「割烹 小田島」の小田島大祐氏が教える、和食とワインのペアリングのコツ。今回が最終回!
三つ目のヒントを、家庭料理でもよく登場する煮物にフォーカスしてご紹介!
その参 ~ワインに共通する柑橘やスパイスを上手に使うべし~
和食の定番と言えば、醤油とみりんや砂糖を合わせた甘辛味だ。
この甘辛味には、シラーやグルナッシュなどの南仏やスペイン、チリ、アルゼンチンの黒系果実のワインがぴったりはまると小田島氏は言う。
煮物の素朴な味わいがタンニンの強さを受け止め、凝縮した甘い果実のニュアンスが醤油のいぶした風味とぴったり合います
「筑前煮」
根菜の風味がアーシーな赤を呼ぶ。鶏肉、ゴボウ、レンコン、ニンジン、 こんにゃくをさいの目に切りそろえる。ゴボウ、レンコン、ニンジンは 下茹でしておく。水8:醤油1:砂糖またはみりん1の煮汁で柔らかく なるまで炊く。柔らかくなったらスナップエンドウを加えひと煮立ちさせる。
ワインの質感に小さく切りそろえた食材を合わせる、上級者テクニック!
小さく切り そろえた鶏肉の脂や根菜の土っぽいニュアンスは、軽やかな果実味とタンニンの日本のシラーと◎。
「地鶏肝うま煮 山椒 剥きトマト」
新鮮な鶏レバーは水できれいに洗う。鍋に水4:醤油1:砂糖1の割合 の煮汁を入れ、沸騰させる。レバーを入れてひと煮立ちさせ、火を止めてひと晩置く。食べやすい大きさに切って器に盛り、粗びき山椒を 振りかけ、菜の花、湯剥きしたプチトマトを添える。余熱でゆっくり火を入れることで中はしっとりなめらか。絶妙な甘辛味の鶏肝の旨みでワインが進む。
醤油&砂糖の甘辛味は 黒系果実と相性ばっちり
鶏レバーの鉄分と野性味、スパイシーな山椒はシラーやグルナッシュなど黒系果実のワインと抜群に相性がいい。醤油ベースの和食の甘辛味はタンニンを感じる黒系果実と相性よしと覚えておこう。
グランポレール『グランポレール 安曇野池田 シラー 2015年』
鶏の脂の旨味をまとった根菜の土っぽい風味と甘辛味が、日本のシラーの繊細な果実味とタンニンにマッチ
レッドチェリーなどの赤系果実主体の香りにナツメグや ユーカリ、オーク樽由来のヴァニラがやさしく香る。酸味は中程度でタンニンは柔らか、今飲んでも美味しいが、 熟成の可能性も秘めている。
ライマット『ライマット・アニマ ティント 2014年』
鶏レバーにかけた山椒は、シラーのスパイスのニュアンスと絶妙な相性
熟したブラックベリー、プルーンなどが甘く香る。酸味 は中程度、アルコールはやや強い印象。凝縮した黒系果実に、コショウのスパイシーなニュアンスも感じられるバランスの取れた味わい。
山椒や七味、柚子やすだちといった和の薬味や柑橘類を上手に使うことが、和食とワインのペアリングを成功させるとっておきの秘訣です。
和の薬味や柚子やすだちは、少し添えるだけで料理を底上げし、ワインとの中継役となります
今回登場した料理に使われていた白ゴマや柚子、山椒や黒コショウ、クレソンなどが料理のアクセントとなっていたが、同時にそれらがワインとの共通項になり、ペアリングの完成度が格段に上がった。
和のスパイスや薬味を常備して、ワインとの距離を縮めてみる。難しく考えずに、まずは実践あるのみだ!
小田島大祐 Daisuke ODAJIMA
1973年生まれ。「和食とワイン」のパイオニアである 父、小田島稔氏に師事。和食とワインのさらなる可能 性を追及し、提案する料理人兼ソムリエ
「割烹 小田島」
和洋中の素材を組み合わせたオリジナル料理は、前菜 からデザートまですべておまかせ。メニューは日替わりで、常時100本以上のワインがそろう。
住所:東京都港区六本木7-18-24鈴木ビル1階
TEL:03-3401-3345
営業時間:18:00~22:00(ラストオーダー)
土曜日 11:30~14:00(ラストオーダー)
定休日:日曜日・祝日
HP:http://odajima.info/