2020年12月、フランスのコート・デュ・ローヌ地方とアルザス地方におけるサステイナビリティーに関するセミナーがオンラインで開催された。環境に配慮したワイン造りの現況と今後のプロジェクトについて、各ワイン委員会から発表が行われた。
*サステイナブル:持続可能な産業や開発など
2015年の国連サミットで「SDGs」が持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として採択されて以来、世界の国々ではあらゆるジャンルで「サステイナブル」な取り組みを始めている。ワイン業界も例外ではなく、ワイン大国フランスでは各生産地がそれぞれに目標を立て、さまざまなプロジェクトを進めている。
そんななか、コート・デュ・ローヌ地方とアルザス地方のサステイナビリティーへの取り組みに関するオンラインセミナーが2020年12月に開催され、ローヌワイン委員会のアジア輸出マーケティングディレクター、アナイス・リシャールさんと、アルザスワイン委員会のエノログ(ワイン醸造技術管理士)で教育責任者であるティエリー・フリッチュ氏がそれぞれの産地の状況を説明した。
フランスでは、1900年以降平均気温の上昇が続き、80年以降はさらに顕著でブドウの収穫の時期がどんどん早まっているという。
「とはいえ、ローヌ渓谷は気候変動に耐えうる自然条件に恵まれ、樹勢の強い品種がそろっているので、ワインのクオリティーは上がっています」とリシャールさん。ローヌでは、ワインの品質を守り、永続性を確実なものにするために戦略的な活動計画を立てているという。
その内容は
1.化学的な除草剤の使用量を劇的に制限するための農業環境政策の導入
2.HVE(環境価値重視認定)の団体認証の展開
3.コート・デュ・ローヌのブドウ畑における生物多様性の発展と重視
4.「環境に関する推奨ガイド」の作成
5.病気に抵抗力のあるブドウ品種についての研究
6.コート・デュ・ローヌの環境景観憲章の一環としての活動の継続
という六つの軸に基づき、さまざまなツールを活用しながら対策を進めるというものだ。
「ローヌでは、すべてのワイン関係者が持続可能で環境に配慮したワイン造りを行うという強い意思を持っており、将来のために今できることを着実に行っています」
一方アルザスでは、温暖化によるメリットとデメリットを明らかにしたうえで、四つの柱を立てて気候の変動に対するアクションを構築している。
1.原材料と資源の探求
2.厳しい状況にブドウを適合させる
3.気候変動についての研究プロジェクトの支援
4.醸造の研究
である。
「この中には、植物としてのブドウの研究や水のコントロールといったアプローチから、気候変動そのものについての調査、そしてセラーの仕事をどう変えていくかなど、あらゆる角度からのアクションが含まれています」
エノログでもあるフリッチュ氏は「アルザスは多様で複雑なテロワールを持っており、このことが気候変動に適応する強みだと考えています。そして気候の変化に対応するため、生産者たちは日々研究と努力を続けています」と語る。
リシャールさんは最後に「気候の変化は一地方の問題ではなく、国レベル、あるいは世界レベルで考えなければならない問題」と訴え、今後は地方間の情報交換もしつつ、環境と経済のバランスも考えながら持続的発展に向けて一丸となって取り組んでいくことを目標に掲げた。
text by Miki NUMATA