「シャトー・アンジェリュス」のステファニー・ド・ブアール・リヴォアル社長とユベール・ド・ブワール氏とともに2020年ヴィンテージを試飲した。そのリポートの後編。『カリヨン・ダンジュリュス』『No3ダンジェリュス』2000年について紹介する。

 『カリヨン・ダンジェリュス』は1987年ヴィンテージから造っているシャトー・アンジェリュスのセカンドワイン。格付けはサンテミリオン・グラン・クリュ。現在は2015年に購入した、①「シャトー・シュヴァル・ブラン」と「シャトー・フィジャック」の間にある畑、②シャトーの周りにある昔から所有している畑、③サン・クリストフ・デ・バルド村に所有している畑、三つの異なる畑を1/3ずつ、合計18ヘクタールのブレンドで造られている。

 ステファニー・ド・ブアール・リヴォアル社長は「①の畑は砂、小石混じりの土壌でエレガントなニュアンスを、②の畑は粘土質で果実味と新鮮さを、③の〈シャトー・ラロック〉と〈シャトー・フォンブロージュ〉に挟まれた台地の畑は石灰質土壌で構造をもたらす。異なる三つの土壌がそれぞれ補完し合い、サンテミリオンの個性を表現している」と説明する。

 さらにユベール・ド・ブアール氏は「カリヨン・ダンジェリュスのはっきりした個性が表現されるようになったのは15、16年ヴィンテージから。そして、新しい醸造所を使い始めた18年からは、一段と際立つ独自の表現が表れてきた」と強調する。

 カリヨン・ダンジェリュスには降格したシャトー・アンジェリュスのキュヴェも10パーセントほど使用しているが、シャトー・アンジェリュスとは別の、独自のテロワールの個性を持ったキュヴェと言っていい。

 カリヨン・ダンジェリュスの作付け品種割合はメルロ90パーセント、そしてカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンがそれぞれ5パーセントだが、20年ヴィンテージのブレンド比率はメルロ90パーセント、カベルネ・フラン10パーセントとなっている。

 醸造は逆円錐形ステンレスタンクで行う。シャトー・アンジェリュスと同様、醸造前マセラシオンを8℃で行った後、果汁の温度を28℃に上げて醸造し、26~28℃で1~3週間、成分をさらに抽出する。その後新樽60パーセント、1年使用の樽40パーセントを使い、約16カ月間熟成する。

 サンテミリオンの充実した味わい、新鮮さ、果実味がバランスよくそろった典型的な右岸のワインだ。現段階ではやや新樽のフレーバー強く出ているが、熟成によって溶け込み、長期間熟成できるワインになるだろう。

画像1: 「シャトー・アンジェリュス」の2020年ヴィンテージを試飲(後編)

『No3ダンジェリュス』は、その名の通りシャトー・アンジェリュスのサードワインでAOCサンテミリオン。かつて『シャトー・マズラ』の名称で販売してきたが、07年ヴィンテージから現在のワイン名に変更した。カリヨン・ダンジェリュスの畑の中の若いブドウ樹を使っており、カリヨン・ダンジェリュスより*キュヴェゾンを少し短くし、すべてをタンクで熟成する。熟成期間は14~16カ月。

 20年ヴィンテージのブレンド比率はメルロ85パーセント、カベルネ・フラン10パーセント、カベルネ・ソーヴィニョン5パーセント。二酸化硫黄の添加を減らし、果実味を追及しており、20年ヴィンテージは特にフレッシュで素晴らしく、心地よい果実味が感じられる。瓶詰は来春で、飲みごろを迎えるのはだいたい2~3年後だが、今でもすでに美味しく飲めるワインだ。

「瓶詰は来年3月を予定。その後15年くらいは十分楽しめる。しかし、サンテミリオンの本格的な味わいを気軽に楽しんでもらえるよう、レストランでのランチからディナーまで幅広いシーンですぐに楽しめるワインに仕上げた」とブアール氏。“すぐに飲めるグラン・ヴァン”だと説明した。

*醸造工程の一段階で、発酵槽内でアルコール発酵およびマセラシオン(醸し)を行う過程

画像2: 「シャトー・アンジェリュス」の2020年ヴィンテージを試飲(後編)

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