「最近は地球温暖化の影響か、年によってテロワールの変化が表れやすくなったように思います。2016年は寒いヴィンテージ、2017年は乾燥して暑かったヴィンテージ。そして2018年はバランスが取れた理想的な気候の年でした。ワインは、エレガントなピュアさが引き立っています」と話すのは、チリにある「エラスリス」のオーナーであるエデュアルド・チャドウィック氏。
エラスリスは2004年のベルリンテイスティングにおいて、5大シャトーや『オーパス・ワン』を破る快挙により、世界中にチリワインの偉大さを知らしめたワイナリーだ。
このたびオンラインで、プレステージアイテム5種の2018ヴィンテージお披露目を行った。
「2020年は私たちにとってチャレンジングな年でした。そんななかでも、二つのよいことがありました。一つ目は、先ほど話したように2018年ヴィンテージが素晴らしい出来だったこと。そしてもう一つは、2020年はエラスリスができて150周年の記念すべき年だということです」
「ヴィニャ・エラスリス」が設立されたのは1870年。「そのころは、まだアコンカグア・ヴァレーには何もありませんでした。灌漑のための水路を作ったり、畑を耕したりなど開拓をしたのです」とチャドウィック氏。それから20年。「私たちはマイポ・ヴァレーとアコンカグア・ヴァレーのテロワールの真髄を表現するワイン作りを真摯に続けています」と語る。
チャドウィック氏がワイン業界に入ったのは1983年だ。「父に言われて入社しました。当時はチリが自国内の経済に力を入れていたので、私たちも主に国内の市場に向けてワインを販売していたのです。しかし、そのころから私の夢は“エラスリスのワインを世界に広めたい”ということでした。今では生産の90パーセントを輸出しています」と話す。
さっそくチャドウィック氏とヘッド・ワインメーカーのフランシスコ・ベッティグ氏とともに、5アイテムの2018ヴィンテージを試飲した。
■『ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーブ2018年』
「よく高い評価をいただくワインです。ベルリンテイスティングで優勝をしたこともあります」(チャドウィック氏)
「チェリーやスグリ、カシスのような赤いフルーツのアロマ、ナッツ、ローストしたコーヒーの柔らかな香りに縁どられています。味わいはさわやかな酸が赤いフルーツを際立たせ、バルサミコのようなスパイシーさも。しっかりとしたタンニンを伴うフルボディの味わい」(ベッティグ氏)
■『ラ・クンブレ2018年』
「チリのシラーにおいてパイオニア的存在のワインです。1980年代にフランスのローヌへ行き、私はシラーに恋をしました。そのころ、チリでシラーを栽培しているワイナリーはなかったのではないでしょうか。私は、さっそくエルミタージュの苗木をチリに持ち帰り、シラーに取り組みました。初ヴィンテージは2001年です」(チャドウィック氏)
「スパイシーなアロマにフレッシュな赤いフルーツ、スミレやラベンダーのような花とお香を思わせる香り。味わいは、赤スグリ、ラズベリー、ブルーベリーの後にローストしたコーヒー豆や杉の特徴が現れます。新鮮でみずみずしく、包み込むような滑らかなタンニンが持ち味です」(ベッティグ氏)
■『カイ2018年』
「チリの代表的な品種、カルメネールをピュアに表現するため造ったワインです。初ヴィンテージは2005年。それまでは、収穫したカルメネールを『ドン・マキシミアーノ』や『セーニャ』のブレンドに使用していましたが、カルメネールのピュアさ表現したいと思い『カイ』を造りました」(チャドウィック氏)
「香りはお香や熟れたイチジク、パプリカ、森のフルーツに加え、かすかな黒鉛のニュアンス。味わいも同様です。2018ヴィンテージは、柔らかで、きめ細かなタンニンが特徴。みずみずしさと良い酸味を感じる、魅力的な口当たりです」(ベッティグ氏)
■『セーニャ2018年』
「1991年にモンダヴィさんがチリにいらした時、彼はチリのテロワールにとても感動し『チリはナパ・ヴァレーと同じポテンシャルがある。一緒によいワイン造ろう!』と盛り上がりました。そしてジョイントベンチャーをスタートし、1995年にファーストヴィンテージが誕生しました。クラシックなボルドーブレンドですが、カルメネールをブレンドすることによりチリの魂がやどったワインになります。2018年ヴィンテージは『ジェームス・サックリング』で100点を獲得しました!」(チャドウィック氏)
「マッシュルームや針葉樹の個性的なアロマが、色の濃いベリーやブラックオリーブへと変わります。とても魅惑的な味わいです。きわめて細かいタンニンが口中を覆い、パワーと躍動感が最後まで続きます」(ベッティグ氏)
■『ヴィニェド・チャドウィック2018年』
「チャドウィック家に代々受け継がれる、卓越したワインへの情熱と伝統を反映しています。故ドン・アルフォンソ・チャドウィック・エラスリスに敬意を表したい、という家族の長年の夢を形にしたワインです」(チャドウィック氏)
「チェリーやカシス、ラズベリーのような赤い果実のアロマとブルーベリー・パイの繊細な香り。ビターチョコレートとわずかに杉のようなニュアンスに縁どられ、非常に決め細かいシルクのようなタンニンに満ちています。極めてエレガントでフレッシュ、凝縮度が高く、特徴的な深みに満ちたワインです」(ベッティグ氏)
全5アイテムの試飲を通し「2018年ヴィンテージは、素晴らしいヴィンテージだと実感しました。いま飲んでも美味しいですが、熟成も期待できる。改めてチームのメンバーに感謝したいと思います」とベッティグ氏。
最後に「今日は、エラスリスのアイコンワインのヴィンテージをお披露目できて、とてもうれしく思います。来年は東京に行き、皆さんのお顔を見ながら話しができることを願っています」とチャドウィック氏は語った。