フランス・ブルゴーニュにある「シャントレーヴ」。日本人醸造家・栗山朋子さんと、パートナーのギヨーム・ボット氏のふたりが営むネゴシアン(ワイン商)だ。
ヤマハリゾートの「葛城 ホテル 北の丸」で、シャントレーヴのワインと、静岡の海の幸、山の幸をふんだんに使った料理をマリアージュする、一夜限りのワインサロンが開かれた。
東海道新幹線の掛川駅からバスで約25分。のどかな田園風景を抜け、緩やかな山道を上ると、武家屋敷を思わせる長屋門が現れる。ヤマハリゾートが運営する「葛城 ホテル 北の丸」だ。ロビーに一歩足を踏み入れると、地元で焼いた遠州瓦を用いた屋根や、古民家から再生した木のぬくもりが感じられる梁や柱など、伝統的な和の様式を取り入れつつも、モダンで居心地の良い空間が広がる。
日常から離れた自然豊かなロケーションと、風景に溶け込む上質なしつらえとサービスでゲストを迎える「葛城 ホテル 北の丸」は、財界人やトップアスリートも訪れる「大人の隠れ家」。そんな同ホテルで、2020年2月に、ブルゴーニュのネゴシアン「シャントレーヴ」の醸造家・栗山朋子さんを招いたワインサロンが開催された。
「葛城 ホテル 北の丸」では、年に2回程度のペースでワインと食事のマリアージュの会を開催しており、「ワインサロン」と銘うった会も今回で19回を数える。フランスやドイツの五ツ星ホテルで研鑽を積んだ総料理長の入江真史氏が繰り出す、和食をベースとしながらフレンチのテイストが繊細にミックスされた優美な料理と、「酒蔵」と呼ばれるワインセラーで保存する約150の銘柄から選ばれたワインとの饗宴は定評があり、リピーターも多い。
栗山さんはドイツのガイゼンハイム大学で醸造学を学び、ラインガウのワイナリーで醸造責任者を経験。その後、2010年にパートナーである醸造家のギヨーム・ボット氏と二人で、サヴィニイ・レ・ボーヌを拠点としたネゴシアンとしてスタートした。18年には、樹齢100年の古木が植わるアリゴテの畑を手に入れ、ドメーヌとして醸造も開始。19年、さらに4.7ヘクタールの畑を購入した。ネゴシアンとドメーヌの“二足のわらじ”で活動する注目の醸造家だ。
栗山さんは「2010年に生産量1万本弱の醸造所を立ち上げ、2019年で10ヴィンテージ目となりました。18年は約3万本まで生産量は増えましたが、振り返ると“光陰矢の如し”で、無我夢中でやってきました」とあいさつし、会のスタートを切った。
ディナーで供された「シャントレーヴ」のワイン
ディナーでは5種類のワインが供された。
左から『ブルゴーニュ シャルドネ 2016年』『サン・ロマン コンブ・バザン 2016年』『シャサーヌ・モンラッシェ 1級 レ・モルジョ 2017年』『ブルゴーニュ ピノ・ノワール 2016年』『ニュイ・サン・ジョルジュ 1級 レ・ダモード 2015年』。
1品目は「前菜盛り合わせ」と、マグナムボトルの『ブルゴーニュ シャルドネ 2016年』
ズワイ蟹にはグレープフルーツを使った泡のソースを使い、シャルドネの酸味と合わせるなど、和食をベースながら随所にワインと寄り添う工夫がほどこされている。
栗山さんは「2016年は4月の霜の影響でブルゴーニュ全体の収穫量が激減した“苦難の年”でした」と解説。
「例外的にボージョレ地方からブドウを買って醸造しましたが、とても満足する仕上がりとなりました。そこで、17年からこの畑のブドウも使用するようになったのです」と話した。
2品目の料理は「鮮魚のお刺身 北の丸スタイル」。
三河でとれた平貝や浜松舞坂のヒラメを、袋井産のイチゴ “きらぴ香”から作った酢味噌や葉ワサビドレッシングで
革新的なプレゼンテーションにゲストから歓声が上がった。合わせるワインは『サン・ロマン コンブ・バザン2016年』。
「コート・ドールのなかでもまだ知名度が低い村かもしれませんが、平均300~350メートルと標高が高く、美しい酸を持つワインができる土地として注目されています」と栗山さん。
3品目は魚料理。
「天然真鯛のポワレ 海藻の香りを乗せて」と『シャサーニュ・モンラッシェ 1級 レ・モルジョ 2017年』
「レ・モルジョは、ふくよかな白ワインができるテロワールです。若い時にはかっちりとした味わいですが、時間が経つにつれて花びらがほぐれていくようなワインを造りたい」と栗山さんが話すように、*マロラクティック発酵由来の丸い酸味がクリーミーなソースとよく合った。
*乳酸菌により、ワインの中のリンゴ酸が乳酸と二酸化炭素に分解される現象。酸味が柔らかく、香味が豊かなワインとなる
4品目は、マグナムボトルで提供された『ブルゴーニュ ピノ・ノワール 2016年』と「山麓鹿のスーヴィッド 干し次郎柿添え」
『ブルゴーニュ ピノ・ノワール 2016年』に寄り添うように、野菜とピノ・ノワールの赤ワインに一晩漬けこんだ伊豆産の鹿を使用した「山麓鹿のスーヴィッド 干し次郎柿添え」。ジロール茸と、遠州森町産の干し次郎柿の甘味を加えた濃厚なソースが、もうひと口ふた口とワインを誘う。
「青島みかんのグラニテ」でお口直し。
コースの最後を飾った「窒息鴨胸肉の藁葺き焼き その肝のソース」と『ニュイ・サン・ジョルジュ 1級 レ・ダモード2015年』
丁寧に選果したブドウで造った透明感のある『ニュイ・サン・ジョルジュ 1級 レ・ダモード2015年』が、ジューシーな鴨肉の味わいを引き立てる。
栗山さんは「2015年に初めてリリースしたプルミエ・クリュですが、きれいに熟成しています。このまま6~7年、よい熟成を続けてくれるでしょう」と期待を込めた。
デザートには『マール・ド・ブルゴーニュ』を合わせて
デザート「ホワイトチョコと赤ワインのムース」には、サプライズで『マール・ド・ブルゴーニュ』が提供された。
「シャントレーヴ」と
「葛城 ホテル 北の丸」の饗宴を終えて
今回の料理について、総料理長の入江真史氏は「フレンチのソースのベースに日本の味噌を使うなど、シャントレーヴのワインに合うように工夫をこらしました。和食の要素だけでなく、洋食のエッセンスを取り入れた創作的な料理が『葛城 ホテル 北の丸』の特徴です」と笑顔で話した。
栗山さんはディナーに参加したお客さまとの写真撮影に応じ「『葛城 ホテル 北の丸』の素敵なロケーションで、ワインを本当に愛している方々と時間を過ごせたことに、感謝しています。フランスにも各土地の食材を生かした郷土料理がありますが、今日の料理はどれも、静岡ならではの食材や調味料を使い、さらにワインに合うようにさまざまな工夫が凝らされていました。日本でのプロモーションは6回目ですが、年々、日本のワイン市場が成熟しているのを感じます。味噌や醤油など発酵食の文化を持つ日本の料理は、同じく発酵させて造るワインととても合うと思います。普段の食卓の料理にもぜひワインを合わせてほしいです」と期待を込めた。
ヤマハリゾート
「葛城 ホテル 北の丸」
住所:静岡県袋井市宇刈2505-2
TEL:0120-211-489(受付時間9:00~18:00)
https://www.yamaharesort.co.jp/katsuragi-kitanomaru/
text by Tomoko HONMA , photographs by Koumei KADOWAKI