドッペルボックのほうが濃い液色となる。事実、「ワールドビアカップ」(WBC)や「グレート・アメリカン・ビア・フェスティバル」(GABF)を主催するブルワーズアソシエーション(本部コロラド)の「スタイルガイドライン」にある「German-Style Doppelbock」の定義は「Color: Copper to dark brown(液色は銅色から濃い茶色)とある

画像: レギュラーシリーズの「カステッロ」。左からアルコール度数を抑えて軽やかな飲み心地に仕上げた「カステッロ・ロー」(alc3.5%)、焙煎モルトの香ばしさと豊かなボディが魅力の「カステッロ・ロッサ」(alc.6.5%)そしてフレッシュなホップのアロマが爽快に香る「カステッロ・ラガー」(alc.5.0%)

レギュラーシリーズの「カステッロ」。左からアルコール度数を抑えて軽やかな飲み心地に仕上げた「カステッロ・ロー」(alc3.5%)、焙煎モルトの香ばしさと豊かなボディが魅力の「カステッロ・ロッサ」(alc.6.5%)そしてフレッシュなホップのアロマが爽快に香る「カステッロ・ラガー」(alc.5.0%)

画像: ブルワリーには「ビッレリア・ペダヴェーナ」(Birreria Pedavena)というイタリア最大級のビアホールを併設し、ドロミティの観光名所にもなっている

ブルワリーには「ビッレリア・ペダヴェーナ」(Birreria Pedavena)というイタリア最大級のビアホールを併設し、ドロミティの観光名所にもなっている

画像: ビッラ・カステッロ社は1997年の設立だが、仕込み窯(350ヘクトリットル)は1897年からこの地でビール造りを行っていたブルワリーのものを受け継いでいる。 発酵/貯酒は700~2,000ヘクトリットルのタンクを適宜使い分ける

ビッラ・カステッロ社は1997年の設立だが、仕込み窯(350ヘクトリットル)は1897年からこの地でビール造りを行っていたブルワリーのものを受け継いでいる。 発酵/貯酒は700~2,000ヘクトリットルのタンクを適宜使い分ける

画像: ドロミティの渓谷を象徴するミス湖。河川侵食による渓谷地形を背景に持つ国立公園内にある

ドロミティの渓谷を象徴するミス湖。河川侵食による渓谷地形を背景に持つ国立公園内にある

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